賃貸経営で起こる「入居者トラブル」の対処方法と予防対策

本稿では、賃貸住宅でよくある入居者トラブルの対処方法や予防対策をご紹介します。

賃貸経営をつづけていく以上、トラブルに遭うことは避けられません。しかし、日頃の運営姿勢や心がけしだいで、苦情や不満を減らすことができます。

入居者からの苦情や不満が減れば、賃貸経営は格段にラクになります。まずは、よくある「家賃延滞・騒音・故障や老朽化」によるトラブルから、対処方法と対策を見直してみませんか?

目次

家賃延滞トラブルの対処方法と予防対策

家賃延滞トラブルの対処方法と予防対策

入居者の家賃延滞は、大家さんや管理会社にとって常に悩みの種でしょう。

家賃収入が得られないということは、空室と同じ状態です。いや、空室のほうがまだマシでしょう。新しい入居者が決まれば、再び家賃収入を得られるのですから。

いっぽう悪質な延滞は、いつになったら支払ってもらえるのか目処が立ちません。督促に応じない場合は、訴訟になることも考えられます。夜逃げされるケースもあるでしょう。

さて、家賃延滞があったとき、できるだけ穏便に済ませるにはどのように対処すればいいのでしょうか。

家賃延滞トラブルの対処方法

大切なのは初動です。支払期日に未納があったら、なんらかの対処を即おこなわねばなりません。延滞を放置すると、入居者に「大家さんは延滞に関心がない」という誤った印象を持たれ、延滞に対する罪悪感を薄れさせる結果になります。

初動としては、口頭や書面で丁寧に催促するのが一般的でしょう。入居者の「ウッカリ忘れ」であれば、これで支払ってもらえます。催促しても支払われない場合は、督促をおこなったり敷金等を滞納家賃に充当したりすることになります。

ちなみに、敷金を滞納家賃に充当すると、入居者の担保能力が下がります。ですから、賃貸人(大家さん)が充当することは可能ですが、賃借人(入居者)が「敷金から充当してくれ」と主張することはできません (大判昭和5年3月10日)。

参考:敷金問題「敷金の意義」

督促に関しては、対処時期を個別に判断する必要があります。これまでの家賃の支払実績や滞納に至った経緯などを考慮して文章や語調を調整したうえで、書面で連絡します。期日までに入金がない場合は保証人に連絡することも、記載しておくとよいでしょう。

督促の期日にも入金してくれないようであれば、次の打ち手は以下が考えられます。

  • 裁判所から支払督促を送ってもらう
  • 契約解除にむけて準備をする

契約解除を目指すのであれば、内容証明郵便で「契約解除の予告通知」を送ります。ここまでは、大家さんや管理会社でも対応可能です。

ここから先は法的な措置へと移りますので、法律の専門家に相談するほうが適切でしょう。支払督促や契約解除の催告後も入金がないようであれば、弁護士等に関与してもらったうえで明け渡し請求訴訟を検討します。

ここまでをまとめると、以下のようになります。

  1. 家賃延滞が発生したら、迅速かつ丁寧に催促する
  2. 督促をおこない、かつ保証人に連絡することを通知する
  3. 裁判所から支払督促を送る、または契約解除の予告通知書を送る
  4. 弁護士等に相談して、明け渡し請求訴訟を検討する

滞納トラブルを大きくしないためには、このように段階を踏んで解決を図ることが大切です。

家賃延滞トラブルの予防対策

滞納者をできるだけ出さないようにするには、入居審査の厳格化が有効です。継続して安定した収入があるか、公序良俗を守れる人物でありそうか、シッカリ確認したうえで看過しがたい不安があれば入居を断るほうが無難です。

入居者だけでなく連帯保証人のチェックもお忘れなく。連帯保証人の代わりに、家賃保証会社と契約しておくのもひとつの方法です。なお、国交省主催の「家賃債務保証業者会議」によると、家賃保証会社の利用割合は8割を占めるようです。

参考:家賃債務保証事業者が情報を共有/国交省

つづいて、騒音について対処方法や予防対策を考えてみましょう。

騒音トラブルの対処方法と予防対策

騒音トラブルの対処方法と予防対策

アパートやマンション等の共同住宅でもっとも多い住民トラブルは「騒音」ではないでしょうか。

たとえば、インターネットのマンション系掲示板で「騒音」と検索すると、賃貸・分譲・構造の違いを問わず、全国至るところでトラブルが起きているのがわかります。代表的な原因をいくつかピックアップしてみましょう。

  • 子どもが走り回る音
  • 友人を連れ込んで夜遅くまで騒ぐ
  • 改造自動車やバイクのエンジン音
  • ペット禁止物件でペットの鳴き声

騒音トラブルでは発生源の入居者に随時注意をおこなうことになりますが、すんなり従ってくれるとは限りません。別の住戸の入居者が騒音元に直接クレームを入れたり警察を呼んだりして、問題が大きくなるケースもあるでしょう。

騒音に不満をつのらせた入居者が、次々と退去を申し出る事態は避けたいところです。では、騒音に対しどのような対処をおこなうのがよいのでしょうか。

騒音トラブルの対処方法

騒音トラブルに対しては、以下の段階を踏んで真摯に対応する姿勢が大切です。

  1. 現状確認(苦情を寄せた入居者に詳細を確認)
  2. 騒音トラブルが起きていることを入居者全員に周知
  3. 近隣入居者に対して事実確認をおこなう
  4. 騒音元の入居者に改善をお願いする
  5. 苦情を寄せた入居者に結果報告

まずは、騒音を訴えている入居者から丁寧に詳細を聞きます。このときの姿勢しだいで、その入居者がいったん溜飲を下げてくれるかどうか決まると言っていいでしょう。

その後、苦情元や騒音元が特定されないように注意しながら、騒音トラブルが起きていることを入居者全員に周知します。注意喚起文を掲示板に貼るか、ポストに投函するとよいでしょう。

周知後も騒音が止まらないようであれば、近隣の入居者にヒアリング調査をおこない、騒音元や原因を特定したうえで改善を依頼します。ここまでの進捗や結果は、苦情元にときどき報告しておいたほうが信頼の醸成につながります。

騒音トラブルの予防対策

騒音トラブルは、集合住宅につきものです。起こることを前提に契約書の内容を整備しておくとよいでしょう。入居者どうしのいさかいを防ぐために目安箱を設置したり、禁止事項同意書を作成して入居希望者にサインしてもらったりするのも有効です。

ファミリータイプのマンションは、あらかじめ既存の入居者に心構えを伝えておくと反応が和らぎます。子どもが出す音に寛容でいて欲しいこと、我慢できないときは遠慮なく申し出て欲しいことを伝えておくとよいでしょう。

なお、騒音については建物が原因になっているケースもあります。床下や住戸を区切る界壁内に空間があると、まるで太鼓のような状態になり、音を増幅させるのです。

この太鼓現象が起こっている場合は、なんらかの防音対策が必要です。例をあげてみましょう。

  • 躯体と内装下地を絶縁
  • 内装下地の制震
  • 空洞部に吸音材を充填
  • 石膏ボード二重張り
  • 防音性が高い床材を使う

共同住宅の騒音は、躯体や配管等を伝わって広がります。この特性から発生源の特定が難しく、斜め上の住戸の音が真上から聞こえたように感じることもあるほどです。

防音性能が高いと思われている鉄筋コンクリート(RC)造でも、油断は禁物です。石膏ボードをGL工法で張っている場合は、太鼓現象が起こり、隣戸の音が増幅されて伝わりやすいと言われています。

太鼓現象が疑われるようであれば、住宅の専門家に相談してみましょう。

設備機器の故障や建物老朽化トラブルの対処方法と予防対策

設備機器の故障や建物老朽化トラブルの対処方法と予防対策

設備や機器が故障すると、入居者は本来できたはずの生活ができなくなります。まんがいち修繕や代替品の手配が遅れると、不満がつのり苦情やトラブルに発展します。

それだけではありません。民法611条が改正されたことで、設備や機器が故障して一定期間使えなくなった場合「入居者から家賃減額請求がなくとも、家賃は減額するのが当然」となりました。

以下のような状態になると、賃料の減額が必要になると考えたほうがよいでしょう。

  • ガス:お湯が出ない、コンロが点火しない
  • 電気:エアコンがつかない、建物の瑕疵(かし)による停電が復旧しない
  • 水道:トイレが流れない、浴室やキッチンがスムーズに排水できない

建物の老朽化やメンテナンス不良によるトラブルにも、注意したいところです。雨漏りやシロアリによる食害、配管からの水漏れは、建物の寿命を縮めてしまいます。

設備機器の故障や建物老朽化トラブルの対処方法

上述のトラブルが発生した際、入居者が自分で修理業者を呼んでしまうことがあります。これを避けるために、設備や機器の不良を発見した際の連絡先を入居者に知らせておくとよいでしょう。

不良発見時の連絡先が周知徹底できたら、トラブルが発生した際のフローは以下のようになります。

  1. 入居者が管理会社に不具合を通知して修繕を要求
  2. 現場にて状況を確認して、修繕業者を手配
  3. 修繕完了までに必要な期間の目安を入居者に伝える
  4. 代替品や代替手段の提供が可能であれば手配する
  5. 状況に応じて必要な修繕・原状回復を実施

民法611条の改正以降、入居者からの不具合の通知やそれを受けての修繕、および賃料減額がスムーズにおこなえる体制が欠かせなくなりました。

同時に、これまで以上に迅速な不具合の解消が求められます。不具合は真夜中に発生することもあり得ますので、24時間対応サービスと提携しておくことも検討に値するでしょう。

とは言え、24時間対応サービスは緊急時に出動する「救急隊」のようなもの。日常的に頼れる「かかりつけ医」も必要です。信頼できる施工店とコネクションを持っておくことをおすすめします。

設備機器の故障や建物老朽化トラブルの予防対策

機器や設備の不良は、ある日突然発生するイメージを持たれていると思います。しかし、空き部屋が出た機会に点検を実施しておくと、劣化状況からある程度は不具合の発生時期を予想できます。

予想できれば、計画的に交換することも可能になります。とくに建物の老朽化は、大事になる前に補修することで以下のメリットが得られます。

  1. 大規模改修に至る頻度を下げられる
  2. トラブルが生じてから慌てて手配しなくて済む
  3. 余裕をもって設備や建材を選び、納得の更新ができる
  4. 結果的に維持管理のコストが下がる
  5. 建物の美観が保たれ、内見数や成約数が向上する

では、このような日常点検を気軽にできる環境をつくるにはどうすればいいのでしょうか。

まず、気になることがあれば直ぐに相談してアドバイスを求められる住宅の専門家とコネクションを持っておく必要があります。些細な原状回復から大規模改修まで対応可能で、不要な工事を勧めない業者とお付きあいするのがよいでしょう。

ただし、1社では不安です。1社だけでは、急を要するときにその1社の手がふさがっていると、迅速な対応ができなくなります。そのような事態を予防するため、複数の施工業者とお付きあいください。

賃貸経営で起こる「入居者トラブル」の対処はスピード勝負

「割れ窓理論」をご存知でしょうか。環境犯罪学の一説で、軽微な犯罪を徹底的に取り締まると凶悪犯罪の抑止につながる、とする理論です。これを応用しているのが、東京ディズニーランドです。

かの夢の国は、園内の些細なキズや汚れを見逃しません。発見したら、迅速に補修します。その結果、ゲストのマナーレベルが高く保たれているのです。

これは、賃貸管理にも応用可能でしょう。些細なトラブルの芽を見逃さず、迅速な初動をおこなうことで、入居者の公序良俗意識を高く保つことができます。

弊社REPAIR(リペア)は、地域密着のスピード対応で工事をおこなっています。原状回復から大規模リフォームまで対応しておりますので、お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。