近年、ファミリー世帯の減少から空室の増加に悩む賃貸住宅のオーナーさまが増えています。あなたも「入居率を改善する施策はないかな?」と思案していませんか?
その悩みは、物件をスマートホーム化することで解消できるかもしれません。スマートホーム化は、差別化につながるだけでなく、入居者の満足度が向上して退去率の低減にも役立つでしょう。
本稿では、賃貸住宅のスマートホーム化のメリットや、すぐに導入できるIoT機器について詳しく紹介します。あなたも、最新のIoT技術を取り入れて、賃貸物件の魅力を高めてみませんか?
目次
賃貸住宅もスマートホーム(IoT住宅)の時代へ
日本のスマートホーム市場が、じわじわと拡大しています。その背景には、IoT機器の低価格化やスマートスピーカーの普及、シニア世帯の増加、先行するアメリカでの需要増などがあります。
このチャンスをものにしようと、住宅メーカーだけでなく、IT企業やネットサービス企業などのさまざまな会社が市場に参入し、競争を激化させています。
ところで、そもそも「スマートホーム」とはどんな家なのでしょうか?「IoT」とは、どんなものなのでしょうか?――「よくわからない」と感じている方は、まずそこから確認しておきましょう。
スマートホームとは
スマートホーム(smart home)は「賢い家」と直訳できます。さて、どのように「賢い」のでしょうか?
経済産業省のホームページによると、以下のように書かれています。
スマートホームは、「子育て世代、高齢者、単身者など、様々なライフスタイル/ニーズにあったサービスをIoTにより実現する新しい暮らし」であり、IoTに対応した住宅設備・家電機器などがサービスと連携することによって、住まい手や住まい手の関係者に便益が提供されます。
※ 太字は筆者による
この説明を難しいと感じる方は「ITの力によって、住宅内の電子機器の使い方をより便利にする仕組み」、あるいは「そういう仕組みを持った家」と解釈していただくとよいでしょう。
スマートホーム化の流れの中で、これまでITと無縁だった設備や建材にもIoT機器が組み込まれ始めています。たとえば、照明やエアコン、玄関ドアがその典型でしょう。
あなたは、照明やエアコン、玄関ドアで以下のような失敗をした経験がありませんか?スマートホーム化すればそんな失敗をフォローしてもらえるのです。
- 照明の消し忘れ ⇒ 外出先から消灯できる
- エアコンの過剰利用 ⇒ 勝手にエネルギー消費を最適化してくれる
- 玄関ドアのカギの閉め忘れ ⇒ 自動で施錠してくれる
このように、人間の至らない部分を住まいが管理・制御して、事故防止や状態の監視、エネルギー消費の最適化をおこなうのがスマートホームです。「賢い」と思いませんか?
スマートホーム化は、おもに「IoTデバイス」と呼ばれる機器を使って実現します。つづいて、IoTについて解説していきましょう。
IoT(アイオーティー)とは
「スマートホームは、IoTなしでは実現し得ない」といっても過言ではありません。―― では、IoTとはどういうものなのでしょうか?
IoTは「Internet of Things」を略した言葉で、さまざまなもの同士がインターネットでつながった状態を指します。
参考:DX SQUARE「IoTとは?今さら聞けないDX関連用語をわかりやすく解説」
あなたのご家庭でインターネットにつながっているものと言えば、何でしょうか?パソコンぐらいですか?
最近では、以下のものもインターネットにつながっているかもしれませんね。
- テレビ
- スピーカー
- 冷蔵庫
- エアコン
- 洗濯機
では、IoTで一体何ができるのでしょうか?―― IoTが得意なことを4つと、それぞれの例をご紹介しましょう。
遠隔制御 | 定時にカーテンを開ける、玄関ドアに近づいたら解錠する、外出先からエアコンをつける |
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モニタリング | 外出先からカメラで子どもやペットの状況を確認する、不審者の侵入を感知したらスマホに通知する |
データ連携 | スマートスピーカーに声をかけて照明を操作する、洗濯が終わったらスマホにプッシュ通知 |
予防・予知 | エアコンの強弱やON・OFFを機械学習で自動化して節電、設備が故障する前に異常データを察知して通知 |
どうでしょうか。とても便利そうだと感じませんか?
じつは、IoT機器の中には、工事不要で後付けできるものもあります。まずは、そのような機器からお試しで使ってみるのもよいでしょう。
賃貸住宅のスマートホーム需要
さて、スマートホーム賃貸の需要は、どの程度あるのでしょうか?まだ、日本ではあまりニーズがないように思えますよね。
スタイルアクト株式会社の調査(首都圏の賃貸物件居住者スマートホームニーズ調査結果)によると、以下のような結果が出たそうです。
- スマートホーム機能付き物件に追加コストを負担する人の割合は58%となった
- 追加コスト負担額は5,844円で、賃料の6.7%相当となった(平均家賃は87,394円)
利用意向の調査では、以下がトップ3でした。
- ガス栓操作
- エアコン操作
- 玄関人感センサー
この調査を見ると、過半数の方が「スマートホーム賃貸に追加費用を払ってもよい」と考えていて、とくに「遠隔操作」の関心が高いとわかります。
一方、4人以上のファミリー世帯は減少傾向、単身世帯や2人世帯は増加傾向にあります。65歳以上の一人暮らしや、シニア夫婦だけの世帯が増えているのです。
このような流れの中で、モニタリング(見守りやセキュリティー)の関心も高まっていくでしょう。高齢者を対象とするなら、この分野のスマートホーム化も必須ではないでしょうか。
参考:内閣府 高齢化の状況
参考:国土交通省 高齢者世帯数と年齢別単身世帯数の推移
ちなみに、アメリカのスマートホーム普及率は30%を超えているそうで、数年後には半数を超えると予測されています。ですから、日本もいずれそうなるでしょう。
アメリカで普及したものが数年遅れて日本に波及した例は、枚挙にいとまがありません。ソフトバンク孫正義氏のタイムマシン経営を見習うなら、今がチャンスではないでしょうか。
賃貸住宅におけるスマートホーム化のメリットとデメリット
つづいて、スマートホーム化のメリットとデメリットをご紹介しましょう。
スマートホーム化のデメリット
まずは、デメリットからふたつご紹介します。
デメリット1:利用環境を整える必要がある
スマートハウスでは、家中のIoT機器がWi-Fiで通信をおこないます。ですから、導入前にWi-Fi環境を整備しなければなりません。
Wi-Fi環境を整備する際、ネットワークの強さや範囲、セキュリティーについてよく考慮する必要があります。
デメリット2:セキュリティー上のリスクがある
スマートハウスは、外部からの不正アクセスに気を配る必要があります。IoT機器を乗っ取られたり、個人情報を抜かれたりする可能性があるのです。
「冷蔵庫や洗濯機のような、重要情報を持たない家電なら安心」とは言えません。踏み台に利用され、悪質なサーバー攻撃に加担してしまうリスクがあります。
スマートホーム化のメリット
次は、スマートホーム化のメリットをご紹介しましょう。
メリット1:差別化により、入居率アップが期待できる
ニーズを満たす、すなわち「顧客層に選ばれる理由を多く持っている」物件は、ライバルが減って選ばれやすくなります。スマートホームは「選ばれる理由」のひとつになります。
たとえば、スマートハウスの以下の機能は、一定の方に喜ばれるでしょう。
- 電気の消し忘れや玄関のカギの閉め忘れを解消してくれる遠隔操作
- 見守りやセキュリティーに役立つモニタリング
まだしばらく、すべての新築がスマートハウスになるようなことはないでしょう。すべての新車が電気自動車になっていないのと同じです。
ですから、今ならまだ、いち早くスマートハウス化することで差別化できるでしょう。近隣にスマートハウスの物件がないのであれば、今がチャンスです。
いずれ、不動産ポータルの絞り込み検索にも「スマートハウス」の項目ができるでしょう。そのときが来たらすぐ、貴社の物件情報に「スマートハウス」のタグ付けをするべきです。
メリット2:入居者の満足度アップにつながる
住宅のスマートハウス化が進むと、住宅設備や家電の操作が今よりずっと快適になります。たとえば、よくあるこんな不満も解消できるでしょう。
- お出かけ時に「ガス栓閉めたっけ?カギ掛けたっけ?エアコン消したっけ?」と悩む
- 帰宅時に「廊下も部屋もまっくら、家の中が寒い (暑い)」と残念な気持ちになる
スマートホーム化すれば、ガス栓も玄関のカギもエアコンも、出先から現在の状態がわかるようになります。閉め忘れたり消し忘れたりしていたら、遠隔操作で正常な状態にできます。
スマホのGPS機能を活用すれば、帰宅直前にエアコンを始動させることもできます。玄関に入ればすぐ、廊下やLDKの照明を自動点灯させることも可能です。
このような利便性によって、退去率の低下も期待できるでしょう。
賃貸住宅におすすめ!すぐに導入できるIoT機器
最後に、賃貸住宅におすすめの「すぐに導入できるIoT機器」を3つご紹介しましょう。どれも大がかりな工事を必要としませんので、試しやすいでしょう。
まずは小さく実験的に始めてみて、感触をつかんでみてはいかがでしょうか。
スマートロック
スマートロックを導入すると、玄関ドアのカギを手ぶらで施錠・解錠できるようになります。スマホでカギの状態を確認したり、外出先から施錠したりすることも可能です。
一般的なサムターン錠であれば取り付けられますので、導入しやすいでしょう。
参考:Qrio Lock
一歩進めたい方は、スマートホーム化できるインターホンを導入してみてはいかがでしょうか?学校から帰宅した子どもが鳴らしたインターホンを、外出先にいる親御さまのスマホで受信できますよ。
そのまま遠隔操作で玄関を開錠できますので、子どもだけの留守番に見えず、防犯にも役立つでしょう。
スマートLED電球
スマートLED電球を導入すると、スマホで照明のオンオフや明るさ調整、色調整の操作ができるようになります。スマートスピーカーを使った音声コントロールも可能です。
決まった時間に点灯・消灯できるスケジュール機能も便利です。うまく活用すれば、目覚ましや睡眠時間のコントロールに役立つでしょう。
スマートリモコン
スマートリモコンは、手軽にスマートホーム化を実現できる機器です。専用アプリをスマホにダウンロードすることで、リモコン操作で動く家電を、スマホで操作できるようになります。
外出先から、スマートリモコンを操作することもできます。スマートスピーカーを使った音声コントロールも可能です。
参考:Nature Remo
IoT機器の進化と低価格化により、賃貸物件でも簡単にスマートホーム化が図れるようになっています。近い将来、スマートホーム賃貸は、ひとつの分類として定着するでしょう。
工事不要で導入できるIoT機器は、手軽に試すことができます。あなたも、まずはそこから導入してみて、入居希望者の反応を伺ってみてはいかがでしょうか。
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