不動産賃貸の管理会社はDXをどう進めていくべきか

不動産業界にも、デジタル化の波が押し寄せています。あなたは「DXに対応しなければ、と焦る気持ちがあるけど具体的にどうしたらいいかよく分からない」と感じていないでしょうか?

そう感じている方は、ひとまず手を付けやすいところからデジタル化するとよいでしょう。一足飛ばしで取り組むと、うまくいきません。

本稿では、不動産業界におけるDXの動向やDX化の進め方、導入メリットなどをご紹介します。業務を効率化して社内や社外の満足度を高め利益を増やしたいとお考えの方は、最後までご覧ください。

目次

不動産業界におけるDXの動向

不動産業界におけるDXの動向

まずは、不動産業界におけるDXの動向からご紹介しましょう。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは

そもそも、DXとはどういうものなのでしょうか。―― DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、デジタイゼーションやデジタライゼーションを経て実現されます。

参考:総務省「デジタル・トランスフォーメーションの定義」

デジタイゼーションとは、ITツールを導入して業務を部分的にデジタル化することを指します。たとえば「ペーパーレス化やオンライン会議システムの導入」などが該当します。

デジタライゼーションとは、社外も含めて業務のプロセス全体をデジタル化することを指します。たとえば「クラウドで管理する物件情報を取引先と共有して業務の効率化を図る」等が該当します。

一方、DXでは、ビジネスモデル自体がデジタルの土台の上に立脚します。たとえば、メルカリやAmazonのような企業を想像していただくと分かりやすいでしょう。

  • デジタイゼーション:業務の部分的デジタル化
  • デジタライゼーション:業務プロセス全体のデジタル化
  • デジタル・トランスフォーメーション:ビジネスモデル自体のデジタル化

DXは、一朝一夕にできるものではありません。デジタイゼーションやデジタライゼーションを導入する中で育まれ、発露していくものでしょう。

とは言え、悠長に進める余裕はなさそうです。何年か先には、競合がDXを活用した企業に置き換わっていた、ということが起こり得る時代なのです。

ゴールをDXに定めたら、できるだけ早く、簡単にできることから試してみるべきです。デジタイゼーションやデジタライゼーションを、KPIにしてみてはいかがでしょうか。

デジタル・トランスフォーメーションの取組状況

さて、DXの取組状況はどうなっているのでしょうか。総務省がまとめた『令和3年版情報通信白書』によると、どうやら現状では「7割強が未実施、半数は実施予定なし」のようです。

また、同資料から、大企業と中小企業で大きな温度差があることも分かります。

  • 実施していない大企業 (今後実施を検討):18.2%
  • 実施していない大企業 (今後も予定なし):39.5%
  • 実施していない中小企業 (今後実施を検討):17.6%
  • 実施していない中小企業 (今後も予定なし):68.6%

この結果は、大企業ほどDX導入の恩恵が大きいことや、潤沢な導入予算があること等が影響しているのでしょう。しかし、中小企業では「今後も予定なし」が多く、意識の差も読み取れます。

では、不動産業のDXの取組状況はどうなっているのでしょうか。同資料のデータから抜き出し、引用します。

  • 実施していない (今後実施を検討):20.8%
  • 実施していない (今後も予定なし):56.0%

不動産業界の実施割合は低く、かつ「実施していない (今後も予定なし)」が過半数を超えています。とは言え、危機感は持っているはずです。

不動産業界にもデジタルの波が押し寄せていて、従事者はそれを肌で感じています。だれもが一様に、以下のような不安を少なからず持っているのではないでしょうか。

  • DXによる顧客満足なしでは、競合に入居者を奪われそう
  • コロナ禍以降オンライン接客が一般化して、対応に迫られている
  • 電子契約に向けた法改正、政府主導でのデジタル推進が進んでいる
  • スマートフォンが普及し、業務はインターネットの活用が加速している
  • 労働人口減少により、DXを活用した働き方の見直しが避けられない

その不安は、一部がすでに現実のものとなっています。DXを味方に付けるのか、それともDXに滅ぼされるのか ―― すでに、二者択一を迫られているのかもしれません。

これから革新と破壊が起こる

DXは、破壊的変化をともなうことがあります。DXを実践する企業が市場に参入した結果、入れ替わるように既存の企業が市場から退出させられる事例が出ているのです。

このようなデジタルによる破壊を「デジタル・ディスラプション」と言います。DXにより、古いビジネスモデルが淘汰(とうた)された例をあげてみましょう。

  • Amazonなどのインターネット通販の登場 ⇒ 書店や小売業者が経営破綻
  • Netflixなどの動画配信サービスの登場 ⇒ レンタルビデオチェーンが倒産
  • UberやAirbnbなどのシェアリングエコノミーの登場 ⇒ 既存の業界が大打撃を受ける

革新的な技術を持つビジネスモデルは、従来のビジネスモデルに風穴を開けます。そして、古いビジネスモデルに立脚する既存企業は、競争力が低下して存続が困難になるのです。

このような革新と破壊が「不動産業界では起こらない」とは考えにくいでしょう。異業種から競合が誕生するケースや、海外から競合が乗り込んでくるケースも、他業界と同様に起こり得ます。

デジタル技術の活用へのハードルが大きく下がっていることから、デジタルを実装した新興勢力が誕生し、既存勢力を脅かす環境が生まれやすくなっている。

~中略~

デジタルを活用したサービスは距離等の制約を超えて、全世界に迅速に展開されることから、国内のみならず海外も含めたデジタル企業が競争相手となる可能性がある。

出典:令和3年版情報通信白書

これは、人ごとではありません。変化できない企業は消費者から選ばれなくなり、客付け力が弱まるのではないでしょうか。生き残るには、吐故納新(とこのうしん)の覚悟が要るのです。

一方、DXの導入に成功した企業は、サービスが便利で正確でスムーズになります。業務の時間の浪費が止まり、本来注力すべき仕事に集中できるようになるのです。

不動産賃貸業界がかかえる課題

不動産賃貸業界がかかえる課題

DXを成し遂げる際、腰折れしないように、まず身近な課題をデジタルで解決するところから始めるとよいでしょう。そのほうが改善を実感しやすく、継続の動機付けができます。

たとえば、こんな課題をかかえていないでしょうか。

  • アナログで非効率な業務が多い
  • 情報の伝達に多大なコストを消費している
  • 非対面による接客が一般化してきた
  • 働き方の多様化への対応に迫られている

それぞれ、もう少し掘り下げてみましょう。

アナログで非効率な業務が多い

不動産業界は、アナログな業務が多い業界です。たとえば、以下のふたつは「ムダ、非効率」と感じている方が少なくないでしょう。

  • 紙の利用が多い
  • 電話連絡が多い

紙による「連絡、契約、コミュニケーション」等は、不動産業界の従事者を悩ませています。作成や郵送業務に時間を取られ、個人データの保管にともなうリスクも負わねばなりません。

電話がつながらず何度もかけ直したり、電話で業務が中断されたりするケースもあるでしょう。繁忙期のお問い合わせによる業務の遅延は、どこも深刻な問題になっているのではないでしょうか。

このようなアナログな業務が多い会社では、情報共有が進まず、業務が属人的になりがちです。担当者しか対応が分からない事態に陥りやすく、業務が思うように進みません。

情報の伝達に多大なコストを消費している

賃貸管理は情報伝達の連続です。入居者・仲介会社・保証会社・オーナーなどの間に入ってコミュニケーションを取らねばならず、従業員の負担は相当なものでしょう。

情報の非対称性も、依然問題になったままです。空室情報の更新がリアルタイムにできず、すでに入居者が決まっていると言われ、がっかりすると同時に不信感を募らせる消費者が少なくありません。

その他、煩雑な書類郵送も、DXを活用することで改善の余地が大いにありそうです。管理離れも、デジタルを活用した密なコミュニケーションにより、防止できるかもしれません。

非対面による接客の一般化

コロナ禍で非対面によるサービス提供が加速しました。面談を敬遠するお客様が増え、お部屋探しでもニーズが高まったのではないでしょうか。

たとえ感染症が収束したとしても、非対面の接客を望む声は、もうゼロにはならないでしょう。店舗へ出向かずにお部屋探しができるサービスも、整いつつあります。

いくつか例をあげてみましょう。

  • OHEYAGO:物件検索・セルフ内覧サービス
  • NURVE:VR(バーチャルリアリティ)内覧サービス
  • スペースリー:VRコンテンツを制作・管理できるサービス

VRで内覧すると、現地に行かなくても見に行った感覚になります。「せっかく現地まで見に行ったのに、お客様に合わなかった」といった徒労が減るでしょう。

短時間で複数の物件を見られますから、お客様も「たくさん見せてもらった」と満足してくださいます。内覧にデジタルの力を活用する恩恵は、小さくないでしょう。

働き方の多様化

時世やコロナ禍の影響で、働き方が変わってきました。喫緊の課題としては「自社に適したテレワークの導入」をあげる事業者様が少なくありません。

とは言え、不動産関連のお仕事は、従来の業務のほとんどが出社を前提としています。遠隔地からの業務遂行は、困難ではないでしょうか。

そうなると、働き方だけでなく、ビジネスモデルの見直しも平行して進めていく必要があります。そういう観点からも、賃貸業務にDXが求められています。

DXをどのように進めていくべきか

DXをどのように進めていくべきか

さて、このような課題を克服するためにDXをどのように進めていくべきでしょうか。なにをすべきでしょうか。

やるべきことは、多岐にわたります。まず、組織的に以下のことを進めていく必要があるでしょう。

  • 予算の確保
  • ビジョンの策定
  • 推進のための組織・体制の構築
  • 業務の変革に対する社員等の抵抗を解消
  • 専門資格取得の奨励・補助
  • 外部企業との連携
  • 社内外における研修

社内に推進できる人材がいない場合は、新たに人材の確保も必要になるでしょう。じつは、このような「人材の不足」を一番の課題と考える事業者が少なくありません。

実施段階では、ICT(ITの中でも「C=コミュニケーション」に特化した技術)に関する取組も必要になります。こちらも、取り組み例をあげてみましょう。

  • 古いシステムの刷新とICTツールの活用
  • IoTやクラウドなど、デジタル技術の活用
  • 蓄積されていくデータの活用

なかなか大変な道のりに感じますが、大切なことは最初の一歩を踏み出すことです。まずは、取り組みやすいところにフォーカスしてDX化を進めていくとよいでしょう。

DXを賃貸管理会社が導入するメリット

DXを賃貸管理会社が導入するメリット

最後に、DX(前段階としてのデジタイゼーションやデジタライゼーションも含む)を賃貸管理会社が導入する主なメリットをふたつご紹介します。

  • 業務の効率化やコストの削減
  • 顧客満足度の向上

それぞれ、もう少し詳しく解説しましょう。

業務の効率化やコストの削減

DXを進めると、日々の業務が簡単・正確・スムーズにおこなえるようになります。アナログな方法と比べて、業務にかかる労働時間や費用を大幅に圧縮することができます。

いくつか、効率化の例をあげてみましょう。

  • 毎月の収支明細をオンラインで共有・管理
  • 電子契約で印紙・郵送作業・書類管理の負担軽減
  • 上長やオーナーからの「承認・否認」をICTで合理化
  • よくあるお問い合わせをFAQや自動応答にして対応コスト削減
  • 電子マネーやPayによるオンライン決済の実装

DXでムダな費用と時間が圧縮できたら、本来注力すべき他の業務に集中できるようになります。その結果、顧客満足の向上管理戸数の拡大売上増が期待できるでしょう。

DX化サービスが増え導入コストが下がってきたことも、DX化を後押ししています。もう、自社で開発することなく、以下のようなさまざまなツールが利用できるのです。

  • クラウド化された基幹システム
  • オーナーや入居者とのコミュニケーション用アプリ
  • 次世代型の業者間流通システム
  • リーシング業務の総合的なソリューションサービス

まずは、このようなサービスの資料を取り寄せ、運営会社の説明を聞いてみるとよいでしょう。そうしているうちに、DX化の道筋が見えてくるのではないでしょうか。

顧客満足度の向上

仲介会社との業務がスムーズに進めば、自社だけでなく仲介会社にもメリットがあります。たとえば、こんな仕組みができていれば、アナログ業務の削減と成約率の向上が期待できます。

  • 物件情報の共有
  • お問い合わせの自動応答
  • 内見予約や申込受付のオンライン化

オーナー様とも、DXを活用することで面談することなく接触頻度を増やせます。ご報告やご提案のやり取りを重ねるたびに、コネクションを強められるでしょう。

DX化で入居者の満足度が向上すれば、入居率の安定化にも寄与するでしょう。

【まとめ】工事監理の手間を減らしたい管理会社様にご提案

早い段階でDXの重要性に気づいた業界は、すでに取組を進めています。不動産業界も、DX化には順応していくべきです。

とは言え、無理して大風呂敷を広げる必要はありません。小規模で取り組みやすい「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」から始めるとよいでしょう。

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