昨今、空き家に対する風当たりが強くなっています。最近でも「放置された空き家は税優遇解除」「国土交通省は空家対策特別措置法を改正する方針」とニュースになりました。
利用していない空き家や、突然相続することになった空き家の所有者さまは「さて、どうしたものか」と悩まれていることでしょう。なにか、よい活用方法はないものでしょうか。
本稿では、空き家のユニークな活用事例や、利用方法をご紹介します。空き家の使い道を探しておられる方は、ぜひ最後までご覧ください。参考になれば、幸いです。
目次
空き家を有効活用したユニークな事例3選
さっそく、空き家を有効活用した全国のユニークな事例を3つご紹介します。
1:古民家を改修して会員制民宿に
最初にご紹介するのは、茨城県常陸太田市(ひたちおおたし)にある古民家を改修して会員制民宿(貸し別荘型の農家民宿)にした事例です。
この民宿では、基本的に食事提供をおこなわないスタイルを取っています (希望があれば提供)。ただし、周辺環境を利用したアクティビティを多数用意しています。例をあげてみましょう。
- いろりで川魚の塩焼き
- 杵と臼で餅つき
- 蕎麦打ち体験
- わら細工体験
- 竹を使った炭づくり
- 竹のお箸・うつわ制作
民泊はよくある活用方法ですが、この民家のポイントは会員制にしているところです。そうすることで利用者が特定できますので、一般的な民泊より、周辺住民から理解を得られやすくなります。
会員制ならリピーターが多くなりますので、地元住民との交流も促進されます。何度も利用しているうちに親近感を持ってもらえたら、移住につながる可能性もあるでしょう。
2:築120年の旧醤油屋を海外在住の実業家に売却
次にご紹介するのは、岡山県瀬戸内市邑久町(おくちょう)にある築120年の木造2階建てを売却した事例です。かつて醤油屋を営んでいた物件で、蔵がふたつあるユニークな物件です。
駅やインターチェンジが近く、交通の便は良好。ただし、60年ほど空き家になっていたので、損傷が激しく、活用するのが難しい状況だったようです。
しかし、海外在住の実業家夫婦が、ご子息に事業を任せた機会に購入して移住されました。多額の改修費用がかかったそうですが、買主はリノベーションを楽しまれました。
一見、古家付きで売却するのが難しそうな物件であっても、ユニークな特徴があれば購入希望者が出てくるものです。中古物件はたった1人でも心に響けば売れる、という好例ですね。
3:戸建住宅をお試し移住シェアハウスに
最後にご紹介するのは、岐阜県大野郡白川村の木造平屋建てを移住検討者用のシェアハウスにした事例です。自治体が10年間借り上げ、公募型ワークショップでリノベーションしています。
施設の間取り決めから施工まで、述べ200人以上の方が改修に参加されたそうです。居住者だけでなく、改修参加者とも深い関係性を育んだ興味深い事例ですね。
移住検討者は、シェアハウスにて短期間暮らすことで、あらかじめ地域の風土や生活習慣を理解できます。気に入ってから本格的に移住できますので、暮らし始めてから後悔せずに済みます。
岐阜県は、このような「お試し居住」ができる施策を積極的におこなっています。他の地域でも、移住者を増やすために空き家を活用しようとしているケースがあります。
ですから、空き家の活用を検討する前に、地域の取り組みを確認しておくとよいでしょう。うまく地域のニーズとかみ合えば、空き家を地域のために活用できます。
空き家の利用方法やアイデア3選
つづいて、ポピュラーな空き家の活用・利用方法を3つご紹介します。
1:ビジネスに利用する
空き家の活用を検討されるとき、最初に考えるのが「誰かに貸せないかな?」ではないでしょうか。まずは、ビジネス用途で使う方法を5つご紹介しましょう。
一戸建て賃貸
空き家をリノベーションして、一戸建て賃貸の大家に挑戦してみるのはいかがでしょうか。一戸建て賃貸は、一棟アパートや区分所有マンションと比較すると、以下のような特徴があります。
- 利回りが比較的高い
- 入居期間が長くなる傾向がある
- 管理の自由度が高い
一戸建ては、プライベートな部屋を確保しやすいですので、大家族に人気です。コロナ禍でテレワークが推奨されたこともあり、ワークスペースが欲しい方にも注目されています。
敷地内に駐車場があることや、マンションのように騒音トラブルに巻き込まれにくいところも、子育て世代にウケています。ファミリーが多い地域なら、賃貸を検討されてみてはいかがでしょうか。
民泊
民泊も、有力な選択肢のひとつになるでしょう。空き家を宿泊施設に転用する場合、以下の3つの方法があります。
- 簡易宿所
- 特区民泊
- 新法民泊
上述のうち、新法民泊が最も開業のハードルが低く、現実的な選択肢になるでしょう。ただし、新法民泊は年間提供日数が180日以内に制限されます。
ですから、収益を伸ばしていきたい方は、マンスリーマンション等の賃貸借契約を組み合わせる必要があります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
カフェ
カフェは、比較的開業のハードルが低い業態です。民泊と比較すると開業に必要な許認可や手続きが少なく、手軽に始められます。物件の古さや間取りを活かすこともできるでしょう。
小売に比べて生き残りやすい点も、魅力的です。小売店はうまく差別化しないと大型店に負けますが、気軽に軽食が取れて時間をつぶせるカフェは、小規模店舗でも生き残りやすいでしょう。
カフェなら、やりたい人に貸すだけでなく、自分で開業することもできます。ただし、ハードルが低いゆえに競合が増えやすいです。地域に溶け込みながら、特化が必要になる場合もあります。
シェアハウス
シェアハウスは、複数の他人が共同で住むことを想定した賃貸住宅です。風呂・トイレ・キッチンなどの共用スペースは、入居者同士で共用します。
入居者は、主に20~30代の単身若年層です。この属性の方々は、住居費が割安で同年代と交流できるシェアハウスを好む人が珍しくありません。
ひとつの物件を1世帯に貸し出す場合と比較すると、シェアハウスには以下のメリットがあります。ですから、一戸建て空き家の活用方法として、たくさんの所有者から注目されています。
- 収益性が高い
- 空室リスクを軽減できる
一方、入居者同士のトラブルが起きやすい点は注意が必要です。「持ち物を盗まれた」「食材を勝手に食べられた」「電話の声がうるさい」といったクレームが起こりにくくなるように対応が必要です。
シェアオフィス
シェアオフィスも、人気です。コロナ禍でテレワークが普及しましたが、自宅では落ち着いて仕事ができない人も少なくありません。そんな方々に重宝されています。
個人事業主やフリーランス、副業をされる方の増加もシェアオフィス需要を後押ししています。シェアオフィスなら、同じような立場の人たちと交流があり、生の情報を共有できます。
会員制にする場合、不特定多数の人が出入りしますので、近隣住民の理解を得られるかどうかがポイントになります。空き部屋を分割して貸し出しする方法も、あわせて検討するとよいでしょう。
2:自分で住む
空き家に自分で住むのも、ひとつの活用方法でしょう。完全に移住してしまうのもいいですが、セカンドハウスにする選択肢もあります。
セカンドハウスとして利用する場合は、空いている期間を民泊にできるでしょう。完全に移住してしまう場合は、以下のパターンが考えられます。
- 現在住んでいる賃貸を解約して、移住
- 現在住んでいる持ち家を売却して、移住
- 移住して、現在住んでいる持ち家は貸す
いずれにしても、空き家はリフォームやクリーニングサービスが必要になるでしょう。依頼する業者は、アフターサービスを考慮すると、空き家の近隣で探すほうが安心です。
3:売却する
所有する空き家に移住する可能性がなく、ビジネスにも利用しないのであれば、放置するより売却するほうがよいかもしれません。今後、放置状態の空き家は風当たりが強くなっていく見込です。
売却を決断されたら、リフォームするかどうかご検討ください。リフォームすると、早く高く売れる可能性がアップします。
一方、リフォームすれば費用がかかります。しかし、かけた費用分だけ高く売れるとは限りません。施工管理も必要になりますので「面倒くさい」と感じる方もおられることでしょう。
中には「安く買って、自分でリフォームしたい」と考えている買主もいますので、売却する空き家のリフォームは慎重にご検討ください。リフォームについては、こちらの記事でも解説しています。
空き家活用のメリット・デメリット・注意点
つづいて、空き家を活用するメリットやデメリット、注意点をご紹介します。
空き家活用のメリット
空き家を放置すると、以下のリスクが高まります。これを回避できるのが、空き家活用の最たるメリットでしょう。
- 劣化の促進
- 雑草の繁茂
- 害虫が発生
- 犯罪に利用される
建物や設備は、継続的に人が利用することが劣化対策になります。雑草や害虫、犯罪利用も防げるでしょう。
また、ビジネスに活用すれば、収入が入ってきます。将来、自己居住用として活用することも可能です。
空き家活用のデメリット
空き家を活用すると、利用方法に応じてリフォーム等の初期費用や、管理や清掃などのランニングコストがかかります。これらの費用は、空き家活用のデメリットと言えるでしょう。
とくに、不動産価値やビジネス価値があまりない物件はコストが利得を上回りやすく、注意が必要です。物件によっては、売却してお金に換えるほうが得策かもしれません。
空き家活用の注意点
今後は、人口やファミリー世帯が減少していきます。相続物件を中心に、空き家も増えていきます。再販価値の「ある」物件と「ない」物件の二極化は、避けられないでしょう。
このような状況ですから、空き家を長期間所有していると買い手がなくなる可能性もあります。安価な3Dプリンター住宅が普及して既存住宅の価格が大きく値崩れする可能性も、ないとは言えません。
空き家を活用される場合は、最初から収益性や出口戦略を想定しておくほうが安心です。やみくもに見切り発車してイグジットのタイミングを逃さないように、気をつけたいですね。
空き家を活用したいときに使える補助金制度
空き家に関する補助金は、主に以下の3つの制度があります。
- 解体工事・撤去処分にかかる費用に対して交付される補助金制度
- リフォームにかかる費用に対して交付される補助金制度
- 購入費用・取得費用に対して交付される補助金制度
空き家に関する補助金制度は、自治体によって異なります。自治体の担当窓口や、解体業者・リフォーム業者・不動産会社などの担当者にご確認ください。
リフォームについては、以下のサイトで補助金制度を検索できます。ご活用ください。
参考:地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
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