離婚や非婚の増加などを背景に、母子家庭が100万世帯を超え続けています。一方で、賃貸市場ではさまざまな不安から、シングルマザー世帯の入居をためらうオーナーが少なくありません。
しかし近年では、保証会社の利用や公的支援制度の拡充など、リスクを抑えられる仕組みも増えています。この流れから、シングルマザー世帯を受け入れる動きが、少しずつ広がっているのです。
本稿では、シングルマザー世帯の住まい探しで起こりやすい問題と、オーナーが安心して貸すための具体策を解説します。社会的意義と安定経営の両立を目指すためのヒントを整理してみましょう。
目次
シングルマザー世帯(母子家庭)の現状

近年では「3組に1組が離婚する」と言われており、「シングルマザー世帯が増えている?」と感じる方が多いかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか。
シングルマザー世帯は増えている?
日本のシングルマザー世帯(母子家庭)の数は横ばい、あるいは微減傾向にあります。
こども家庭庁が約5年ごとに実施している「全国ひとり親世帯等調査」によると、2003年に約122.5万世帯だった母子世帯は、2021年には約119.5万世帯と、やや減少しています。
- 2003年:122.5万世帯
 - 2006年:115.1万世帯
 - 2011年:123.8万世帯
 - 2016年:123.2万世帯
 - 2021年:119.5万世帯
 
ただし、「減った」とはいえ依然として100万世帯を超える規模。地域の賃貸市場においても「無視できない存在」です。
さらに、シングルマザー世帯は「働きながら子どもを育てる」という特有の事情を抱える家庭が少なくありません。
その生活や住居に関する多様なニーズに対し、社会全体での理解と、適切な支援が必要とされています。
シングルマザー世帯の住まい探しは何が問題になるのか
シングルマザー世帯の住まい探しでもっとも大きな壁となるのは、経済的な信用への懸念と、それに伴う入居審査の厳しさです。
また、小さい子どもがいる場合は、生活音が問題になるケースも少なくありません。
▼経済的な不安定さに伴う家賃滞納リスク
既出のこども家庭庁の資料によると、母子世帯の母親の平均年収は、父子家庭の父親の半分程度です。多くがパートやアルバイトなどの非正規雇用で、安定した収入を得るのが難しい状況です。
そのため、オーナーにとって「継続的に家賃を支払えるか」が最大の懸念材料になります。病気や失業などの事情が重なると、一時的に家賃の支払いが途絶えるリスクもあります。
▼保証人の確保・保証審査の通過
賃貸契約の際、頼れる連帯保証人が少ない点も課題です。親族が高齢だったり、親族関係が薄かったりする場合、保証人を立てること自体が難しいこともあります。
現在では家賃保証会社を利用するケースが一般的になりましたが、保証料の負担や審査の通過といったハードルは依然として残っています。
▼生活音・騒音による入居者トラブル
子どもの足音や泣き声など、日常的な生活音がトラブルの火種になるケースもあります。とくに、防音性の低いアパートや静けさを重視する物件では、クレームに発展するリスクが高くなります。
これらの問題は、必ずしも「シングルマザーだから」という個人要因だけで生じるものではありません。住宅制度や保証制度、建物構造などの環境要因も影響しています。
リスクを理解したうえで仕組みを整えれば、安心して入居を受け入れることが可能になるでしょう。
オーナーが感じる3つの不安と対策

シングルマザー世帯を受け入れる際、オーナーが気にするのは「家賃滞納」「騒音」「保証人」の3つのリスクです。
つまり、このリスクがそのまま「シングルマザー世帯の住まい探しの壁」になっています。この壁を取り払うことができれば、家主と入居者、双方が安心して持続的に賃貸関係を築けるでしょう。
まずは、とくに影響が大きい「家賃滞納リスク」について概要と対策を見ていきましょう。
家賃滞納リスク
オーナーは、シングルマザー世帯の収入の不安定さや平均所得の低さから、家賃が滞りなく支払われなくなるリスクを強く懸念しています。
▼滞納リスクを高める構造的要因
この不安の背景には、母子世帯の経済状況があります。
先述のとおり、母子家庭の母親の平均年間就労収入は、父子家庭の父親の半分程度です。また、非正規雇用(パート・アルバイト等)の割合も高いのが現状です。
こうした収入の不安定さは、病気やケガなどの予期せぬ事態が起きた場合、家賃の滞納につながります。
オーナーにとって「家賃の支払い遅延」は経営の悪化に直結する問題であり、入居審査を厳しくする大きな要因になっています。
▼家賃滞納の対策
オーナー側が滞納リスクを軽減し、安心して入居を許可するためには、次のような対策が有効です。
- 家賃保証会社の利用
 - 収入証明書の厳格な確認
 - 公的制度の案内
 
現在では、多くの賃貸物件で保証会社の利用が主流になっています。万が一滞納が発生しても、保証会社が立て替え払いをおこなうため、オーナーの損失を最小限に抑えられます。
世帯の年間総収入を把握し、家賃と収入のバランス(家賃負担率)を適正に判断することも重要です。
以下のような支援策を実施している自治体もあります。このようなセーフティネットの情報を、管理会社を通じて入居希望者に案内することで、滞納トラブルの予防や信頼関係の構築につながります。
まずは、お住まいの市区町村の役場(福祉課、子育て支援課など)に、具体的な制度の有無と利用条件を確認しておくとよいでしょう。
騒音・クレーム
オーナーは、子どもが発する生活音(走り回る音、泣き声など)がトラブルの引き金となり、入居者の退去や評判の低下につながることを恐れています。
とくに、単身者や高齢者など静かな生活を望む入居者が多い物件では、子どものいるご家庭に対して慎重な姿勢を取る傾向があります。
▼子どもの生活音がトラブルにつながりやすい
賃貸物件では、生活音に関するトラブルがもっとも多いと言われています。騒音トラブルは入居者の退去や物件の評判低下につながるリスクが高いため、細心の注意が必要です。
とくに防音性の低い木造アパートでは、子どもの足音や泣き声が下階や隣室に響きやすく、クレームに発展するケースが少なくありません。
一度トラブルが起きると、入居者同士の感情的対立に発展することもよくあります。そうなると、オーナーや管理会社は対応に多くの時間と労力を使うことになりかねません。
▼騒音・クレームの対策
このリスクを防ぐには、以下のような「入居前の説明」と「入居後の対応体制」を整えることが重要です。
- ファミリー・子育て世帯向け物件への誘導
 - 生活音に関するガイドラインを明示
 - クレーム発生時の初期対応フローを整備
 
まず、最初から子育て世帯を歓迎できる物件に入居を促すのが理想です。騒音トラブルは、起きてからの対応ではなく「起こさない工夫」がより効果的です。
契約時や入居オリエンテーションの際に、全入居者共通のルールとして、生活音トラブルに関する具体例と対策を文書で伝えるのも有効です。
仲裁をおこなう体制を整えておくことも重要です。管理会社が感情的対立を防ぐ役割を担うことで、トラブルの芽が小さいうちに沈静化を図れます。
保証人問題
オーナーは、次のような場合に、家賃滞納や契約違反が発生した際の責任追及が難しくなることを懸念します。
- 連帯保証人の要件を満たせない
 - 保証人が高齢で経済的な保証能力に疑問がある
 
保証体制が不十分なまま契約を結ぶと、滞納リスクがそのままオーナーの損失につながる可能性があります。
▼親族保証だけに頼るリスク
シングルマザー世帯では、連帯保証人を親に頼るケースが多く見られます。しかし親が高齢であれば、契約期間中に病気や死亡、収入減などによって保証能力を失うリスクがあります。
また、親族との関係が薄く保証人を立てにくいケースもあり、シングルマザー世帯は保証体制が脆弱になりやすい点が課題です。
こうした背景から、オーナーや管理会社は「保証人問題」を入居判断の重要要素として慎重に見ています。
▼保証人問題の対策
保証人問題は「形式」よりも「実効性」がカギです。保証人問題を解消し、賃貸経営のリスクを回避するためのポイントは以下のとおりです。
- 保証会社利用を前提とした契約運用に統一する
 - 緊急連絡先を別に確保する
 - 連帯保証人を立てる場合は「実効性」を重視する
 
現在では、シングルマザーを含む多くの入居者が保証会社を利用しています。家賃滞納が発生した際は保証会社が代位弁済をおこなうため、オーナーの金銭的リスクを軽減できます。
保証会社とは別に、安否確認や緊急時の連絡先として親族を設定してもらい、事前に対応方針を合意しておくことも有用です。トラブル時の対応スピードと安心感が高まります。
保証会社を利用しない場合は、単なる親族ではなく、安定収入や資産を確認して「保証能力」を審査することが大切です。ただし、基本的には保証会社を利用してリスクを回避するほうが賢明でしょう。
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