賃貸物件の管理者必見、トラブルシューティングガイドと活用例

入居者からのお問い合わせ対応に手を取られて、気づけばかなりの時間がたっていた ―― そんな経験をされた方は、少なくないでしょう。

中には「いろんな入居者さんから、同じことをよく聞かれる」「また、このトラブルか」と食傷気味の方もおられないでしょうか?そんなときに役立つのが、トラブルシューティングガイドです。

本稿では、トラブルシューティングの例と、ガイドの活用方法をご紹介します。あなたもトラブルシューティングガイドを整備して、お問い合わせ対応の手間を減らしてみませんか?

目次

賃貸物件のトラブルシューティングガイド

さっそく、トラブルシューティングの例を以下のように分類してご紹介します。

  • 水まわりのトラブル
  • 電気・電子機器のトラブル
  • 壁や床のトラブル
  • ドア・窓まわりのトラブル
  • セキュリティのトラブル

本稿のトラブルシューティングをヒントに、貴社に合ったガイドを作成してみてください。

水まわりのトラブル

水まわりのトラブル

水まわり関連では、以下のトラブルと対処法をご紹介します。

  • 水が出ない
  • ガスが出ない
  • 水漏れしている
  • 排水口の水が流れにくい
  • トイレが詰まった

それでは、順番に解説していきます。

水が出ないのですが、どうすればいいですか?

水が出ないときは、断水あるいは止水栓が閉まっている場合があります。以下のような断水の情報はなかったでしょうか?

  • 給水管や給水設備の工事
  • 貯水槽の清掃
  • 地震による断水
  • 停電による断水

停電でも断水するケースがあります。なぜなら、電気が使えないと給水ポンプが作動しなくなるからです。

断水がないようなら、止水栓が閉まっていないか確認してください。止水栓は、水栓につながる給水管をたどると、どこか近くにある場合があります。水道メーター内にある元栓もご確認ください。

トイレの水が流れない場合は、排水弁が開かなくなっているかもしれません。ロータンク内の排水弁を動かす鎖が引っかかったり切れたりしていないか、ご確認ください。

寒冷地では、凍結も考えられます。給水管や給水設備に異常があれば、管理会社へ連絡してもらいましょう。

ガスが出ないのですが、どうすればいいですか?

ガス臭い場合は、ただちに所轄のガス会社に連絡してください。ガス臭くない場合は、以下が考えられます。

  • ガス栓の誤開放
  • ゴム管の外れ
  • 元栓が閉まっている

ガスコンロの元栓は、コンロ下のキッチンユニット内にあります。栓が閉まっていないか確認しましょう。

マイコンメーターもご確認ください。表示ランプが赤く点滅していれば、ガスが遮断されています。

マイコンメーターには、地震や流量異常などを感知して自動的にガスを遮断する機能がついています。復帰手順は、以下のとおりです。

  • すべてのガス元栓を閉める
  • 復帰ボタンのキャップをはずす
  • 復帰ボタンを押す
  • 表示ランプの点灯を確認する
  • 手を離して2~3分間待つ

表示ランプが点滅に変わったら、マイコンがトラブルの有無をチェックしているサインです。ランプの点滅が消えれば、ガスを利用できます。

復旧できない場合や頻繁に止まる場合、または異常を発見した場合は、所轄のガス会社までご相談ください。

なお、一部のガス器具だけ使用できないなら、その器具が故障している可能性もあります。

水漏れしているのですが、どうすればいいですか?

お風呂や洗濯機から水があふれたり漏れたりしているときは、すぐに水栓を閉じましょう。浴室や洗濯機のパンから水があふれ出ている場合は、拭き取ってください。下階に流れる恐れがあります。

水栓や水道管からの漏水は、以下の手順で確認できます。

  • すべての水栓を閉める
  • 水道メーターを確認する
  • パイロットが止まっているか確認する

水栓を閉じているのにパイロットが回っているようなら、水漏れが疑われます。水道メーターボックス内の元栓を止めてください。そのあと、管理会社へ連絡してもらいましょう。

なお、水漏れあとを放置すると、カビやダニの発生原因になります。シロアリや木材腐朽菌の発生につながるケースもありますので、しっかり拭き取り、乾燥させる必要があります。

夜間などで管理会社と連絡が取れない場合の対処法も、記載しておきたいところです。緊急時は「管轄の水道局に連絡して指定工事業者を紹介してもらう」等の、取り決めをしておきましょう。

排水口の水が流れにくいのですが、どうすればいいですか?

排水口を掃除しても流れにくいようなら、管理会社へ連絡してもらいましょう。排水管内の掃除や、高圧洗浄などの処置が必要です。

排水口の詰まりは、異物を流さないこと、そして定期的にお掃除していただくことが有効な対策になります。

たとえば、以下は排水口に流さないように日常的に注意してもらい、ときどき掃除していただくと詰まりにくくなるでしょう。

  • キッチン:油や生ゴミ
  • 洗面台やお風呂:髪の毛
  • 洗濯機:糸クズ

排水トラップも、市販の洗浄剤などで定期的にお掃除されるとよいでしょう。トラップ内に汚れが蓄積されると、詰まるだけでなく、悪臭の原因にもなります。

トイレが詰まったのですが、どうすればいいですか?

トイレが詰まったら、ラバーカップ(スッポン)を利用してみましょう。トイレに流せるものが詰まったときは、ラバーカップで詰まりを解消できることが多いでしょう。

手順は、以下のとおりです。

  • 水が少ない場合は、水を注ぎ足す(カップ部分が水に浸るまで)
  • 便器の排水口にゆっくりラバーカップを押し込み密着させる
  • 勢いをつけて素早く引き戻す

上述の動作を、詰まりが解消するまで何度か繰り返してみてください。解消しない場合は、トイレに流せないものが詰まっている可能性があります。管理会社へ連絡してもらいましょう。

トイレ詰まりは、異物を流さないことが対策になります。トイレットペーパーの芯や生理用品などを、流さないようにしてもらいましょう。

流せるお掃除シートも、できるだけ可燃ゴミに出してもらうといいでしょう。大量のトイレットペーパーを一度に流さないことも重要です。

電気・電子機器のトラブル

電気・電子機器のトラブル

つづいて、電気・電子機器関連です。以下のトラブルの対処法をご紹介します。

  • 電気を使えない
  • 急にテレビの映りが悪くなった
  • エアコンが効かない

それでは、順番に解説していきます。

電気を使えないのですが、どうすればいいですか?

停電が起きていないでしょうか?工事や自然災害で停電が起きている場合は、復旧まで待つしかありません。

停電が起きていない場合(自分の部屋だけ電気を使えない)は、ブレーカーが落ちていると思われますので、分電盤を確認してください。

分電盤内には、一般的に以下のブレーカーが並んでいます (アンペアブレーカーがない場合もあり)。

  • アンペアブレーカー
  • 漏電ブレーカー
  • 安全ブレーカー(複数)

アンペアブレーカーは、家全体で契約アンペア以上の電力を使うと落ちる仕組みになっています。もしも、アンペアブレーカーが落ちてしまったら、使用電力を減らします。

漏電ブレーカーは、漏電を検知すると落ちるようになっています。漏電箇所の特定方法は、以下のとおりです。

  • 分電盤のブレーカーを全部切る
  • アンペアブレーカーと漏電ブレーカーを上げる
  • 安全ブレーカーをひとつずつ上げていく

再び漏電ブレーカーが落ちれば、その安全ブレーカーの回路が漏電している可能性が高いです。漏電は火災につながる恐れがあるため、すぐに管理会社へ連絡してもらいましょう。

安全ブレーカーは、特定のお部屋で定格容量以上の電気を使うと落ちます。ひとまず、落ちた安全ブレーカーの回路の電化製品は、すべてプラグを抜きましょう。

それでもまだ安全ブレーカーが切れる場合は、建物側の配線等の不具合かもしれません。すぐに管理会社へ連絡してもらいましょう。

急にテレビの映りが悪くなったのですが、どうすればいいですか?

急にテレビの映りが悪くなった場合は、以下が原因と思われます。

  • ケーブルやテレビの不具合
  • アンテナの不具合

まず、他のお部屋の状況を確認できそうなら、確認していただくとよいでしょう。他のお部屋は問題ないようなら、テレビやケーブルの故障が考えられます。

テレビの故障が疑われる場合は、再起動してみて復旧するか確認してみましょう。ケーブルの不具合が疑われる場合は、ケーブルを交換してみましょう。

他のお部屋でもテレビの映りが悪くなっているようなら、アンテナが倒れていないか確認しましょう。テレビやケーブル、アンテナに異常がない場合は以下が疑われます。

  • 電波干渉
  • 電波障害

電子レンジやBluetooth機器などからの電波が干渉して、テレビが映りにくくなるケースもあります。干渉が疑われる電子機器の電源を切ってみましょう。

そもそも、テレビの電波に障害が起こっている場合は、改善するまで待つしかありません。なお、転居直後でしたら、テレビ自体のチューニングをやり直すことで改善する場合があります。

エアコンが効かないのですが、どうすればいいですか?

エアコンが効かない場合は、エアフィルターが目詰まりしていないか確認しましょう。ホコリで目が詰まっているようなら、掃除してください。

エアフィルターの掃除手順は、以下のとおりです。

  • 電源プラグを抜く
  • 前面の外装パネルを開ける
  • 掃除機で簡単にホコリを吸い取っておく
  • エアフィルターをはずす
  • 掃除機で丁寧にホコリを吸い取る
  • お風呂場等でホコリを洗い流す
  • 布で水気を拭き取り乾燥させる
  • 乾いたらエアフィルターを戻す

エアコンシーズン中は、2週間に1回程度の頻度でエアフィルターの掃除が必要です。

エアフィルターが目詰まりしていると、エアコンが効かなくなるだけでなく、電気代が上がったりカビが繁殖したりするケースもあります。定期的に掃除しましょう。

壁や床のトラブル

壁や床のトラブル

つづいて、壁や床関連のトラブルや対処法をご紹介します。

壁や床のトラブルでは、原状回復に関する費用負担が問題になりやすいので注意が必要です。一般原則として、以下に当てはまる場合は賃借人の負担で原状回復しなくてはなりません。

  • 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反
  • 通常の使用方法を超えるような使用による損耗等

一方、以下の場合は賃貸人の負担で原状回復しなくてはなりません。

  • 建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)
  • 賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)

では、以下のケースについて個別に見ていきましょう。

  • 子どもが壁紙などに落書きをしてしまった
  • 壁に穴を開けた
  • 床材が変色した・床を傷つけた

順番に解説していきます。

子どもが壁紙などに落書きをしてしまったのですが、修繕費用は誰の負担ですか?

壁の落書きは、可能な限りキレイに消してもらいます。消せない場合は、入居者に壁の貼り替え費用を請求できるケースがあります。

ちなみに、国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』では、壁紙に関して「6年で残存価値1円となる」としています。

そして、修繕等の費用のうち「経年変化や通常損耗による部分は、賃料に含まれているため二重に費用を負担することはありません」としています。

参考:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』

これを見た入居者から「6年以上住んでいるから、貼り替え費用は払わない」と言われる場合があるでしょう。しかし、既出のガイドラインには以下のような記載もあります。

経過年数を超えた設備でも、賃借人は善良な管理者としての義務があり、故意や過失による損害は賃借人の負担となることがあり得る

~中略~

経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す

~中略~

賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがある

6年たった壁紙でも、入居者がキレイに使っていたら、貼り替えずにそのまま使えたでしょう。落書きにより使えなくなったのであれば、貼り替え費用の一部を請求できる場合があります。

原状回復については、以下の記事で詳しく解説しています。ご興味がある方は、あわせてご覧ください。

【賃貸住宅】原状回復の東京ルール(賃貸住宅紛争防止条例)とは

壁に穴を開けたのですが、修繕費用は誰の負担ですか?

入居者が壁に穴を開けてしまった場合も、状況によっては賃借人の負担で修繕していただくことになります。

既出のガイドラインでは「壁等のくぎ穴、ネジ穴 (重量物をかけるために開けたもので、下地ボードの貼り替えが必要な程度のもの)」は賃借人の負担とされています。

一方「壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張り替えは不要な程度のもの) 」「エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡」は賃貸人の負担とされています。

床材の変色やキズの修繕費用は、誰の負担ですか?

床材の変色やキズも、状況によっては賃借人の負担で修繕していただくことになります。

既出のガイドラインでは、以下は賃借人の負担とされています。

  • 冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)
  • 引越作業等で生じた引っかきキズ
  • フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)

一方「家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡」「フローリングの色落ち (日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)」は賃貸人の負担とされています。

ドア・窓まわりのトラブル

ドア・窓まわりのトラブル

つづいて、ドア・窓まわり関連です。以下のトラブルの対処法をご紹介します。

  • ドアや窓の開閉が重い
  • 共用玄関のオートロック扉が開かない
  • カギを紛失した

それでは、順番に解説していきます。

ドアや窓の開閉が重いのですが、どうすればいいですか?

まずはレールや戸車部分を確認して、ホコリや小石などが詰まっていないか、あるいは異常がないか点検してください。異物が詰まっている場合は、取り除いてください。

戸車が回らない、あるいは壊れている場合は、修理や交換が必要です。管理会社へ連絡してもらいましょう。

なお、引き違いのサッシに潤滑剤を使うのはNGです。滑りやすくなったことで一時的に開閉しやすくなりますが、回らなくなっている戸車がサッシの下枠との摩擦で削れてしまいます。

共用玄関のオートロック扉が開かないのですが、どうすればいいですか?

オートロック扉が開かない場合は、停電、あるいは電気システムの故障が考えられます。停電なら復旧を待ち、停電していないようであれば管理会社へ連絡してもらいましょう。

なお、オートロック扉は製品によって停電時の状態が変わります。解錠されるタイプなら、手動で開閉できます。そのため、復旧まで防犯能力が落ちるとお考えください。

施錠されたままのタイプは、各戸玄関ドアのカギを差し込んで回すと開きます。生体認証やカードキー方式は作動しませんので、内側から解錠してもらう必要があります。

カギを紛失したのですが、どうすればいいですか?

お部屋のカギを紛失したときは、落ち着いて、カバンの底やポケットの中などをもう一度探してみましょう。

見つからない場合は、利用できる予備のカギがある方なら、ひとまずそれを使用してもらいます。管理会社にもご連絡いただき、カギの交換を依頼してもらいましょう。

入居者が勝手に合カギを作成しないように、お知らせしておきましょう。防犯上よくありません。

セキュリティのトラブル

セキュリティのトラブル

つづいて、セキュリティ関連です。以下のトラブルの対処法をご紹介します。

  • 窓ガラスが割れた
  • 火災ではないのに警報器が鳴る
  • 玄関ドアのカギを交換したい

それでは、順番に解説していきます。

窓ガラスが割れたのですが、どうすればいいですか?

窓ガラスが割れたときは、すぐに管理会社へ連絡してもらいましょう。不審者が侵入した形跡がある場合は、警察にも連絡していただくほうがよいでしょう。

ガラスの入れ替えに時間がかかる場合は、応急処置を実施します。サッシに残るガラス片や散乱した破片を取り除き、合板等でふさぎましょう。

ガラスの原状回復費用については、入居者の故意や過失、善管注意義務違反による破損は賃借人負担となります。地震や自然に発生した亀裂(網入りガラス等)は賃貸人負担となります。

火災ではないのに警報器が鳴るのですが、どうすればいいですか?

火災報知器は、火災が起こっていなくても、故障や製品寿命で鳴ることがあります。管理会社へ連絡してもらいましょう。

玄関ドアのカギを交換したいのですが、どうすればいいですか?

管理会社へ連絡していただき、カギの交換を依頼してもらいましょう。

トラブルシューティングガイドの活用例

トラブルシューティングガイドの活用例

最後に、トラブルシューティングガイドの活用例をご紹介します。

トラブルシューティングガイドは、書面にまとめておくだけではフル活用できません。いつでも簡単に、関係者(入居者、オーナー、管理会社など)が閲覧できるようにしておくとよいでしょう。

インターネット上に公開しておく

よくある質問(FAQ)を整理して、ホームページ等で公開しておきましょう。入居者がいつでも気軽に確認できるようにしておくと、オーナーや管理会社は対応コストを削減できるでしょう。

また、ネット上でいつでも見られる状態になっていると、とりわけ管理会社の新入社員に役立ちます。わざわざ先輩や上司に聞かなくても、ある程度は自分で対応できるようになるでしょう。

不動産賃貸の管理会社はDXをどう進めていくべきか

AIに読み込ませてチャットボットを作成する

ホームページ等に整備されたFAQは、とても便利ですが、短所もあります。自分の欲しい情報を探すのに、時間がかかるでしょう。

そんなときは、AIに学習させてチャットボットにすると時短できます。AIとチャットしながら対処法を発見できますので、膨大なFAQの中から、短時間で自分に適合するQ&Aを探せます。

今後、チャットボットの開発コストが下がっていくでしょう。まずはFAQの整備から始め、機を見てチャットボットを作成されてみてはいかがでしょうか?

不動産業界で生成AIを導入するなら?生成AIの活用例3選

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