ペット可はアパートの空室対策に有効?メリットとデメリットを紹介

日本では、1980年代後半から1990年代後半にかけてペットブームがありました。その頃から「ペット可」の新築分譲マンションが増え始め、現在では多くのマンションがペットの飼育を認めています。

一方、賃貸アパートでは、分譲マンションほど「ペット可」の物件が多くありません。ですから、所有されているアパートをペット可にすることで、利回りの改善につながるケースがあります。

本稿では「ペット可」のメリットやデメリット、および注意点をお伝えします。ご興味があるオーナーさまや管理会社の担当者さまは、ぜひ最後までご覧ください。

目次

アパートの空室対策に「ペット可」を採用するデメリット

アパートの空室対策にペット可を採用するデメリット

日本はペットブームと言われて久しいですが、ピークは過ぎているそうです。しかし、『令和4年 全国犬猫飼育実態調査』によると、近年は犬や猫の新規飼育数が増加傾向にあります。

そんな中、所有する賃貸物件を「ペット可」にして、新規入居者の獲得を増やしていきたいと考えているオーナーさまも増えています。

あなたは、いかがですか?「デメリットはないのか?」と気になって、思い切れませんか?―― ではまず、ペット可にしたときのデメリットからご紹介しましょう。

室内を汚したり傷つけられたりするかもしれない

空室に困っている賃貸アパートのオーナーさまなら、一度は「ペット可」を検討されたことがあるでしょう。そのとき、まず気になるのが「キズ」と「汚れ」ではないでしょうか。

たとえば、猫には爪をとぐ習性があります。部屋の中のどこででも爪とぎをしてしまいますので、内装がボロボロになることを覚悟しておかなければなりません。

汚れはどうでしょうか?猫はきれい好きで、犬よりラクにトイレを教えられます。しかし、トイレが汚かったり環境が変わったりすると、粗相することもあるでしょう。

参考:環境省「猫のトイレを考える」

犬も、構ってほしいときや分離不安症になっているとき、あるいは老齢などが理由で粗相することがあります。わざとウンチを散らかすこともあります。

ですから、飼主がペットのしつけに無頓着である場合、お部屋に汚れやキズ、ニオイなどが付いてしまいます。そうなると、退去時の原状回復費が高額になるでしょう。

そのような事態にも対応できるように、備えておくことが肝心です。

鳴き声等で入居者トラブルになるかもしれない

動物の鳴き声は、近隣トラブルの原因になります。中でもとくに多いのが犬の鳴き声によるトラブルです。人への加害、あるいはペットへの虐待の疑いからトラブルに発展するケースもあります。

参考:日本建築学会技術報告書『全国市役所騒音担当者への近隣騒音トラブルに関するアンケート調査』

猫の場合は、発情期の鳴き声でトラブルになることがあります。飼育を認める場合は、避妊の有無を確認したほうがいいでしょう。他人の敷地内への侵入やフン尿からトラブルになることもあります。

また「ペット可の物件なんだから、鳴き声くらい許されるべき」と考えている飼主も少なくありません。そのような飼主にマナーを理解してもらうのは、なかなか骨の折れる作業でしょう。

入居前にしっかりとルールを説明して、飼主から同意を得たうえで契約することが重要です。

アパートの空室対策に「ペット可」を採用するメリット

アパートの空室対策にペット可を採用するメリット

つづいて、ペット可にするメリットをご紹介します。

「ペットと暮らせる賃貸住宅」のニーズに応えられる

ペット可の物件には、決して少なくないニーズがあります。たとえば、以下はそのニーズをくみ取った結果の現れでしょう。

  • 賃貸情報サイトで「ペット可物件特集」が組まれている
  • 新築分譲マンションの大半は、ペット可

上述のことから、ペット可に一定のニーズがあることは明らかです。所有するアパートをペット可にすることで、このニーズを捉えられるでしょう。

既にご紹介した『令和4年 全国犬猫飼育実態調査』では、今後の飼育意向についても調査がおこなわれています。

今後ペットを飼いたいと考えている人は、全年代で年々減少しています。しかし、若い世代では5~7人にひとりくらいは、ペットと暮らしたいと考えているようです。

同調査結果から、飼育意向を持つ人の割合を抜き出しておきましょう。

種類20代30代40代50代60代70代
18.5%18.2%17.8%18.5%16.6%13.5%
15.1%14.3%14.8%15.8%13.1%9.9%

このようなニーズの背景には、未婚や単身世帯の増加があると言われています。未婚者や単身世帯が多い都市部では、ペットの飼育ニーズが高まっていくのではないでしょうか。

ちなみに、ペットを飼うことでさまざまな効果が得られます。例をご紹介しましょう。

  • 家族の一員だと思える
  • リラックスできる
  • 緊張感が和らぐ
  • 怒りの気持ちが静まる
  • 他人と共通の話題でコミュニケーションできる

恐らく、このような効果を期待したからでしょう。コロナ禍がペットの飼育ニーズを後押したのは、記憶に新しいところです。

競合との差別化につながり、新規顧客獲得の際に有利になる

ニーズのある独自要素を持つ物件は、入居付けで有利です。しかし、アパートは設備や間取りで独自化するのが難しいでしょう。ですから、入居条件で差別化を図るのが効果的です。

入居条件で注目されているのが「ペット飼育者・高齢者・外国人」の受け入れです。いずれもオーナーさまにしてみると心配ごとが増えるため、それが参入障壁となり差別化につながっています。

たとえば、令和5年9月13日現在、LIFULL HOME’Sに掲載されている東京23区の物件「194,800件」のうち、検索条件で「ペット相談可」と「高齢者歓迎」にチェックを入れると何件になるでしょうか。

―― 試してみましょう。

  • ペット相談可:38,173件(19.6%)
  • 高齢者歓迎:2,356件(1.2%)

こうして見ると「高齢者やペット飼育者が住める賃貸物件は少ない」という現実が分かります。高齢者を受け入れるより、ペット可にするほうの難度が低いことも推測できます。

「ペット可」にすれば競合がグッと減るわけですから、一定の差別化効果を期待できるでしょう。空室にお悩みでしたら、試してみる価値が大きいのではないでしょうか。

賃料アップ・入居率アップ・長期入居につながる

先述のとおり「ペット可」にすれば競合が減るわけですから、入居率アップに寄与することが想像できます。また、希少性から相場よりも賃料を高くすることも可能でしょう。

「ペット可」の物件探しが大変なことは、入居者自身がよく分かっています。よって、よほどの理由がない限り転居しないと考えられますので、長期の入居も期待できます

とりわけ、猫は住みなれた場所に執着します。ですから、猫を飼っている方はむやみに引っ越ししない傾向があり、収益の安定に寄与してくれます。これは、不動産投資家にとって重要なメリットです。

参考:東リ 犬家猫館.COM「犬や猫のストレス回避 引っ越しなどで住まいが変わるときに」

ペットの飼育者は、自分だけでなくペットにとっても環境がよい場所を探す必要があります。ですから、立地の利便性の優先順位が低く、安心してペットと暮らせる環境を優先してくれます。

多少不便な立地でも「ペット可なら」と妥協してくれる傾向が強いでしょう。

空室対策でアパートを「ペット可」にする際の注意点

空室対策でアパートをペット可にする際の注意点

最後に、アパートを「ペット可」にする際の注意点をご紹介します。

原状回復に備えておく

ペットの飼育には、壁・床の損傷やニオイの問題が付きものです。ですから、原状回復の費用が高額になりやすく、それに備えておく必要があるでしょう。

  • 犬 ⇒ 糞尿の問題や、室内の破損・汚損が発生するリスクが高くなる
  • 猫 ⇒ 壁などで爪をとぐ習性がある

まずは、原状回復に関する規定を設け、入居を希望するペット飼育者に同意してもらう必要があります。書面を取り交わしておけば、トラブルに発展するリスクを軽減できるでしょう。

たとえば「ペットによる破損・汚損の原状回復費は、すべて借主負担とする」等の規定が必要でしょう。あわせて、敷金または家賃を増額しておくのも有効です。

既存入居者に説明して理解を得ておく

アパートの居住ルールは、総会で決める分譲マンションと違い、賃貸人と賃借人が交わす契約で決められます。よって、賃貸人の一存でアパートの規約を「ペット可」に変更できます。

参考:弁護士ドットコムニュース

とは言え、既存の入居者の中には、動物が苦手な人やアレルギーのある人がいるかもしれません。ですから、事情を説明して理解を得ておかないと、反発を招きトラブルになることもあるでしょう。

説明は面倒です。しかし、アパートの空室にお悩みなら、入居条件の拡大は入居付けの有効な施策になります。簡単には進まないかもしれませんが、乗り越えたときの見返りは小さくないでしょう。

新たにルールを規定する

ペット可にする際、飼育と原状回復に関して以下のようなルールが必要です。明文化しておき、入居前に説明しておくことでトラブルになるリスクを下げられます。

  • 飼育可能な種類や大きさ、頭数の規定
  • 入居時や頭数が増えるときの申請ルール
  • 廊下や階段、ベランダなどの共用部のルール
  • 原状回復に関する取り決め
  • 去勢・避妊の有無に関するルール

「ペット可」と書かれているだけでは、どんな動物でも飼ってよいと解釈できます。同じ理由で「小鳥」のような曖昧な表現もおすすめできません。種類をしっかりと記載しておきましょう。

飼育のルールに関しては室内に気が行きがちですが、共有部のルールも欠かせません。抱きかかえる、おしっこやマーキングをさせない、ベランダ飼育やトイレ設置は不可といった規定が必要でしょう。

しっかり備えておくことで、賃貸人も賃借人も不安を和らげられます。あなたも準備からスタートして、アパートの空室対策に「ペット可」を活用してみてはいかがでしょうか。

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