築年数が経った賃貸物件は、ともすると「古い」「時代遅れ」と見られがちです。しかし近年は、そんな「古さ」を逆に魅力へと変える「レトロインテリア」が注目されています。
すりガラスやホーロー製品など、どこか懐かしいアイテムを取り入れるだけで、昭和の喫茶店のような心地よさを演出できます。そんな懐かしさと温かみのある空間は、若い世代にも人気です。
本稿では、レトロインテリアの魅力や特徴を整理し、昭和レトロ空間をつくるための実践的なポイントをご紹介します。ぜひ、最後までご覧ください。
目次
レトロインテリアとは

レトロは「懐古的」を意味し、レトロインテリアは過去の時代を思い起こさせる雰囲気を住まいに取り入れるスタイルを指します。
当時の流行やカルチャーを生かし、現代の空間に温かみとノスタルジーを与えるのが特徴です。
レトロインテリアの魅力
レトロインテリアは単なる「過去の再現」ではなく、現代の暮らしに心の豊かさと安心感をもたらすスタイルとして、今の時代にこそ求められています。
▼なぜ「古さ」が心地よさに変わるのか
レトロインテリアの最大の魅力は、なんといっても「懐かしさ」や「温かみ」を感じさせる点にあります。現代的な無機質な空間にはない、時間がゆったり流れるような安心感があります。
大正や昭和を知らない世代であっても、どこか「懐かしい」と感じさせるのがレトロインテリアの不思議な力です。多くの人が心の中に持つ「原風景」を呼び覚ましてくれます。
▼なぜ、レトロは現代人の心を支えるのか
レトロインテリアは、単なるデザインの流行を超え、現代人にとって「心の避難所」としての役割も果たしています。
昭和の高度経済成長期は、多くの人が未来を楽観的に信じられた時代でした。その空気感を映すインテリアは、将来への不安が広がる今だからこそ、明るい未来を感じ取れる存在となっています。
使い込まれた家具や温かな光を放つ照明は、まるで時間を遡って「希望に満ちた時代」に戻ったかのような感覚を与えてくれます。
レトロインテリアの特徴
日本のレトロインテリアには、「大正ロマン」「昭和モダン」「昭和レトロ」といった代表的なスタイルがあり、それぞれに異なる特徴があります。
共通する魅力をあげるなら「ユーズド感」と「ノスタルジー」でしょう。ピカピカの新品ではなく、使い込まれた風合いを持つ家具や雑貨を配置することで、温かみある居心地を実現しています。
また、日本の伝統的な和の要素と、欧米のミッドセンチュリーデザインが融合した「和洋折衷」もレトロインテリアならではの特徴です。
▼大正ロマンとは
大正ロマンは、西洋文化が日本に入り始めた大正時代の雰囲気を反映したスタイルです。
ステンドグラスやモールガラス、重厚感のあるダークブラウンの猫脚(カブリオールレッグ)家具などが特徴的で、クラシカルで華やかな空気感が漂います。
▼昭和モダンとは
大正ロマンの華やかな「和洋折衷」から発展し、よりシンプルで機能的なデザインが追求された昭和初期のスタイルです。
海外のモダニズム建築の影響を受け、日本の伝統的な要素と直線的で合理的なデザインが融合しました。スチールやガラス、コンクリートといったモダンな素材が取り入れられています。
▼昭和レトロとは
昭和レトロは、昭和中期から後期にかけての庶民的で懐かしい雰囲気を持っています。ちゃぶ台や木製の食器棚、文机などの木製家具、すりガラスやタイル、ホーロー製品が象徴的です。
花柄や水玉などのポップなファブリックや雑貨を取り入れると、親しみやすい「懐かしさ」を演出できます。
レトロ空間をつくるためのポイントとコツ

レトロな空間をつくるには、単に古い家具や雑貨を置くだけでは不十分です。
スタイルの統一感や素材選び、照明や小物などの細部にまでこだわることで、はじめて「懐かしさ」と「心地よさ」が調和します。
ここでは、実践のコツをご紹介します。
スタイル:異なる「レトロ」を混ぜない
レトロインテリアを取り入れる際に気をつけたいのは、異なるスタイルを無理に混ぜないことです。
それぞれのスタイルには歴史的背景やデザインの方向性があり、統一感を欠くと「おしゃれ」ではなく「雑多」に見えてしまうからです。
まずはひとつのテーマに絞って空間を整えるのが、失敗しない一番の近道です。
主なレトロ系スタイルをご紹介しましょう。
- 大正ロマン:大正時代を思わせる和製クラシカルなスタイル
- 昭和モダン:洗練された都会的な魅力を持つ昭和初期のスタイル
- 昭和レトロ:楽観的で親しみやすい経済成長期を感じさせるスタイル
- レトロポップ:昭和後期のポップな色使いやサイケデリックな模様が特徴
- 北欧レトロ:北欧風のヴィンテージ家具を中心に組み立てるスタイル
- ミッドセンチュリー:アメリカの1940~1960年代を思わせるスタイル
なかでも「昭和レトロ」は、身近なアイテムが手に入りやすいため、挑戦しやすいスタイルと言えます。レトロ系コーディネートに慣れていない方は、昭和レトロをベースにするとよいでしょう。
さらに、アクセントとして「レトロポップ」のカラフルな要素を少しだけ加えると、まとまりのあるおしゃれな空間に仕上がります。
どうしても複数の要素を取り入れたい場合は、特定のスタイルをメインに決め、もう一方をアクセントとして使うのがコツです。そうすることでバランスを崩さずに、個性的な空間を演出できます。
素材:温もりと味わいのある素材を活用する
ここからは、昭和レトロをベースにお話を進めましょう。
昭和レトロな空間をつくる上で欠かせないのが「素材選び」です。当時の素材やデザインを取り入れることで、グッと雰囲気が増します。
▼内装
内装で本格的に昭和レトロ感を出すには、壁や床、建具といった空間のベースとなる部分からリフォームするのが効果的です。
壁 | 当時の日本の住宅で広く使われていた漆喰や聚楽などを模した壁紙が◎。キッチンや洗面所などの水回りにスクエアタイルを貼ると、一気にレトロな雰囲気が出る。色目地もグッド。 |
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床 | 畳を残すのが、手軽に和の要素を取り入れられる方法。フローリングなら、濃いブラウン。昭和の団地で使われていたような「木目柄」や「幾何学模様」のクッションフロアもよい。 |
扉 | 昔ながらの木製ドアや引き戸に交換すると、一気に趣のある空間になる。モールガラスがはめ込まれているタイプなら、高級感と昭和のレトロ感を演出しやすい。襖や障子も生かせる。 |
これらのリフォームは、部屋の印象を大きく変え、より本格的な昭和レトロ空間をつくり出すのに役立ちます。
▼家財
当時の暮らしは、職人の手仕事や自然素材に寄り添っていたため、現代の量産品にはない素朴さや温もりが感じられます。
とくに活用したいのが、木材・ガラス・ホーローの3種類です。
木材 | ちゃぶ台や木製の食器棚、木箱など、昭和の家具は木材を多用。プリント合板ではなく、突板や無垢の家具を選ぶと、使い込むほどに色が深まり艶が増す。 |
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ガラス | すりガラスやモールガラスは、光を柔らかく通してノスタルジックな雰囲気を演出。食器や食器棚に活用可。花柄が入ったガラスコップも昭和的。 |
ホーロー | ホーロー製の鍋やケトルは、独特の艶や質感が「温かみあるレトロ感」をより引き立ててくれる。 |
木材や金属は、時間とともに色合いが変化したり、傷がついたりすることで独自の「味わい」が生まれます。このユーズド感こそが、昭和レトロならではの魅力。
こうした素材をバランスよく取り入れることで、心から落ち着ける懐かしい空間を演出できます。
照明:光も器具もノスタルジックなものを
昭和レトロな空間をつくるうえで大切なのは、「光の色」と「照明器具のデザイン」です。この2つにこだわることで、空間全体にノスタルジックな雰囲気を漂わせることができます。
▼光の色
まずは、光の色。現代で主流の白く明るい「昼白色」は、空間をクリアに見せますが、どこか冷たい印象を与えがちです。レトロな空間には似合いません。
おすすめは、電球色です。オレンジがかった光が、当時の家庭や喫茶店を思い出させるような懐かしさを演出します。ろうそくや夕焼けのように心を落ち着かせてくれるでしょう。
▼照明器具のデザイン
次に照明器具のデザインです。当時の日本の家庭で使われていた、シンプルで温かみのあるデザインの照明を用いると、昭和レトロ感を高められます。
たとえば、乳白ガラスの三角すい型シェードや、カラフルなプラスチック製のドーム型シェードのペンダントライト。花びらを下向きにしたようなガラスシェードもレトロ感を演出できます。
スタンドライトも、同様のものがたくさんあります。加えて、真鍮製のスタンドライトも、クラシカルで落ち着いた雰囲気をつくるのに有効です。
照明は明るさを確保するだけでなく、部屋に奥行と表情を与える重要な役割を持っています。しかし、電球色の照明一灯だけでは物足りない印象になりがちです。
テーブルの上や部屋の隅に間接照明を配置すれば、光と影のコントラストが生まれ、落ち着いた中にも奥深さのある昭和レトロな空間を演出できるでしょう。
家具:レトロ風のアイテムを駆使
昭和レトロな空間をつくる際に「ヴィンテージ家具やアンティーク家具が必須」と思われがちですが、実際にはそうではありません。
もちろん、ヴィンテージ家具は当時の雰囲気を色濃く感じさせてくれますが、高価であったり、状態のよいものを見つけるのが難しかったりします。
そこでおすすめなのが、レトロ風のデザイン家具やDIYによるアレンジです。
▼レトロ風のデザイン家具を生かす
近年では、昭和レトロ風やミッドセンチュリー風のデザインを取り入れた新品家具が多く販売されています。
これらは懐かしい雰囲気を持ちながら、比較的リーズナブルに購入できるため安心して導入できます。フリマでヴィンテージ品を落札するより、安価な場合もあります。
▼DIYで家具をレトロ化する
また、既存の家具にひと手間加えることで、手軽にレトロな雰囲気を取り入れることも可能です。
たとえば……
- ペイント:深みのあるブラウンや、ポップな色で塗り替える
- シートの貼り付け:木目調やビタミンカラーのシートを活用する
- 取っ手の交換:真鍮や木製のレトロ調パーツに付け替える
といった方法なら、手持ちの家具でも昭和レトロ感を演出できます。
大切なのは、本物のヴィンテージ家具にこだわることではなく、暮らす人が心地よいと感じるレトロ空間を無理なく実現することです。
新品と中古、DIYをうまく組み合わせながら、自分らしいレトロスタイルを楽しみましょう。
雑貨・小物:細部まで「懐かしさ」を宿す
レトロな空間づくりでは、家具以上に雑貨や小物が重要な役割を果たします。小物にこだわることで、空間全体に「懐かしさ」や「温かみ」を宿し、細部まで世界観を表現できるからです。
内装や家具は空間のベースを決めますが、雑貨や小物はその部屋に命を吹き込み、暮らしの雰囲気を完成させてくれます。
昭和レトロを演出する際に効果的なアイテムをご紹介しましょう。
▼キッチン・ダイニング
昭和に大流行した花柄や動物柄のコップは、食卓を華やかに彩ってくれます。
参考:アデリアレトロ
また、ホーローの鍋やケトルを取り入れると、キッチンに温かなノスタルジーを加えられます。
▼リビング・その他
ゼンマイ式のブリキのおもちゃや古い看板を飾れば、遊び心のあるアクセントに。さらにクッションカバーやテーブルクロスに花柄や幾何学模様を取り入れると、一気に昭和の雰囲気が高まります。
当時の映画やアイドルのポスター、レトロなフォントでデザインされたカレンダーも、視覚的に強いインパクトを与えてくれます。
小物ひとつひとつにこだわることで、部屋全体に「懐かしさ」というテーマを浸透させられます。
大掛かりなリフォームや家具の入れ替えをしなくても、雑貨の工夫次第である程度は「昭和レトロな空間」を演出できるでしょう。
色彩計画:色使いは落ち着きと活気のバランスが大切
昭和レトロなインテリアにおける色彩計画では、「落ち着き」と「活気」の両立が重要です。懐かしさを感じさせつつも心が弾むような空間にするには、両方のバランスが欠かせません。
基本となるのは、落ち着いた「ベースカラー」です。たとえば「生成り色」や「ベージュ」といった自然素材に近い色を基調にすると、安心感や居心地のよさが生まれます。
そのうえで、活気を添える「アクセントカラー」を取り入れましょう。ただし、彩度や明度は少し下げ、「くすみ」や「色あせ」を感じるような色がおすすめです。
たとえば、ベージュを基調とした空間に、「カラフルな花柄のクッション」や「くすんだビタミンカラーのポスター」を差し込むだけで、グッと昭和らしい雰囲気に近づきます。
重要なのは「全体を落ち着きでまとめ、アクセントで遊ぶ」という構成です。こうすることで懐かしさと活気が調和し、居心地のよさとレトロな楽しさを兼ね備えた空間が完成します。
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