入居者の早期退去は、原状回復費用や広告費、空室期間による家賃収入の損失など、オーナーにとって大きな経済的負担を生じます。できれば、避けたいですよね。
入居者の早期退去を防ぐには、その原因を理解して、適切な対策を講じることが重要です。とくに、住み始めてから「思っていたのと違う」と思われそうなところを減らすことが大切です。
本稿では、賃貸アパートの入居者がすぐに退去してしまう理由と、早期退去を防ぐための対策をご紹介します。入居者に長く住んでもらい、安定した賃貸経営を実現しましょう。
目次
賃貸アパートの入居者がすぐに退去してしまう理由6選
引っ越しには、コストや手間がかかります。ですから、通常は入居者が簡単に退去を決めることはないでしょう。
では、入居者は何が原因で早期退去を決断しているのでしょうか?
住んでみて、初めて問題に気づき、退去を決意するケース
住んでみて初めて気づく問題がいくつかあり、それが原因で退去を決める入居者がいます。
そのような問題によりストレスや不満が積み重なると、精神的な負担が大きくなって、退去を選択する可能性が高くなるのです。
問題となりやすい事例をあげてみましょう。
- 他の入居者・大家・管理会社とのトラブル
- 物件(建物や設備など)への不満
- 環境問題(騒音やニオイなど)
順番に、詳しく解説します。
▼他の入居者・大家・管理会社とのトラブル
入居者同士のトラブルは、早期退去の主要な原因のひとつです。とくに、以下のような問題に注意が必要です。
- 騒音問題
- ゴミの管理
騒音は、集合住宅でトラブルに発展しやすい問題の代表です。隣人や上階からの騒音が耐え難い場合、入居者はストレスを感じ、退去を決意するケースが少なくありません。
また、共用スペースにゴミを放置する住人や、ゴミ出しのルールを守らない住人がいると、不快な環境が生まれます。そのような環境に耐えられなくなり、退去する方もいます。
大家や管理会社との関係も、入居者が早期に退去してしまう原因になり得ます。たとえば、以下のことに注意が必要でしょう。
- 対応の遅れ
- トラブルの解決が不十分
問題を報告しても迅速に対応してもらえない場合、入居者は不満を募らせ、退去を考える場合があります。
また、トラブルを報告しても大家や管理会社が適切に対処してくれない場合、不満や不安を感じた入居者が早期退去を決断することもあります。
▼物件(建物や設備など)への不満
物件自体への不満も退去の大きな理由のひとつです。たとえば、建物や設備の老朽化があり、とりわけ古いアパートは注意が必要でしょう。
木造のアパートでは音漏れが問題になりやすく、プライバシーを重視する入居者にとって大きなストレスになる場合があります。
ゴミ置き場やエントランスの清掃が行き届いていない場合も、入居者が快適に生活できなくなるため、不満につながりやすいでしょう。
▼環境問題(騒音やニオイなど)
騒音やニオイの問題は、住んでみないと気づきにくいため、早期退去の原因になることが少なくありません。
たとえば、土日に内見した人が、平日に住んでみて学校や工場からの音に気づくことがあります。交通量の多い道路に面した物件では、住み始めてから夜眠れないことに気づく場合もあるでしょう。
ニオイの問題も、騒音と同じく、住み始めてから気づくケースがあります。たとえば、以下のようなケースが考えられるでしょう。
- 誰かがベランダでタバコを吸っている
- 排水口から異臭がする
- エアコンをつけると異臭がする
- ゴミの収集日に悪臭が発生する
- 近隣の工場から気になるニオイがする
これらの環境問題は、入居者の生活の質に直接影響を与えるため、対策できるものは積極的に対策を講じることが重要です。
入居者側の理由で退去を決意するケース
入居者側の理由で、退去を決意するケースもあります。そのようなケースは、退去を避けることが難しい場合が多いでしょう。
たとえば、以下のようなケースです。
- より好条件の物件を見つけた
- 家計の悪化、または好転
- ライフスタイルの変化
それぞれ、詳しく解説します。
▼より好条件の物件を見つけた
入居者の中には、賃貸契約を結んだあとでも、周囲の物件情報をチェックしている方がいます。その際、同じエリア内でより条件のよい物件が見つかると、引っ越しを選ぶ場合があります。
友人や知人から、同じ条件でより安い物件の話を聞くこともあるでしょう。そのような情報は、入居者が現在の住居に対して不満を感じる要因となり、早期退去につながることがあります。
周辺環境の変化も、早期退去の理由になります。たとえば商業施設の撤退が相次ぐなど、便利な場所だと思って住んだのに、それが変わってしまうと住み続ける理由が薄れてしまいます。
近年では、インターネットの普及により、よりよい条件の物件を見つけやすくなっています。退去を決めるハードルが低くなっていると言えるでしょう。
▼家計の悪化、または好転
家計が悪化したり、逆に家計が好転したりすると、それが引っ越しの理由になることもあります。
たとえば、転職や独立などで収入が減った場合は、家賃が高いと支払いが難しくなるでしょう。そういうケースでは、もっと安い物件に引っ越す方が少なくありません。
他にも、物価の上昇で生活費が増える、あるいは突然医療費や教育費がかかることになって家計が厳しくなるケースもあります。こういう場合も、家賃を抑えるために引っ越すことがあります。
反対に、昇進したり転職して給料が増えたりしたときも、「もっと広くて快適な物件に住みたい!」と考え引っ越す方がいます。
▼ライフスタイルや家族構成の変化
ライフスタイルの変化も、引っ越しの大きな理由になります。たとえば、転職や転勤で新しい職場に移ると、通勤時間を短くするために引っ越す方がいます。
学生の場合は、卒業して就職先に近い場所へ引っ越すことがよくあります。学生時代は大学の近くに住み、就職したら《職住近接》を求め、会社の近くに引っ越すのです。
結婚や子供の誕生なども、引っ越しを検討するきっかけになるでしょう。家族が増えるともっと広い部屋が必要になるため、今の住居が手狭に感じて引っ越す方が少なくありません。
昨今、ペットを飼うために「ペット可」の物件を求めて引っ越す方もいます。
早期退去を防ぐための対策
《入居者が早期退去を検討する理由》を6つご紹介しました。早期退去をできるだけなくすには、どうすればいいのでしょうか?
対策を3つご紹介します。
- 問題点の把握と3C分析をおこなう
- 物件の魅力を高める
- 早期に問題点を察知する
それぞれ、もう少し詳しくご紹介しましょう。
問題点の把握と3C分析をおこなう
まず実施すべきは、問題点の把握と3C(市場・競合・自社)分析です。
▼問題点の把握
最初に、入居者が退去する理由をしっかり把握することが大切です。理由がわかれば、それに対する対策を考えられます。
早期退去には、必ず何かしらの原因があります。それを放っておくと、同じ理由で他の入居者も退去してしまうかもしれません。ですから、問題点を早めに把握することが重要なのです。
▼3C(市場・競合・自社)分析
「3C分析」は、難しそうに聞こえますが、じつはシンプルな考え方です。《市場、競合、自社》の3つの視点から問題を分析して、改善策を考えていきます。
市場 | 入居者のニーズや動向を理解して、今どんな物件が求められているかを知る |
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競合 | 周りの競合物件の状況を理解して、どのように差別化を図るか考える |
自社 | 自社物件の分析を経て、強みをアピールし、弱みを改善する |
早期退去は、自社の問題だけでなく、市場動向や競合物件との比較などの複合的な理由で発生しています。ですから、3C分析をおこなうと、問題の本質を把握しやすくなるのです。
3C分析を活用すると、入居者のニーズを理解しながら、自分たちの物件をどう改善すればいいか、そして競合とどう差別化すればいいかが見えてくるでしょう。
3C分析については、以下の記事で詳しく解説しています。ご興味がある方は、あわせてご覧ください。
物件の魅力を高める
物件の魅力を高めることは、早期退去の効果的な予防策になります。
▼的確なメンテナンスを実施する
物件の魅力を高めるには、的確なメンテナンスをしっかりおこなうことが大切です。これが入居者の満足度を上げて、早期退去を防ぐ大きなポイントになります。
もし設備が壊れたまま放置されていたら、入居者はストレスを感じて退去を考えるかもしれません。一方、きちんとメンテナンスすれば、入居者は安心して住み続けられます。
また、共用部分が清潔で整備されている物件は、それだけで「この物件はしっかり管理されている」と思われるため、入居者にとって魅力的に見えます。信頼関係も深まるでしょう。
物件の魅力を高めることは、入居者の満足度向上だけではなく、オーナーや管理会社の評判にもつながります。
▼必要に応じてリフォームを実施する
リフォームは、物件の魅力をグッと高める効果的な方法です。たとえば古くなった設備や内装を新しくすると、入居者の満足度が上がって、長く住んでもらえる可能性が高くなるでしょう。
また、リフォームすることで、競合物件と比べて魅力的な条件を提供できるようになります。新しい入居者も見つけやすくなり、空室が長引くリスクも減らせるでしょう。
物件の外観や共用スペースをリフォームで改善すると、全体的な印象がよくなり、既存の入居者にも「ここに住み続けたい」と感じてもらえます。
▼家賃や更新料の見直し
運営コストを下げたり、付加価値の創造による差別化ができなかったりする場合は、《家賃や更新料の見直し》もひとつの選択肢になります。
周辺相場と比較して適正価格以下に設定すれば、お得感が出ます。住み心地より住居費を優先する入居者には、すごく魅力的に見えるでしょう。
しかし、家賃を下げるとオーナーの利益も減ってしまいます。利益が少なくなると、物件の維持や改善にかけられる資金も減ってしまい、さらに競争力が落ちるリスクもあるでしょう。
ですから、家賃や更新料を下げるのは、本当に必要なときだけの最終手段として考えるほうがよいのではないでしょうか。
早期に問題点を察知する
日々の運営の中で、早期に問題点を察知することも、入居者の早期退去を防ぐ有効な施策になります。
▼入居者とコミュニケーションの機会持つ
入居者とのコミュニケーションは、とても大切です。定期的にコミュニケーションの機会を持つことで、信頼関係を築いて、入居者が気軽に相談しやすい環境を構築できます。
たとえば、入居者が問題に直面したとき、オーナーや管理会社とのあいだに信頼関係があれば「ちょっと相談してみようかな」と思うでしょう。そうすれば、問題が大きくなる前に対応できます。
では、具体的にどうやってコミュニケーションを取ればいいのでしょうか?⸺ たとえば、こんな方法が考えられるのではないでしょうか。
- 定期的なアンケート
- 意見箱の設置
- コミュニケーションの場を設ける
- デジタルプラットフォームの活用
- コールセンターを設ける
いずれにしても、気軽に連絡できる仕組みを用意することが大切です。また、さまざまな方法で意見を聞けるようにしておくと、入居者に安心感が生まれます。
入居者が「この物件なら、困ったときにちゃんと対応してくれる」と感じると、長く住みたいと思ってくれる可能性が高くなるでしょう。
また、入居者と信頼関係を築けたら、入居者にとってそれがスイッチングコストになります。引っ越しを思いとどまらせる強い動機になってくれるでしょう。
▼入居審査を厳格化する
入居審査を厳格化することで、物件と入居者の相性をよくすることができます。これが結果的にトラブルを減らして、早期退去を防ぐのに役立つでしょう。
たとえば、どんな物件が希望なのかしっかり入居者に聞くことが大切です。物件に対する期待が明確で、自社物件とマッチする方に入居してもらうことで、入居期間の長期化が期待できます。
審査のときに物件のルールをしっかり説明して、入居者が納得できるか確認することも重要です。「そのルールで問題ないです」と言ってくれる方を選べば、トラブルが起きにくくなるでしょう。
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