高齢者向け賃貸住宅とは?シニアが安心して住める物件のポイント

昨今、賃貸住宅市場では「高齢者向け賃貸住宅」の運営を検討されているオーナーさまが少なくありません。あなたも「どんな設備やサービスがあればいいのだろう?」とお悩みではありませんか?

たしかに、若者やファミリーが減り続けるご時世ですから、的を射たお悩みです。市場動向を把握して、適切な賃貸経営を実施していかないと、みるみる先細りしていくのが目に見えていますよね。

そこで、本稿では高齢者に適した賃貸住宅の特徴や、高齢者向けに取り入れたいサービスリスクと対策などをご紹介します。高齢者向け賃貸住宅の経営をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

高齢者に適した賃貸住宅のポイント(特徴)

高齢者に適した賃貸住宅のポイント

今後、65歳以上、とりわけ単身者世帯の割合が増加していくと想定されます。必然的に、単身高齢者からの入居相談も増加するでしょう。

一方、少子化や非婚化により、若年世帯やファミリーの相談件数は徐々に減少します。賃貸物件のオーナーさまとしては、高齢者を積極的に受け入れていかざるを得ない状況ではないでしょうか。

参考:高齢単独世帯数等の将来推計

では、高齢者を受け入れるに当たり、どのような準備が必要なのでしょうか?高齢者に適した賃貸住宅の特徴をご紹介しますので、準備のヒントにしてください。

特徴1:低額の費用で、自立して暮らせる

そもそも、賃貸住宅は高齢者を受け入れる住宅として適切なのでしょうか?需要はあるのでしょうか?

ご存じのとおり、既にさまざまな高齢者向けの住宅があります。しかも、それらは専門的であり、一般の賃貸住宅では対高齢者サービスにおいて勝ち目がありません。

たとえば、こんな高齢者向け住宅ですね。

  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
  • シニア向け分譲マンション
  • 老人ホーム

老人ホームに至っては住宅型有料老人ホームや介護付有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームなど、さらに細分化されています。高齢者の状況に合わせて選択できるでしょう。

では、高齢者がそのような住宅を利用せず、民間の集合住宅を選ぶ理由はどこにあるのでしょうか?―― じつは、入居の要件や費用を考慮すると、バリエーションの割に選択肢が限られます。

ですから、できるだけリーズナブルな費用で入居できて、かつ自立して暮らせる一般賃貸住宅が、元気な高齢者の受け皿として望まれているのです。

特徴2:生活するための環境が整っている

さて、高齢者を受け入れるには、どのような環境が必要でしょうか?駅から近くないと、借り手が付かないのでしょうか?

通勤や通学の必要がない高齢者は、住まいと駅の近接を重要視していないでしょう。以下の「生活しやすい環境」のほうが、優先度が高いのではないでしょうか。

  • 食料品や日用品を手に入れやすい
  • 通いやすい医療機関がある
  • 銀行または郵便局が近くにある

それに、昨今、自動車運転免許証の返納を意識されている高齢者が増えています。そのような高齢者にとって、日常生活圏内の環境が整っていることは、住まい選びに欠かせない要素なのです。

とりわけ、半径2km圏内に必要な施設が集約されていると、タクシーを気軽に使えます (車を所有するより経済的)。そうなれば、バスや電車に頼るより、移動面でも自立しやすいでしょう。

また、身内や気心の知れた知人が近くにいることも大切です。そのような方々に囲まれていると、交流面だけでなく、もしものときにすぐに助けてもらえる安心感があります。

人間関係は、人によっては生活環境に勝る「住宅の選択要因」になるかもしれません。高齢者がコミュニティや互助関係を築きやすいように、町内会に加入するのもひとつの方法でしょう。

特徴3:バリアフリーが行き届いている

住まいを選ぶ際、将来のことを考えると「バリアフリーの物件がいい」と考える高齢者が多いでしょう。

住宅を提供する立場からすると「体が不自由になると、生半可なバリアフリーでは対応できない」「高齢者の状況に合わせて、専門的な介助を受けられる施設に移るべき」と考えたくなるかもしれません。

しかし、漠然とした将来の不安から「バリアフリー物件がいい」と考えている元気な高齢者にとって、たとえば以下のものが整っているかどうかが、住宅選びの重要な判断基準になるのです。

  • 階段や段差が少ない
  • エレベーターがある
  • 要所に手すりがある
  • 滑りやすそうなところに滑り止め加工がしてある
  • お部屋が生活しやすい広さや間取りになっている

ですから、お問い合わせを増やすために、物件に対して一定のバリアフリー化が必要でしょう。バリアフリー化のポイントを知っておきたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

バリアフリー・リフォームとは?工事の指針やポイントを紹介

特徴4:セキュリティが整っている

高齢者を狙った犯罪が増えています。ですから、セキュリティ関連設備の充実度も、集客に影響します

セキュリティ関連設備では、たとえば以下のものが人気です。

  • オートロック
  • 防犯カメラ
  • 浴室乾燥機
  • 宅配ボックス
  • カメラ付きインターフォン

上述の設備は、空き巣等の窃盗犯や、高齢者を狙った凶悪犯に対して一定の抑止効果や回避効果があるでしょう。

室内侵入の観点から見ると、ディンプルキー防犯窓ガラスも効果的です。人気の設備とあわせて整えておくと、訴求しやすくなるのではないでしょうか。

セキュリティに関しては、以下の記事でもご紹介しています。他にどんな設備が有効なのか知りたい方は、あわせてご覧ください。

賃貸マンションやアパートの防犯は、窓・玄関・ベランダ対策が重要

以下の記事では、賃貸住宅で人気の設備を紹介しています。防犯関連の設備が上位に入っていますので、参考にしていただくとよいでしょう。

空室対策に効く、賃貸マンション【共用部分】の人気設備ランキング

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高齢者向け賃貸住宅のリスクと対策

高齢者向け賃貸住宅のリスクと対策

さて、高齢者を受け入れるとどのようなリスクがあるのでしょうか?リスクと対策を把握しておかないと、受け入れに踏み切りづらいでしょう。

ここからは、高齢者向け賃貸住宅のリスクを3つご紹介します。

リスク1:家賃の延滞

一般的には60~65歳で定年退職を迎える方が多いでしょう。定年退職以降は収入が少なくなりますので、それに合わせて家賃の支払い能力も下がります。

認知機能の低下で、滞納が始まるケースもあるでしょう。延滞リスクを解消するには、どうすればいいのでしょうか?

たとえば、高齢者向けの「家賃債務保証サービス」を利用してもらう方法がります。民間ではまだまだ少ないようですが、一般財団法人の「高齢者住宅財団」なども利用可能です。

参考:一般財団法人高齢者住宅財団「家賃債務保証」

家賃債務保証サービスは「賃貸住宅に入居する際の家賃債務等を保証し、連帯保証人の役割を担うことで、賃貸住宅への入居を支援」することを目的としています。

一例として、一般財団法人高齢者住宅財団の「家賃債務保証」の概要をご紹介しておきましょう。

内容高齢者の居住の安定確保を図る国の施策を受け、家賃債務保証制度を設けて居住を支援
対象住宅財団と家賃債務保証制度の利用に関する基本約定を締結した賃貸住宅
対象世帯住宅確保要配慮者世帯(高齢者世帯、障害者世帯、子育て世帯、外国人世帯など)
保証料2年間の保証の場合、月額家賃の35%(原則入居者負担で、契約時に一括払い)
保証の対象(1)滞納家賃(共益費・管理費を含む)や、(2)原状回復費用(残置物の撤去を含む)および訴訟費用
限度額(1):月額家賃の12か月分に相当する額、(2):月額家賃の9か月分に相当する額

だれしも督促などしたくないでしょう。高齢者相手なら、なおさらです。このような保証会社を利用できるなら、精神的にも助かるのではないでしょうか。

リスク2:事故や孤独死

高齢になると、だれしも認知機能が低下するでしょう。進行すると、火の不始末等のトラブルを起こすリスクが高まります。事故が起きた場合、オーナーさまや管理会社は対応に手間取られます。

また、独居の高齢者が増えている昨今では、孤独死のリスクも高まっています。万が一、お亡くなりになった場合は、残置物処理や事務処理などの手間もかかるでしょう。

特殊清掃が必要になった場合は、いわゆる「事故物件」になり資産価値の低下を招くリスクもあります。―― 事故物件の告知については、国土交通省が策定したガイドラインが参考になります。

参考:国土交通省『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』

上述のガイドラインによると「孤独死等で長期間にわたって人知れず放置され、特殊清掃やリフォームがおこなわれた場合」も告知すべき事案となっています。

可能な限り早いタイミングで、独居高齢者の認知機能低下や孤独死に気づいてあげるには、見守りサービスを強化していくしかありません。

リスク3:残置物の処理

孤独死が発生した場合、オーナーさまや管理会社は残置物を処理しなければなりません。とは言え、勝手に処分できませんので、残置物処理の受任者を定めておく必要があります。

一般的には、推定相続人を受任者とし、賃借人(委任者)との間で委任契約を締結していただくのがよいでしょう。しかし、推定相続人が存在しない、あるいは応じてくれない場合もあります。

その場合は、住宅確保要配慮者居住支援法人を「受任者」に指定できます。概要は、国土交通省のホームページをご覧ください。

参考:国土交通省「住宅確保要配慮者居住支援法人について」

この制度を活用すると、これまでより「賃貸借契約の解除」や「残置物の処理に関する死後の事務作業」などが円滑に進みやすくなるでしょう。

委任契約の条文については、国土交通省のモデル契約条項が参考になります。

参考:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」

高齢者向け賃貸住宅に取り入れたいサービス

高齢者向け賃貸住宅に取り入れたいサービス

賃貸住宅で高齢者を受け入れる際、何か準備しておいたほうがよいサービスはあるのでしょうか?

高齢者を受け入れる場合は、見守りや死亡時の残置物処理がボトルネックになるでしょう。実際、国のアンケート調査でも、不動産関連事業者から「必要な支援策」としてこのふたつがあがっています。

参考:国土交通省『新たな住宅セーフティネット制度における居住支援について』

残置物の処理に関しては、前章で触れました。ここでは、見守りサービスについてご説明します。

サービス1:見守り・緊急時駆けつけサービス

孤独死の長期放置を防ぐには、見守り体制を強化していく必要があります。見守りは、入居者の認知機能の低下の発見や早期対処にも有効でしょう。

見守りサービスは、簡易的なものから緊急時の駆けつけを含むものまでさまざまな選択肢があります。いくつか例をご紹介しましょう。

過剰な見守りサービスは、入居者から見ると「監視」のように映るかもしれません。ですから、入居される高齢者の気持ちを斟酌して、適切なサービスを選択する必要があります。

サービス2:親子世帯の同時契約割引

高齢者に身内がおられるなら、身内の方に見守ってもらうのが最善策でしょう。とは言え、どうすれば身内に見守りをしてもらえるでしょうか?

たとえば、子世帯と親世帯(高齢者)が同時期に同じ賃貸住宅を契約した場合に「3年間、募集家賃から10%割引」などの減額を適用する方法があるでしょう。UR等が実施しているサービスの転用です。

この手法は親世帯にも子世帯にもメリットがありますので、うまくかみ合ったご世帯からのお問い合わせが期待できます。

親世帯のメリット ・もしものときに子どもを頼れる安心感
・子や孫と身近に接することができる
子世帯のメリット ・親世帯を近くから見守ることができる
・親世帯に子育てをサポートしてもらえる

物件オーナーも、高齢者の見守り人を確保できるだけでなく、一度に二世帯の入居者を確保できます。

高齢者向け賃貸住宅市場は、今後も成長が見込まれます。高齢者向けの設備と高齢者に役立つサービスを準備することで、継続的な入居者増が期待できるでしょう。

日常の運営の中では、高齢者のニーズやリスク管理に敏感であることが求められます。これらをバランスよく実行することが、収益性の高い運営につながりますよ。

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