新築では、壁紙選びに時間をかけるお施主さまが少なくありません。サンプル帳を持って帰って、数日のあいだ悩む方もおられるくらいです。それだけ、重要度が高いということでしょう。
では、賃貸住宅ではどうでしょうか?オーナーが、わりと適当に選んでしまっていないでしょうか?貸し手と借り手の意識に、もっともギャップがあるのが壁紙 ―― と言えるかもしれません。
裏を返せば、賃貸住宅でもちゃんと壁紙を選べば、お客さまの興味を引けるということです。本稿で「集客に結びつく壁紙選びのポイント」をご紹介しますので、ぜひヒントにしてください。
目次
賃貸住宅のリフォームに適した壁紙の選び方
賃貸住宅のお問い合わせ数や成約数を上げるには、お部屋の第一印象が極めて重要ですよね。では、第一印象は何によって形づくられるのでしょうか?
第一印象は、たとえば不動産ポータルサイトに掲載されている写真、あるいは内覧のときに見る実物によって形成されます。そして、お部屋の第一印象を大きく左右するのが、壁紙です。
適切な壁紙を選ぶと、好印象につながります。一方、適当にありふれた壁紙を選んでしまうと、お客さまに注目してもらえません。壁紙の力は、わりと大きいのです。
壁紙で集客効果を高めるには、デザイン性と差別化が大切
壁紙選びを大きく分類すると「デザイン選び」と「機能選び」に分けられるでしょう。そして、第一印象をコントロールする際には「デザイン選び」が重要です。
デザインは、お客さまの興味を引くために目立つことが重要ですが、ただ目立てばいいと言うわけではありません。お客さまに「そこで暮らしてみたい」と思ってもらえることが肝心です。
ですから、好き嫌いが分かれるようなデザインの壁紙はおすすめしません。人気の色柄を採り入れた壁紙の中から、競合があまり使っていないものを探してみましょう。
ちなみに、近年は以下の色が人気です。
アースカラー | はやりのナチュラルな内装(ドアや床)に合わせやすい |
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グレイッシュ | 居心地のよさを連想させる、木製家具にもマッチングさせやすい |
一方、若い方を中心に、柄物の壁紙を敬遠する方が増えています。「柄物はNG」というわけではありませんが、ターゲット層しだいでは注意が必要でしょう。
同じく、これまでは定番だった織物調のテクスチャの壁紙が、今は好まれなくなりつつあります。織物調に取って代わって人気なのが、塗り壁調のテクスチャの壁紙です。
魅力的な壁紙を使えば、空間の印象がガラリと変わります。不動産ポータルサイトで興味を引き、内覧でよい印象を与えられるでしょう。
比較的簡単に差別化要素をつくれるのが、壁紙の長所です。
壁紙で入居者から高評価を得るには、機能性が大切
空室を減らすための上策は「既存入居者の満足度アップ」ですよね。退去者がいなければ、次の入居者の募集も、退去後のクリーニングも要らなくなります。
入居後の満足度を高く保つには、機能性に優れた壁紙の選定が有効です。壁紙を選ぶ際は、機能にも着目しましょう。
壁紙のおもな機能をご紹介します。意外と多いです。商圏のお客さまやターゲット顧客の属性を考慮して、適切なものを選んでください。
防汚 | 汚れを落としやすい、キズがつきにくい、お手入れが簡単 |
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ストレッチ | 壁紙に表面強度とストレッチ性をプラス、ひび割れを軽減 |
撥水機能 | コーティングで水をはじく、液体の汚れを拭き取りやすい |
ウレタンコート | 施工性が高い、マットなテクスチャ、キズや汚れにも強い |
超耐久性 | キズや衝撃に強い、ペットと暮らすお部屋にぴったり |
防臭 | フィルム層で臭気成分をはじく、ニオイの吸着を防ぐ |
抗菌 | 清潔な空間をキープできる、カビの繁殖を抑制できる |
耐薬品性 | 中性洗剤で拭き掃除ができる、油汚れが気になるところによい |
抗アレル | 花粉やダニを吸着、アレル物質の働きを低減 |
リフレクト | 光の反射によりお部屋を明るくする、日中の節電に寄与 |
吸湿・放湿 | 吸水性ポリマーの働きにより湿気を吸収、乾燥時は放出 |
蓄光 | 絵柄に光を蓄える、消灯後20分ほど柔らかな光を放つ |
黒板風 | チョークで書ける、水拭きで消せる、磁石が付くものもある |
ニーズに配慮して壁紙を選ぶことで、入居者は長期にわたり快適な住環境を堪能できます。そうなれば、おのずと入居者からの評価が高まるでしょう。
入居者からの評価が高まれば、良好な関係の構築に寄与するだけでなく、口コミでの高評価につながります。
お部屋別に壁紙を貼り分けて、雰囲気を演出しよう
賃貸住宅では、手間を減らすためにすべて同じ壁紙を選びがちです。だからこそお部屋ごとに壁紙を変え、お部屋にあった雰囲気を演出できると、人の目を引くことができます。
以下の表を参考に、一部のお部屋の壁紙を変えてみてはどうでしょうか?
玄関 | 住まいの顔になる部屋。けれん味のない、特徴的な壁紙を選びたい。清潔感のあるホワイト系や、シックで高級感のあるグレイッシュカラーが人気。柄物は安っぽく見えないものを選ぶ。 |
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リビング・ダイニング | できるだけ自然光を反射するために、明るめの色やリフレクト壁紙を選ぶとよい。温かみのあるオフホワイトや明るめのグレイッシュな色にすると、リラックスできる空間になる。 |
キッチン | 防火性能が必須。食欲がわく、暖色系の壁紙がおすすめ。必要に応じて、防汚や耐薬品性能を付加すると、油汚れを取りやすい。貼り替え頻度が多くなる可能性を考慮する。 |
子ども部屋 | お子さまは成長が著しく、好みが変わりやすい。子どもっぽいものより、シンプルで明るく快活なものがおすすめ。1面だけ壁紙を変えたり、黒板風の壁紙を使ったりするのも楽しい。 |
洗面所・トイレ | 面積が小さいので、柄物の壁紙や個性的な色の壁紙でもなじみやすい。清潔感のあるブルー系やボーダー柄、水回りと相性がよいタイル柄などがおすすめ。防臭・撥水機能があるとよい。 |
寝室 | くつろぎや就寝に使う部屋なので、気持ちを落ち着かせるトーンや柄のものがよい。アースカラーやスモーキーカラーがおすすめ。ビビッドな色や、覚醒する色は合いにくい。 |
収納 | 汎用品の白い壁紙を貼られがちだが、あえて華やかな壁紙も候補に入れたい。とくにクローゼットは、お出かけ前に気分が上がるようなポップな色柄のものもあり。耐久性があるとよい。 |
壁紙選びにひと手間掛けて、ワンランク上の住空間にしましょう。
壁紙選びの注意点とその対処方法
つづいて、壁紙選びの注意点とその対処方法をご紹介します。
廃番に注意する
壁紙は、廃番になりやすい製品です。個性的な壁紙を使う場合は、廃番時の対処方法を検討しておきましょう。
たとえば「3面は代替が効きやすいホワイト系を選び、1面だけ個性的なクロスにする」などです。4面を個性的なクロスにすると「1面だけ貼り替える」といったリフォームがやりづらくなります。
「なるべく補修で済ませたい、貼り替えを少なくしたい」とお考えでしたら、廃番になったときのことも考慮しましょう。
「F☆☆☆☆」の壁紙を利用する
2003年7月から「シックハウス対策」が義務づけられていることはご存じでしょう。クロルピリホスとホルムアルデヒドが対象になっていて、前者は使用禁止、後者は使用量を規制されています。
その結果、賃貸アパートで「ホルムアルデヒド等の有害物質によりアレルギーやシックハウス症候群になった」として、損害賠償を求められた事例が発生しています。
ホルムアルデヒドは、ノリの防腐剤や接着剤の原料に用いられています。ですから、壁紙もホルムアルデヒドを発散する可能性があり、賃貸住宅の壁紙選びでは細心の注意が必要です。
参考:東京都保健医療局「ホルムアルデヒドとはどんな物質ですか」
建材は、発散するホルムアルデヒドの量によって以下のようにランク付けされています。
表示記号 | 材料区分 | 使用制限 |
---|---|---|
F☆☆☆☆ | 法規制対象外 | 制限なし |
F☆☆☆ | 第3種ホルムアルデヒド発散建築材料 | 使用面積が制限される |
F☆☆ | 第2種ホルムアルデヒド発散建築材料 | 使用面積が制限される |
表示なし | 第1種ホルムアルデヒド発散建築材料 | 使用禁止 |
発散レベルはJISやJAS、または国土交通大臣認定によりランク付けされています。星の数でランクを表わし、星の数が増えるほど発散量は少なくなります。
現状の最高等級は「F☆☆☆☆ (フォースター)」です。「F☆☆☆☆」の壁紙なら、建築基準法の規制を受けずに使用できます。
一方「F☆☆☆」や「F☆☆」、および未表示品は、居室の種類および換気回数に応じて使用できる面積が制限されます。
たとえば、住宅の居室で換気回数が「0.5回/h」以上「0.7回/h」未満の場合、使用可能な面積は以下のようになります。
- F☆☆☆:床面積の2倍まで
- F☆☆:床面積の0.35倍まで
- 未表示品:使用禁止
入居者に快適に過ごしてもらい、訴訟リスクを下げるには、「F☆☆☆☆」の壁紙を用いるべきでしょう。
トータルコーディネートを意識する
インテリアは、トータルコーディネートが大切です。全体の調和なくして、お部屋の印象はよくなりません。壁紙選びも、トータルコーディネートの視点が不可欠です。
壁紙は、ドアや床材、照明器具など、部屋の構成部材すべての印象に大きな影響をおよぼします。昨今はやりのナチュラルテイストの建材を用いている場合は、壁紙もそれに寄せるほうがよいでしょう。
お部屋全体がすっきりと調和すると、居心地のよい居住空間が実現します。壁紙選びだけに終始するのではなく、インテリア全体の調和を意識した選定をおこないましょう。
とは言え、コーディネートには一定のセンスや知識が要るでしょう。もしも自信がないようでしたら、コーディネーターを入れるか、スタイル(様式)をまねるとよいでしょう。
いくつかのスタイルの壁紙の特徴をご紹介しましょう。
北欧モダンスタイル | 光を反射する「白」が好まれる。パステルやグレイッシュなど、天然木の明るい色とよく合う色彩も用いられる。 |
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ミッドセンチュリーモダン | レトロな雰囲気を醸し出すパステルカラーを取り入れる。ナチュラルで深みのある空間を目指す。 |
ブルックリンスタイル | 露出したレンガが特徴。壁紙も、レンガ調のものをアクセントに使うと雰囲気が出る。 |
モダン系のスタイルに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は、あわせてご覧ください。
》リノベーションに取り入れたいモダン系インテリアスタイル4選
ブルックリンスタイルに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
壁紙は、お部屋の印象を左右します。ですから、壁紙ひとつで、お問い合わせ数や成約までの時間が変わる場合があります。
「たかが壁紙」と思わず、ぜひ真剣に選んでみてください。
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