不動産業界で生成AIを導入するなら?生成AIの活用例3選

OpenAIが「ChatGPT」を公開して以来、生成AIの話題を聞かない日がなくなりました。しかし、まだまだ導入できている企業は一部のようで、米国の7割に対し、日本は2割程度でとどまっています。

とは言え「8割は未導入か」と安心してはいけません。もはや、現在の生成AIは黎明期のインターネットと同じくらい、今後のビジネスを左右する存在であることが明白です。

本稿では、生成AIの活用例導入メリット、そして課題をご紹介します。あなたも、本稿をヒントに生成AIの導入を検討されてみてはいかがでしょうか?生成AIを生産性アップに役立てましょう。

目次

不動産業界の生成AI活用例3選

不動産業界の生成AI活用例3選

孫正義氏が特別講演で語った「(まだChatGPTを使ってない人は) 人生を悔い改めた方がいい」という持論に、ドキッとした方が少なくないでしょう。

参考:SoftBank World 2023 孫正義 特別講演 AGIを中心とした新たな世界へ (YouTube)

あなたは、どうですか?毎日のように生成AIを利用していますか?あなたの会社はどうでしょうか?ビジネスに生成AIを活用できていますか?

もしも答えが「ノー」なら、まず他人の活用事例を知るところから始めてみてはどうでしょうか?―― さっそく、いくつか活用例をご紹介します。

活用例1:自動返答チャットボット

生成AIを利用した、チャットボットが出現し始めています。顧客からのお問い合わせに、生成AIがリアルタイムで対応してくれるのです。

不動産業界であれば、お客さまとの以下の問答に活用され始めています。

  • 物件に関するご質問
  • 内覧の申し込み
  • サービスについてのお問い合わせ

上述のお問い合わせに対して、生成AIを活用したチャットボットが適切な回答や情報を出力して初期対応をおこなってくれます。そして、どこかのタイミングで人と入れ替わるのです。

たとえば、東急リバブルが開発した「AIアバター」は、営業担当者に代わって、お客さまと会話しながら物件の説明ができます。相性診断を通じて、個々の顧客に合った物件を提案することも可能です。

接客内容はテキスト出力され、営業担当者に引き継がれます。このようなスタイルの初期対応をおこなうことで、お客さまに対して以下のメリットを提供できます。

  • 非対面、非接触だから、お客さまが緊張しなくて済む
  • お客さまがご自身のペースで質問できる
  • 一方的な動画配信に比べ、対話できることで物件への理解が深まる

参考:東急リバブル ニュースリリース

大京グループも、マンション管理に役立つ「AI INFO」を開発しました。

このシステムを利用すると、マンションの共用部にあるディスプレイやスマートフォンアプリに管理関連情報を掲示できます。さらに、生成AIを搭載することで音声対話を実現しています。

居住者は、スマホアプリで管理情報を確認できるだけでなく、管理組合への書類提出やリフォーム相談などもおこなえます。

参考:大京 ニュースリリース

活用例2:営業力の強化

属人的だった営業スキルの共有化にも、生成AIが活用されています。会社のマニュアルや個人のノウハウを学習データとし蓄積することで、生成AIが営業の疑問に即時に回答してくれます。

たとえば、桧家ホールディングスでは、ソフトバンクが販売する「EXA AI SmartQA」を活用することで営業力を強化しています。

参考:SoftBank プレスリリース

桧家ホールディングスには、時間をかけて作成した「応酬話法マニュアル」があったそうです。しかし、調べたい内容を探し出すのに時間がかかるため、活用頻度は低い状態でした。

そこで、マニュアルの分解とQ&A形式への変換をおこない、約1400のデータにしてAIに読み込ませたそうです。同時に、建築用語や契約時に必要な法律関連の情報もインプットしています。

その結果、営業担当者が、タブレット等の携帯端末からいつでも参照したり質問したりできるようになりました。とりわけ新人には、以下の理由で好評のようです。

  • 手軽に使える
  • いつでも・何度でも・気兼ねなく聞ける

携帯端末からAIに質問できると、ふと思いついた瞬間に疑問をぶつけられます。自分のタイミングで聞けるので、自主学習が進みます。

従来の「分からないことをまとめておき、先輩や上司の都合がよいときにまとめて聞く」スタイルですと、聞きたいときに聞けません。接客中の疑問であれば、受注ロスにつながりかねないでしょう。

しかし、相手が生成AIであれば、いつでも気兼ねなく聞けます。過去に一度聞いたことも、躊躇なく何度でも聞けます。

参考:exa 事例・実績「AIチャットボット導入で 受注拡大に向けて営業力を強化」

活用例3:マーケティングコンテンツ生成

チャットボットの開発や、生成AI活用型の社内マニュアルの制作は、小規模の会社にはハードルが高いかもしれません。一方、マーケティングコンテンツの生成なら、取り組みやすいでしょう。

たとえば、以下の生成なら、既存の生成AIアプリを活用することで実現できるでしょう。

物件説明の作成アシスト物件の写真や仕様から特徴を分析し、それをもとに物件説明のたたき台を作成
広告キャンペーンの作成アシスト市場データや顧客プロファイルを分析させて、広告キャンペーン案を作成
コンテンツ作成のアシストペルソナの作成や、ターゲットに刺さる記事やメルマガのたたき台を生成

大手では、2D図面を3Dモデル化できる生成AIも開発されています。このようなシステムが、安価で使えるようになる日もそう遠くないでしょう。

参考:LIFULLHOME’S 3D間取り

不動産業界で生成AIを導入するメリットと課題

不動産業界で生成AIを導入するメリットと課題

つづいて、不動産業界で生成AIを導入するメリットを確認しておきましょう。現在の課題についても触れたいと思います。

その前に、まず生成AIとは何なのか、簡単におさらいしておきましょう。

生成AIとは

AIは「Artificial Intelligence」の略で「人工知能」と訳されます。現在のAIの中心技術は「機械学習」で、コンピューターシステムが自動で学べるようになっています。

機械学習では、AIが大量のデータセットから規則やパターンを自動的に学習します。また、学習した知識をもとにして、新しいデータに対する予測や決定をおこないます。

生成AIも、既存のデータセットからパターンや特徴を学習し、その知識を用いて元のデータと似た特性を持つ新しいデータを生成します。生成AIの例をご紹介しましょう。

  • ChatGPT(文章生成AI)
  • Stable Diffusion(画像生成AI)
  • Text-to-Speech AI(音声生成AI)
  • Sora(動画生成AI)

既出の事例のとおり、生成AIはさまざまなアプリケーションに利用されています。

たとえば「顧客からの問い合わせ対応、物件情報の自動生成、効果的な広告キャンペーンの提案、顧客ごとにパーソナライズされた物件レコメンド」などです。

他にも、競合他社の分析や、難読テキスト(論文や法律条文など)の要約にも活用されています。

メリットは、生産性が高まること

生成AIは、まだ8割くらいの企業が導入できていません。そんな生成AIの導入を急ぐメリットは、どこにあるのでしょうか?

生成AIを活用すると、日常業務の一部が自動化され、生産性が高まります。とくに、工数を多く割き、かつ単調な業務ほど生成AIによる効率化の効果が高くなるでしょう。

たとえば、オープンハウスが開発した「オンラインチラシの自動作成システム」は、年間20,000時間の工数削減に寄与しています。

さらに、他社の取り扱い物件を紹介する際に手作業でおこなっていた「物件案内図の帯の差し替え」を自動化するAIを開発したことで、年間25,700時間の工数削減を実現しています。

参考:紙文化が根強い不動産業界でDXによる革新を
参考:オープンハウス、AI・RPA技術を活用し不動産業務を自動化

このような作業時間が減少すれば、人手不足の解消につながるでしょう。非生産的な作業を生成AIが代行してくれると、従業員の満足度も上がります。

従業員が生き生きと仕事をできるようになれば、おのずと接客応対の質も向上するでしょう。その結果、顧客満足度が上がり、集客増や売上増につながる好循環が生まれます。

売上増を実現できたら、賃上げや新たな生成AIの導入も実施しやすくなります。

課題は、ハルシネーションが発生すること

一方、生成AIの導入には、多くの課題もあります。その最たるものが「ハルシネーション (幻覚)」でしょう。

生成AIにおけるハルシネーションとは、不正確な内容や事実にもとづかない情報を生成する問題のことを指します。ハルシネーションは、以下のリスクを生じさせる可能性があります。

  • 誤った情報にもとづいて決断したことで、経済的損失が発生する
  • 顧客に誤った情報を提供してしまい、信頼性の低下を招く
  • SNS等で炎上して、口コミ評価に悪影響を与える

AIによる自動生成コンテンツは、今のところまだ人間による監督が必要でしょう。誤りや不適切な内容を修正すると同時に、オリジナリティーを付加する必要があります。

また、生成AIのユーザー側も、知識不足や活用スキル不足などの問題を抱えています。ハルシネーションを見破れないだけでなく、そもそも「使い方が分からない」と言ったケースもあります。

ですから、生成AIを本気で活用しようとすると、サポートとトレーニングが必要不可欠になります。これは企業にとってコストとなり、とくに小規模の不動産会社には導入障壁となるでしょう。

生成AIを導入する流れを3ステップで解説

生成AIを導入する流れを3ステップで解説

大手の企業であれば、最初からリソースをふんだんに使い、一気に生成AIを導入できるでしょう。一方、小・中規模の会社は、大手のような進め方はできません。

では、小・中規模の会社ができるだけ負担やコストをかけずに、ジワジワと着実に生成AIを導入するにはどうすればいいのでしょうか?―― 導入方法を、3ステップでご提案しましょう。

ステップ1:情報収集と意識づけ

まずは、担当者を選出して、情報収集にあたってもらいます。セミナーに参加してもらうのもいいでしょう。

獲得した知見は、社内ニュースレターなどでアウトプットしてもらいます。AIの基礎知識や最新情報、不動産業界のケーススタディを中心に、定期的に発信するといいでしょう。

発信を続けることで、従業員の生成AIに対する関心が高まり、活用していく意識も高まります。生成AIに関して、社内のイノベーター(革新者)とラガード(遅滞者)の見分けもつき始めるでしょう。

ステップ2:勉強会やワークショップを実施

社内の空気が温まってきたら、勉強会を実施するといいでしょう。実際に手を動かしながら学べる「ワークショップ形式」なら、従業員が実際にAIツールを使用するよい機会になります。

ときには外部のエキスパートを招いてもよいでしょう。AI技術を専門とする外部講師を招き、セミナーやワークショップを実施して、従業員の学びを深めます。

生成AIの利用を促す取り組みとして「プロンプト(生成AIに動作を促すコマンド)コンテスト」を実施する方法もあります。

ステップ3:小規模なパイロットプロジェクトを開始

生成AIの基礎的な活用ができるようになったら、生成AIを導入するパイロットプロジェクト(試験的事業企画)を開始しましょう。担当者や意識の高い方による、小規模なチームを作成します。

まず、改善効率の高そうなタスクを割り出します。なおかつ、初期段階では難度が低いプロジェクトを選ぶほうがいいでしょう。あくまで、従業員に実践的な経験を積んでもらうことが目的です。

パイロットプロジェクトを試験運用してみて「フィードバックを収集 ⇒ 改善」を何度か繰り返します。全社的に展開できたら、パイロットプロジェクトの成果を社内で共有しましょう。

うまくいったら、インセンティブを提供するのもいいでしょう。業務効率の改善効果を金額で見える化して、一定額に達したら賞与に反映させる方法もあります。ぜひ、挑戦してみてください。

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