リバースモーゲージとは?わかりやすく仕組みやデメリット等を解説

日本では老後の資金不足が社会問題化していて、2000万円問題が話題になったのは記憶に新しいですよね。そんな中で、高齢者でも借入できる「リバースモーゲージ」に関心が集まっています。

しかし、リバースモーゲージにはリスクがあり、利用に警鐘を鳴らす方が少なくありません。リバースモーゲージの利点と注意点を正しく理解して、利用するかどうか判断したいところです。

本稿では、リバースモーゲージの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。利用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

リバースモーゲージとは?意味や仕組みを簡単に解説

リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージの歴史は古く、1981年ころから多くの自治体や金融機関が商品化に乗り出しています。しかし、バブル終焉による不動産価格の下落で担保割れが多発して、ほとんどの商品が廃止されました。

参考:日本経済新聞「東京・武蔵野市、リバースモーゲージ見直し 貸付金回収できず」

ところが2000年台に入ると、長寿化による老後の資金不足が社会問題化して、不安を覚える高齢者が増え始めます。そんな中で、再びリバースモーゲージが商品開発されるようになりました。

近年では、リバースモーゲージは「シニア向けのローン」として注目されています。

リバースモーゲージ(reverse mortgage)って、どういう意味?

モーゲージは「抵当 (権)、担保、貸付金」の意味を持ち、不動産を担保にしたローンを指す言葉です。リバースは「逆」ですから、リバースモーゲージで「逆抵当融資」という意味になります。

では、同じく不動産を担保とする「住宅ローン」とは何が違うのでしょうか。何が「逆」なのでしょうか。

住宅ローンには、以下の特徴があります。

  • 最初に一括で借入をおこなう
  • 毎月少しずつ元本と利息を返済する
  • 返済する度に元本が減る

一方、一般的なリバースモーゲージには、以下の特徴があります。

  • 融資限度枠内で毎月少しずつ借入をおこなう
  • 最後に一括返済する
  • 少しずつ元本と利息が増えていく

このように、住宅ローンとリバースモーゲージは一部「逆」と言える特徴を持っています。

リバースモーゲージの仕組み

つづいて、リバースモーゲージの仕組みをご紹介しましょう。

概要

リバースモーゲージは、高齢者の資金調達に関する課題を解決する商品です。

多くの高齢者は、年齢や年金意外に収入がないことが理由でローンを組みにくい状況です。一方、60歳以上の世代は持ち家率が高く、これを資金調達に活用できます。

しかし、不動産には以下の問題があります。

  • 流動性が低く、すぐに資金化できない
  • 売却してしまうと、新居を探す手間が生じる

リバースモーゲージを使うと、上述のような問題を解決できます。自分が所有する自宅を担保にして融資を受けますので、年金の他に収入がない高齢者でも利用可能です。

ですから、リバースモーゲージは資産価値が高い不動産を所有している方に向いています。また、子どもに住宅を相続しなくてもよい方にも適しています。

なお、リバースモーゲージは「民間の金融機関、住宅金融支援機構 (窓口は金融機関)、都道府県の社会福祉協議会」等で取り扱っています。

借入方法

融資方法は機関によって違います。主なものは、以下の4つです。

  • 毎月一定額を終身受け取るタイプ(終身年金型)
  • 毎月一定額を一定期間受け取るタイプ(定期年金型)
  • 融資枠の範囲内で、希望するときに希望する額を受け取るタイプ(信用枠型)
  • 契約締結時に融資枠全額を受け取るタイプ(一括型)

参考:リバースモーゲージの現状と課題

返済方法

リバースモーゲージの月々の返済は、主に次のふたつの方法があります。

  • 利払いなし型:月々の返済なし(利息分は借入残高に組み入れ)
  • 利払いあり型:利息分だけ返済

一方、借りた元本は契約者がお亡くなりになってから一定期間以内に返済しなければなりません。主な返済方法は、以下のふたつです。

  • 相続人が現金で一括返済
  • 担保不動産を売却して、その代金で返済

相続人が現金で返済されるケースでは、相続財産や生命保険の保険金などを充てることが多いようです。このケースでは、担保不動産が相続人の手元に残ります。

一方、売却代金で返済する場合は、不動産が相続人の手元に残りません。かつ、契約者がお亡くなりになってから返済期日まで半年程度の金融機関が多く、計画的に売却を進める必要があります。

では、担保不動産を売却しても、その代金で完済できない場合はどうなるのでしょうか。―― 残債の取り扱いは、リバースモーゲージ商品によって異なります (以下参照)。

  • リコース型:相続人が残債の返済義務を負う
  • ノンリコース型:相続人に残債の返済義務がおよばない

利用者からすると「ノンリコース型」がお得に感じます。しかし、融資側からすると貸付リスクが高くなりますので、審査や融資条件(金利など)が厳しくなります。

なお、担保不動産で代物返済することを認めている金融機関もあります。代物弁済を実行すると、担保不動産を金融機関へ渡すことで債務を消滅させられます (民法482条)。

配偶者の契約引き継ぎを認めている金融機関も、少なくありません。ただし、配偶者にも審査があり、手数料等の諸費用も新たに必要になります。

リバースモーゲージの利用条件

つづいて、リバースモーゲージの利用に関する諸条件をご紹介します。

使途

多くの金融機関が、資金の使い道を「生活にかかる資金であれば原則自由」としています。認められる使途の例をあげてみましょう。

  • 生活資金
  • 医療・介護資金
  • 建て替え・リフォーム資金
  • 住宅の新築・購入資金
  • 住宅ローンからの借り換え資金

事業資金や投資資金など、生活資金に該当しない資金は融資の対象外です。

対象地域

多くの金融機関では、融資の対象地域を絞り込んでいます。ご自宅を担保とする性質上、首都圏・関西圏・地方の大都市など、不動産価値が高い地域に限定しているのです。

対象地域内であっても、マンションは対象外としている金融機関が少なくありません。もしくは、マンションの評価額に戸建てより厳しい条件を設けているケースもあります。

たとえば、リバースモーゲージに注力している「東京スター銀行」では、以下のような条件を設定しています。

利払いあり型 ・戸建て:1,000万円以上
・マンション:2,000万円以上
利払いなし型 ・戸建て:2,000万円以上
・マンション:3,000万円以上

参考:東京スター銀行 リバースモーゲージ「充実人生」

ご覧いただくと、わりと高めに設定されているのが分かります。この金額をクリアできるのは、実質的に主要な大都市か地方の大きな敷地に限られるでしょう。

年齢

リバースモーゲージは、利用者の年齢制限を設けていて「55歳以上」や「60歳以上」など高めに設定されています。

契約者に配偶者がおられる場合は、配偶者にも年齢制限を設けている金融機関が少なくありません。同居する子どもにも、年齢制限を設けているケースもあります。

年収

リバースモーゲージは、年金等の安定した継続収入があれば利用できます。給与所得の有無は問われません。

ただし「リバースモーゲージ型住宅ローン」と呼ばれる商品は、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)で融資額を決めています。よって、給与所得のある方のほうが有利になります。

保証人

リバースモーゲージは、多くの金融機関が「原則として、第三者や保証会社による保証は不要」としています。ただし、共有物件を担保にする場合は、共有者が連帯保証人になる必要があります。

同居人

担保不動産の同居人として認められるのは、原則として単身またはご夫婦のみです。お子さまが同居される場合は、任意後見制度の利用等が条件となることがあります。

知っておきたいリバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージには「3大リスク」と呼ばれる壁がありますので、順番にご紹介しておきます。

金利上昇リスク

リバースモーゲージの多くは、変動金利を採用しています。ご存じのとおり、変動金利は利率が低く、利息を圧縮できます。一方、契約期間中に金利が上がってしまうリスクもあります。

リバースモーゲージでは、金利が上がると以下のことが起こります。

  • 利払いあり型の場合 ⇒ 月々支払う利息が増える
  • 利払いなし型の場合 ⇒ 融資上限額が下がる

とは言え、変動金利を採用しているローンはたくさんあります。住宅ローンの契約者も大半が変動金利で借りていますので、これはリバースモーゲージに限ったリスクではありません。

また、足元の経済状況や日銀の動向、今後の人口減にともなう需要減を考慮すると、数年で変動金利が急上昇していくシナリオは描きづらいでしょう。

過度な心配をする必要はありませんが、借入額をできるだけ抑えたいところです。

担保評価下落リスク

リバースモーゲージの融資上限額は、担保不動産の評価額に応じて決まります。原則的に評価額は毎年見直されますので、自宅の不動産価値が想定外に下がると、それに応じて融資上限額も下がります。

では、融資上限額が下がると、どうなるのでしょうか。―― 万が一、借入残高が融資上限額を上回ると、超過分の返済を求められ、以降の融資がストップしてしまいます。

今後、人口減が顕著な地域は、一気に不動産価値が下がるかもしれません。ご自宅の再販価値(リセールバリュー)を見極めて、リバースモーゲージを利用するかどうか検討したいところです。

長生きリスク

契約者がご存命中に融資上限額まで使い切ってしまうと、以降の融資が途絶え、支払う利息だけが積み重なります。ですから、リバースモーゲージにとって、長生きはリスクになり得ます。

融資が上限額に達したあと、不動産の評価額が大きく下がると、上述のとおり超過分の返済を求められます。返済資金がない場合は、ご存命中でも自宅を売却しなければなりません。

ただし、金融機関は融資上限額を土地評価額の50~70%程度に抑え、余裕を見ています。

リバースモーゲージならではのメリット

リバースモーゲージならではのメリット

最後に、リバースモーゲージのメリットをご紹介します。

高齢者が利用できる

リバースモーゲージの最たるメリットは、高齢者でも利用できるところでしょう。たとえば、ご自宅に大規模な修繕が必要になったとき、リバースモーゲージが強いミカタになってくれます。

給与所得がない高齢者は、一般的な住宅ローンが借りられません。ですから、修繕資金がない場合は、そのまま我慢して住みつづけるしか選択肢がないでしょう。

リバースモーゲージなら、高齢者でもリフォーム資金を調達できます。月々の返済は利息のみですから、返済の負担もリフォームローンより軽く済みます。

月々の返済額が少ない

リバースモーゲージは月々の返済なし、または利息分の返済のみで済みます。月々の返済額が少ないので、家計の負担が減るでしょう。

たとえば、住宅ローンをリバースモーゲージに借り換えることで、月々の返済額を抑えることができます。定年後にたくさん住宅ローンが残っている方は、ご検討いただくとよいでしょう。

空き家問題の解決につながる

リバースモーゲージは、空き家問題解決の観点からも注目されています。

リバースモーゲージは、自分の死後に自宅が金融機関のものとなり処分してもらえるような仕組みです。今後、単身世帯が増えますので、利用が広がるかもしれません。

ご実家を離れ遠方で暮すお子さまにとっても、メリットがあるでしょう。親御様の介護資金が心細いとき、リバースモーゲージを使えば、ご実家を売却することなく資金を調達できます。

親御様がお亡くなりになったときに実家を売却して返済に充てれば、空き家のまま放置せずに済みます。代物弁済を活用される場合は、面倒な売却活動も金融機関がやってくれます。

【まとめ】リバースモーゲージをうまく活用するには?

リバースモーゲージは、担保不動産の資産価値がものを言います。ですから、まず、購入段階でリセールバリューが維持できそうな物件(駅から近い等)を選ぶことが大切です。

また、今後は中古売買の透明化や市場の活性化が進んでいくでしょう。そのような流れの中では、しっかりメンテナンスされた物件も高いリセールバリューを保ったまま売買されるようになります。

リバースモーゲージを検討されている方は、利用時のリスクだけでなく、購入時や維持管理にも目を向けてください。きっと、終生ご自宅があなたの力になってくれるでしょう。

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