近年、日本の人口が減少しています。一方、外国人は増えていて「所有している賃貸物件でも外国人を受け入れようか」と検討されているオーナーさまや、管理会社さまが少なくないでしょう。
実際、外国人を受け入れることで空室率を改善した大家さんがたくさんおられます。そのような成功事例のあとに続くには、どこに注意して、どのように取り組んでいけばいいのでしょうか。
本稿では、外国人との賃貸契約におけるメリットやデメリットと、注意点をご紹介します。あなたも本稿を参考にして、外国人入居者の受け入れに向けて具体的に動き出してみませんか?
目次
外国人との賃貸契約が難しい理由
2020年国勢調査では、5年前(2015年)の調査と比べて日本人の人口が178.3万人も減少しました (1.4%減)。一方、外国人の人口は83.5万人ほど増加しています (43.6%増)。
このようなご時世ですから、今後の賃貸住宅市場では、日本人だけでなく外国人も受け入れる大家さんが増えてくるでしょう。これからは、外国人が有望なお客さまになってくれそうです。
あなたは、どうですか?「外国人の受け入れは、ちょっとなあ……」と不安を感じ、一歩を踏み出せずにいますか?
そんな方はまず、具体的にどのようなデメリットがあるのか把握してみてはいかがでしょうか。それが分かれば、対策することで不安を解消できるかもしれませんよ。
デメリットを3つご紹介しましょう。
デメリット1:意思の疎通が難しい
まず心配なのが、意思の疎通ではないでしょうか。外国人入居者が日本語を理解していない場合、以下の問題が発生します。
- 契約内容の説明が困難
- 日頃のコミュニケーションを取りづらい
- 入居中にトラブルが発生した場合、解決が難しい
- クレームを入れられても、何を求めているか分からない
「外国人入居者と連絡が取れなくなる」といったケースも珍しくありません。大家さんに何も言わず、母国に帰国をしてしまう人もいます。
そんなトラブルに遭わないためにも、入居審査で日本語のコミュニケーション能力や責任感を確認しておく必要があります。
デメリット2:連帯保証人の確保が難しい
外国人入居者は単身で日本に来ている方が多く、親族を連帯保証人とすることが難しいでしょう。ですから、誰か別の保証人を用意してもらわなければなりません。
とは言え、保証人は誰でもよいわけではありません。一定の資力や信用力を有することが求められます。外国人は、そのような保証人を探すことが難しいでしょう。
解決策としては、保証会社を利用するか、外国人入居者の勤務先の会社に連帯保証を依頼してもらうことが考えられます。
デメリット3:習慣・文化の違いからトラブルになりやすい
外国人は、ルールや日本の常識を知らない、あるいは守らないことも考えられます。
実際、ときどき外国人入居者による又貸しやシェアハウス化などの契約違反が発生しています。騒音やゴミ出しなどのマナー違反から、トラブルになることも少なくないでしょう。
その他、こんなケースもあります。
- 礼金や更新料といった慣習を知らない
- 賃料滞納問題の重大性を理解していない
- 滞納している家賃を払わないまま出国
このようなトラブルを防ぐには、契約時あるいは日常的に丁寧に説明して対応するのが上策です。
トラブルが起きてしまったときも、根気よくルールを理解してもらうように務めるとよいでしょう。良識的な人であれば、以後のトラブルがなくなります。
外国人入居者と賃貸契約する際の注意点
外国人入居者を受け入れる際の「デメリット」をご紹介しました。オーナーさまとしては、残念ながら、外国人というだけで「日本人より信用度が低く、リスクが高い」と判断せざるを得ないでしょう。
では、積極的に外国人に入居してもらいたい場合は、どこに注意すればそのリスクを回避できるのでしょうか? ―― 主要な注意点を3つご紹介します。
注意点1:家賃の滞納リスクを考慮する
外国人入居者に賃料を滞納された場合、日本人に滞納されるより回収が難しいでしょう。そのまま出国されたら、もはや回収することはかなわないかもしれません。
万が一、無断で帰国されてしまった場合、厄介なことに外国人入居者との賃貸借契約が生きたまま残ってしまいます。そうなると、安易に次の入居者の募集もできません。
このように問題が大きくなるのを防ぐには、火種が小さいうちから消しにかからねばなりません。外国人入居者であっても、日本人入居者の場合とやることは同じです。
たとえば、以下のような手続ですね。
- 賃貸借契約の解除および立ち退きを求める手続をおこなう
- 督促をおこない、かつ保証人に連絡することを通知する
- 内容証明郵便で「契約解除の予告通知」を送る
- 弁護士等に関与してもらったうえで明け渡し請求訴訟を検討
入居者審査も重要です。たとえば、外国人労働者を受け入れている法人との契約であれば、家賃滞納リスクは小さくなるでしょう。
入居者トラブルに関しては、以下の記事でも解説しています。ご興味がある方は、あわせてご覧ください。
注意点2:丁寧に契約内容や生活のルールを説明する
外国人と賃貸契約を交わす際、日本語の契約書のみを作成し「締結したから合意が成立している」と思い込むのは危険です。外国人が、内容を理解しないまま適当にサインすることも考えられます。
さて、契約とはどういう行為だったでしょうか?契約書とは、どういう役割を果たすものだったでしょうか?いま一度、振り返ってみましょう。
- 契約:当事者同士が承諾し合ったうえで合意すること
- 契約書:合意内容を書面化したもの
日本語の理解に乏しい外国人に対して日本語の契約書で対応することは、本来の契約や契約書の意義にかないません。何が書かれていようが、承諾・合意がないため、あとでトラブルになるでしょう。
外国人入居者とのトラブルを避けたいのであれば、かならず契約内容や日本のマナーを理解してもらう必要があります。そのために、なんらかの対策が必要です。
例をあげてみましょう。
- 日本語と外国人入居者が使う言語で、契約書を2通作成する
- 外国人入居者が使う言語や、図解等を用いた説明書を作成する
また、契約の際は簡単な日本語で、ゆっくりはっきり説明する必要があります。どうしても日本語での応対が難しい場合は、通訳してくれる友人や知人などの同伴を依頼するとよいでしょう。
外国人の中には、ルールに無頓着な方がいます。しかし、それは外国人に限ったことではなく、多くの外国人は多くの日本人と同様に「郷に入れば郷に従う」の精神を持ってくれています。
ですが、習慣の違いからルールを逸脱してトラブルになるケースがあるのです。そんなときも外国人に寄り添い、根気強くルールを説明することで、みんなが過ごしやすい環境になっていくでしょう。
参考:《大家さん、不動産事業者のための》外国人の受入れガイド
参考:外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン 実務対応Q&A
注意点3:外国人OKの保証会社を準備する
外国人は、連帯保証人の確保が難しいですよね。かといって、オーナーさまからすると「連帯保証人なしで貸すのは、リスクがある」と感じずにはいられません。
そんなときは、外国人に対応できる家賃債務保証会社(以下、保証会社)をご利用いただくとよいでしょう。滞納家賃等を立て替えてくれるだけでなく、以下のようなメリットがあります。
- 外国語に対応できるうえ、外国人の対応に慣れている
- 連帯保証人なしで外国人に部屋を貸すリスクが軽減される
- 入居希望者に支払い能力があるかどうか審査してくれる
- コミュニケーションのサポート等を受けられる場合もある
国土交通省が、外国人に対応できる保証会社を公表しています。オーナーさまや管理会社さまは、一度目を通しておかれるとよいでしょう。
参考:外国人の言語対応サポートを行っている登録家賃債務保証業者一覧
保証料は、保証会社によって異なります。一般的には、以下の価格帯の業者が多いでしょう。
保証契約の締結時 | 「1ヶ月の賃料の50~100%」の金額 |
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賃貸借契約の更新時 | 「10,000円/年」または「賃料の10~30%/年」の金額 |
また、保証会社の審査に頼り切るのではなく、入居審査の際にもリスクを確認しておくことが大切です。とくに、在留資格の有無のチェックは欠かせないでしょう。
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な法律上の資格のことで、ビザとは別のものです。外国人でも、在留資格に応じた期間内なら、日本で継続的に生活できます。
参考:外務省 査証(ビザ)と「在留資格」
参考:出入国在留管理庁 在留資格一覧表
他には、日本語のコミュニケーション能力の程度も確認しておきたいところです。
外国人と賃貸契約するメリット
最後に、外国人と賃貸契約するメリットをふたつご紹介します。
メリット1:競合との差別化につながる
外国人入居者の受け入れに対して、不安を覚えるオーナーさまが多いでしょう。実際「外国人はお断り」というスタンスの物件が少なくありません。
これを逆手に取ると、外国人を受け入れるだけで競合他社との差別化や空室対策になるということです。また、長期間の入居にもつながりやすく、安定した賃料確保を実現できるでしょう。
他にも、こんなメリットが考えられます。
- 仲介業者に「外国人可」として認知され、新たな成約につながりやすくなる
- 入居した外国人の口コミから、新たな入居者の獲得につながりやすくなる
外国人の賃貸住宅需要は、年々増える傾向にあります。この状況を見送るか、チャンスと捉えるか ―― それはあなたの経営戦略であり、自由です。
しかし、ここでアメリカのマーケティング界の導師と呼ばれるセオドア・レビットの論文『マーケティング近視眼』を思い出さずにはいられません。
論文に登場するアメリカの「鉄道会社」や「映画業界」と同じ轍(てつ)を踏まないようにしたいものです。彼らは、自分の役割を狭くしすぎて衰退を招いてしまいました。
あなたの仕事は「日本人に部屋を貸すこと」でしょうか?それとも「賃貸業」でしょうか?いま一度、問い直したいですね。
外国人入居者を受け入れるためには、いくつかの困難を乗り越える必要があるでしょう。たとえば、専用の契約書や生活ルールブック、保証会社の準備をしないといけないかもしれません。
しかし、一度整備してしまえば、それらはずっと活用できます。空室にお悩みでしたら、外国人の受け入れ環境の整備から取り組んでみてはいかがでしょうか。
メリット2:条件がよくない物件でも借りてもらえる
先述のとおり、賃貸住宅業界はまだまだ「外国人不可」の物件が多い状況です。ですから、所有する物件が一般的な「好条件」に当てはまらない場合でも、外国人に借りてもらえます。
たとえば、周辺の物件が外国人を受け入れていないのなら、以下のような条件でも契約に至りやすいでしょう。
- 築年数が古い
- 賃料が相場より高い
- 立地等の条件が悪い
- お風呂が3点ユニット
外国人から内装や設備のグレードを求められるケースは、あまり多くはありません。お部屋に清潔感があれば、入居してくれる外国人がたくさんいます。
また、工夫しだい外国人入居希望者の増加が見込めます。たとえば、身ひとつで日本に来ている外国人にとって、無料インターネットや家具・家電付きの物件は魅力的に映るでしょう。
外国人は、日本国内で国籍ごとの強固なネットワークを持っているケースが少なくありません。ですから、居住していた外国人が退去する際、次の居住者を紹介してくれることもあります。
参考:外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン 外国人の民間賃貸住宅への入居について
外国人入居者と賃貸契約を交わすことは、日本人と契約するよりリスクがあるでしょう。しかし、さまざまな問題も、適切な対策と準備をおこなえば乗り越えられます。
実際、外国人を受け入れることで競合との差別化を図ったり、物件の空室率を改善したりされているオーナーさまがおられます。ぜひ、あなたも挑戦してみてください。可能性が広がりますよ。
空室対策については、以下の記事も参考にしてみてください。
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