ホームインスペクション(既存住宅状況調査)の費用相場

2018年の宅地建物取引業法改正により、ホームインスペクションが注目されるようになりました。しかし、もう何年もたちますが、まだまだ一般の方にとっては不明点が多いサービスです。

費用面では「相場はどれくらいなの?」とか「だれが払うの?」といったご不安をよく耳にします。宅建業者は、中古不動産売買の際に売主や買主から費用対効果を聞かれることもあるでしょう。

本稿では、ホームインスペクションの費用相場や、その効果をご紹介します。不動産の売却や購入に役立てたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

ホームインスペクションの費用

ホームインスペクションの費用

さっそく、ホームインスペクションの費用相場や使える補助金、費用負担者について解説していきます。

費用相場

本稿では、宅建業法で告知対象となっているホームインスペクション(既存住宅状況調査)について、費用相場をご紹介します。それとは別に、オプションとなりやすい項目や付帯費用等もご紹介します。

既存住宅状況調査(一次調査)料

ベーシックなホームインスペクション(既存住宅状況調査)の費用相場は、以下のとおりです。

  • 木造一戸建て(30坪程度):5~8万円
  • マンション(70m²程度):4~7万円

ホームインスペクションは、マンションよりも一戸建てのほうが高額になる傾向があります。なぜなら、一戸建ては外壁・床下・小屋裏など、マンションより検査箇所が多いからです。

調査項目に関しては規定(後述)がありますので、どこに依頼しても極端な違いはないでしょう。ただし、調査方法や費用は調査会社によって違いがありますので、比較検討すべきです。

なお、既存住宅状況調査は一次的な調査であり、主に目視・非破壊でおこなわれます。機器や住居の部分破壊が必要な場合は、別途二次的な精密調査(後述)が必要になります。

ちなみに、以下のようなパターンでホームインスペクションが無償になるケースもあります。

  • リフォーム会社が無償で提供しているケース ⇒「調査+リフォーム」で調査費無料
  • 不動産仲介会社が無償で提供しているケース ⇒「調査+仲介」で調査費無料

このような無償のホームインスペクションサービスは、集客目的でおこなわれている場合が多いでしょう。しかし、必ずしも奏功していないようです。

そのような結果になっているのは、ホームインスペクションの認知度が低く、売主や買主がメリットやお得度を想像しづらいからでしょう。

しかし、利用者の満足度は高く、売買の円滑化に有用です。売却に手こずっている物件は、競合との差別化を図るうえでも効果的ですので、実施をご検討いただくとよいでしょう。

オプション料金

既存住宅状況調査は「国土交通省告示第82条」の調査方法基準にもとづいて調査されます。この基準にない調査は、オプションにしている調査会社が多いでしょう。

主なオプション調査をご紹介します。

  • 床下の侵入調査
  • 小屋裏の侵入調査
  • 機材を用いた検査

床下や小屋裏(屋根裏)の調査は、点検口からの目視になります。侵入する場合は別途費用がかかりますが、物理的に侵入できない物件もありますので、基本調査から外してあるほうが合理的でしょう。

調査方法基準に規定されていない機材(ドローンやサーモカメラなど)を使った調査も、オプションにしている調査会社が多いでしょう。侵入調査も機材調査も「1~3万円程度/1調査」かかります。

その他、不足図面の作成費用や遠方への出張料等がかかるケースもあります。

既存住宅瑕疵担保責任保険の加入料

既存住宅状況調査に合格すると、引き渡し前であれば既存住宅瑕疵担保責任保険に加入できます。加入を希望される場合は、保険料と保険法人の検査料がかかります。

保険料は「保険期間・保険金額・床面積」によって変わり、おおよそ「2~10万円程度」です。万が一、既存住宅状況調査の基準を満たさなかった場合は、該当箇所の補修費用と再調査料がかかります。

精密調査(二次調査)料

一次調査で問題が見つかった場合は、必要に応じて精密調査(二次調査)をおこないます。精密調査では、場合によっては住宅の一部を破壊しますので、その復旧費用がかかります。

問題や欠陥の原因調査費用および補修工事費用の額は、状況により大きく変わります。大がかりな工事が必要になりそうな場合は、複数の施工店から見積もりを取って比較検討したほうがよいでしょう。

補助金制度

空き家を対象としたホームインスペクションは、補助金制度を活用できる場合があります。自治体のホームページ等でご確認ください。

たとえば、直近ですと以下の補助金制度がありました。

  • あんしん空き家流通促進事業を活用した住宅診断
  • 空き家バンクに登録する(または登録済み)空き家への住宅診断

物件所在地の自治体の補助金制度については、以下のサイトでも調べられます。

参考:地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト

なお、補助金制度には期限と予算があります。いつでも利用できるわけではありませんので、ご留意ください。

だれが費用を負担するのか

ホームインスペクションは、売主と買主のどちらが負担すべきなのでしょうか。

じつは、明確には決められていません。一般的には「受益者負担」になりますが、ホームインスペクションは売主と買主の双方に利益があります。よって、実施者が負担するケースが多いでしょう。

  • 売主が実施すれば、売主負担
  • 買主が実施すれば、買主負担

ただし、引き渡し前に買主がおこなう場合は、売主の承諾が必要です。

なお、調査費用の支払いタイミングは、各調査会社が決めています。一般的には後払いが多く、調査完了後の指定の期日までに指定の方法で入金します。

ホームインスペクションの効果

ホームインスペクションの効果

ホームインスペクションを実施することで、売主や買主にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。売主と買主、それぞれの便益をご紹介しましょう。

売主は契約不適合責任の回避に役立つ

2020年の民法改正により、売主は契約不適合責任を負うことになりました。

万が一、引き渡した土地や建物に契約内容に適合しない欠陥・不具合等があった場合、売主はその責任を負い買主から以下を要求される可能性があります。

  • 損害賠償
  • 契約解除
  • 追完請求(補修や代替品の引渡請求)
  • 代金減額請求

売主が取引に望むのは「トラブルなく、早く高く売る」ことでしょう。高額かつ早期に売却できたとしても、あとで買主から上述の請求をされるような取引はしたくないはずです。

そこで、ホームインスペクションが役に立ちます。専門家の調査によって物件の状況が明らかになりますので、契約書にその内容をきちんと書くことができ、契約不適合を指摘されにくくなります。

買主は安心して売買できる

物件の現状に関する知識は買主より売主が圧倒的に多く、買主は「なにか隠しているのでは?」と不安になります。この情報の非対称性を、ホームインスペクションで埋めることができます。

たとえば、買主の以下の疑問の答えは、ホームインスペクションで明らかになります。

  • 雨漏りしているのではないか?
  • シロアリの被害はないか?
  • 地震に弱いのではないか?
  • 設備がすぐに壊れるのではないか?

ホームインスペクションを活用することで、買主自らが発見できない問題を専門家に見つけてもらえます。問題が明らかになれば、改善を要求したり問題を織り込んだ適正価格で売買したりできます。

ですがら、ホームインスペクションを受けている住宅は、買主にとって「安心して売買できる物件」になるのです。

既存住宅売買瑕疵保険を付保できる

ホームインスペクション調査に合格し、その他の要件も満たすと、既存住宅売買瑕疵保険に加入できます。この保険は、以下の箇所が保証の対象になっています。

  • 構造耐力上主要な部分
  • 雨水の浸入を防止する部分

また、保険法人によっては、特約で給排水管やライフライン(電気・ガス・水道)関連設備の保証も付加できます。

なお、この保険は事業者(仲介会社や住宅診断の調査会社)が加入者となります。万が一、保証対象に不具合が見つかった場合は、補修費用等の保険金が事業者に支払われます (事業者が倒産等の場合は買主)。

既存住宅瑕疵担保責任保険を活用すると、税制優遇が受けられる可能性もあります。詳しくは、以下をご覧ください。

参考:住宅ローン控除
参考:登録免許税の軽減

ホームインスペクションの調査範囲

ホームインスペクションの調査範囲

既存住宅状況調査は「既存住宅状況調査方法基準」にもとづきおこなわれます。調査内容の例を調査方法基準からピックアップしておきますので、ご覧ください。

基礎ひび割れ、欠損、劣化、サビや白樺、鉄筋の露出など
土台および床組ひび割れ、劣化、欠損、蟻害、腐朽など
柱および梁ひび割れ、劣化、欠損、たわみ、傾斜など
小屋組ひび割れ、劣化、欠損、雨漏りの跡、腐朽など
外壁ひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落、金属部分のサビや腐食、シーリング材の破断や欠損、サッシ周囲の隙間や著しい開閉不良など
軒裏シーリング材の破断や欠損、雨漏りの跡など
屋根破損、浮き、はがれ、ずれ、ひび割れ、劣化、欠損、防水層のひび割れ、水切り金物の不具合など
バルコニー支持部や床のぐらつき、ひび割れ、劣化、防水層のひび割れ、水切り金物の不具合など
ひび割れ、劣化、欠損、沈み込み、傾斜など
内壁ひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落、傾斜、雨漏りの跡など
天井ひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落、雨漏りの跡など

なお、この調査がおこなえるのは「既存住宅状況調査技術者」だけです。既存住宅状況調査技術者は、国土交通省が指定する機関にて「既存住宅状況調査技術者講習」を修了した建築士がなれます。

「インスペクター」と呼ばれる住宅診断士の中には、既存住宅状況調査技術者の資格を持たない者もいますので、留意が必要です。

ホームインスペクションを実施する流れ

ホームインスペクションを実施する流れ

最後に、ホームインスペクションを実施する流れをご紹介しましょう。

  1. 問い合わせ・見積もり
  2. 申し込み・日程調整
  3. 必要書類の確認と送付
  4. 調査
  5. 調査報告書の受領
  6. 代金支払い

調査結果の概要は、調査中や調査直後に聞けます。詳細な報告書は、後日まとまりしだいPDFや郵送で受け取ります。

参考:国土交通省 既存住宅状況調査報告書の見本

なお、調査は一般的に以下の流れになることが多いでしょう。所要時間は調査数によって変わりますが、おおむね2~3時間ほどです。

  1. 調査の概要・流れを説明
  2. 建物外部の調査
  3. 建物内部の調査
  4. オプション調査(屋根裏・床下の侵入など)
  5. 調査結果の概要を説明

ホームインスペクション実施する際は、申し込みから報告書の受領までどのくらい期間が必要なのか、調査会社に確認しておきましょう。調査員が不足している地域では、時間がかかっているようです。

ぜひあなたも、物件を「トラブルなく、早く高く売る」ためにホームインスペクションをうまく活用されてみてはいかがでしょうか。なお、早期売却施策をご検討中の方には、以下の記事もおすすめです。

築古物件の早期売却に役立つ「付加価値上昇リフォーム」のすすめ

反響が少なくお困りの元付け不動産会社様に、ご提案

売却物件の反響がないとき、ホームインスペクションを実施することで好転することがあります。とは言え、売主様によっては「できるだけ費用をかけたくない」という方もおられることでしょう。

そんなときは、弊社のサービス「勝手にリノベ提案してみた」をご利用ください。無料で以下の資料をご提供いたします。

  • 提案図面
  • パース
  • 概算見積もり

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