「火災保険の保険金で家の修理ができます」と勧誘してくる詐欺が増えています。自腹で修理することになったり、業者にサポート料等を詐取されたりする被害が発生していますので、ご注意ください。
一方、火災保険の保険金で修理できるのに、活用できていない人も少なくありません。建築や損害保険の知識がないため、保険金が出るのかどうか判断できず、適切に利用できていないのです。
本稿では、火災保険詐欺の手口や対策方法、火災保険で修理できるケースについて解説します。この詐欺は台風シーズンに増加する傾向がありますので、今から知識武装しておきましょう。
目次
火災保険詐欺の手口
悪質な住宅修理で保険契約者が被害に遭う事態が頻発しています。独立行政法人国民生活センターに寄せられた被害相談の件数は、2020年度に5000件を超え、10年で約50倍に増加しているようです。
火災保険詐欺の手口は、組織的で狡猾です。修繕したいと思っている矢先に「お金をかけずに修理ができる」と持ちかけ、人が持つ「損したくない」と思う特性を利用して受注してしまいます。
このまま被害が増えると、火災保険料の値上がりにつながってしまいます。手口の特徴をご紹介しますので、該当する勧誘にはご用心ください。
「火災保険の保険金で修理ができる」と勧誘してくる
火災保険詐欺では、訪問・電話・チラシ等で「火災保険を使って、自己負担なく修理できます」や「申請のサポートもします」と勧誘してくる手口が多いようです。
保険金の詐取をもくろむ業者は、見積書を作成して修繕工事や保険金請求サポートの契約を勧めます。以下のことがおこなわれ、強く契約を迫られた方もおられます。
- 「キャンペーンが今日まで」とゴリ押しされる
- 1日に何回も訪問される
- 契約するまで長いあいだ居座られる
このような行為は違法または違法スレスレであり、明らかに誠実さを欠いています。業務水準や施工精度も期待できませんので、即刻断ってもよいでしょう。
ちなみに、契約を断ったのに再勧誘する行為は「特定商取引法 第3条の2」違反です。「お帰りください」と伝えて、それでも帰らなければ「刑法 130条」の不退去罪に該当します。
なお、このような勧誘をしてくるのは修理業者だけではありません。新築を担当した工務店や災害の被災地調査員を名のる者が勧誘してきた例もありますので、ご注意ください。
調査員や顔見知りの工務店に「点検(調査)にきました」と言われれば、気を許してしまうでしょう。
しかし、彼らの目的が勧誘や保険金詐取であれば不実告知(ウソをつくこと)にあたり「特定商取引法 第6条」違反です。工事を任せるには不適格と言わざるを得ません。
地震や台風などの災害時に便乗する形で多発する
火災保険詐欺は、台風シーズンに増加する傾向があります。災害後は「点検」を受け入れる人が増え、かつ損保会社が忙しく調査精度が落ちやすいので、不正請求をもくろむ業者に好都合なのです。
この時期に以下のような文句で勧誘してくる業者は、用心したいところです。
- 火災保険を使って雨漏りを直せます
- 瓦が外れていますので、火災保険で直しましょう
- 樋が曲がっていますので、火災保険で交換しましょう
損保会社の調査で損傷箇所が経年劣化と見なされると、保険金は出ません。一方、修理業者に「また台風が来たら、次はもっと被害がひどくなりますよ」と言われたら工事を断りにくいでしょう。
結果的に自腹で修理したり、ひどい場合は申請サポート料まで請求されたりする方が後を絶たないのです。そんなことにならないように、ご用心ください。
高額な手数料や違約金が発生することの説明が不十分
火災保険詐欺では、工事費用を水増しして詐取する以外にも、コンサルティングや保険金申請サポート名目で3~5割程度の手数料をだまし取る手口が多く見られます。
最終的にその業者に工事を依頼しなかった場合、違約金を請求されるケースもあります。
このような悪質な手口では、大抵の場合、契約前にちゃんとそのことが説明されません。請求されて初めて気づき、トラブルになります。
保険会社をだますような手口で保険金を請求する
経年劣化による損傷は、火災保険の対象になりません。しかし火災保険詐欺では、自然災害で壊れたことにしたり壊れていない箇所に細工をしたりして、不正な請求をするケースが見受けられます。
ウソの理由で保険金を請求すると、保険契約の解除や保険金の返還を求められる恐れがあります。「私は業者に言われたとおりに請求しただけ」と言っても、通りません。
詐欺罪や詐欺未遂で、刑事罰に問われる可能性もあります。おかしいと感じたら、甘い誘惑に乗らず、契約している損保会社に相談していただくほうが無難です。
計画や見積書、工事の内容がずさん
詐取をもくろむ業者は、保険金が支払われることを前提に勧誘してきます。しかし「保険金が出る・出ない」は損保会社が判定することであり、出ない可能性を考慮しない計画はずさんです。
見積書も精密さやリアリティがなく、プロの目で見ると一目で稚拙な印象を受けます。そのような見積書で保険金を請求しても、当然うまく行きません。
いくつか、請求どおりに保険金が出なかった例をご紹介しましょう。
- 損保会社に「見積書は信用性にかける」と判定された
- 自然災害による損害と認められず、保険金が支払われなかった
- 支払われる保険金が見積額より大幅に下がり、予定の工事ができなかった
会社の所在地については、建築の知識がない方が見ても不自然に感じるものがあります。以下のようなケースは、ご注意ください。
- 被害物件からかなり遠いところ(他都道府県など)に会社がある
- 事務所の所在地が都心部のバーチャルオフィスになっている
- 所在地が実在していない、あるいは所在地に会社がない
たとえば、被害物件が九州にあるのにやって来た業者の所在地が東京なら、明らかに変です。工事後のアフターサービスのこともありますので、地域で実績のある業者に依頼するほうが安心でしょう。
工事内容がずさんで金額と釣り合わないケースや、しばらくして不具合が再発するケースもあります。しかし、業者にやり直しを求めても居直ったり行方不明になっていたり、一筋縄では行きません。
どんな修繕なら、火災保険で修理できるのか
さて、どのような損害なら火災保険の保険金が出るのでしょうか。そもそも、火災保険は火災による損害をフォローするものではないのでしょうか。
現在の一般的な火災保険は、火災以外の損害も補償する総合補償型の保険になっています。保険でカバーできるのは、おおむね以下のとおりです。
- 火災、落雷、破裂・爆発
- 風災、雹(ひょう)災、雪災
- 水災
- その他の不測かつ突発的な事故(物体の衝突・飛来など)
規定の災害が原因の損傷であっても、家主が気づかないケースもあります。災害や事故のあと、速やかに建築会社やリフォーム業者、住宅診断士等の専門家に見てもらうと申請漏れの防止に役立ちます。
なお、保険金が出るのは、保険契約にもとづく災害や事故のみです。契約していないオプションは保険の対象外であり、度々お伝えしているとおり、経年劣化による損傷も対象になりません。
火災保険詐欺に巻き込まれないための対策
最後に、火災保険詐欺に巻き込まれないための対策をご紹介します。
甘い言葉で勧誘されたときは、すぐに契約しない
世知辛い話ですが、まず「甘い言葉には、落とし穴があるかもしれない」とお考えください。
火災保険の保険金が出るのか出ないのか、出るならいくら出るのか、損保会社の判断を得ずして決まりません。ですから、業者が言う「保険金で自己負担なく工事ができる」を信用してはいけません。
保険金請求サポートの手数料や工事キャンセル時の違約金について、説明されないケースも多発しています。必ず契約書を確認し、手数料や違約金、支払条件をよく確認してから契約しましょう。
そもそも、不誠実な業者と契約するのはトラブルの元です。複数社に相談して、見積書や提案内容を比較したうえで、慎重に選ぶことをおすすめします。
不審を抱いたら加入先の損保会社に相談する
契約内容や補償の範囲、免責金額は、加入者によって違います。あなたが加入する保険の中身を確認せず「保険金で自己負担なく工事ができる」と勧誘する業者は、軽率で信用できません。
「請求をサポート(代行)する」などのセールストークも用心したいところです。業者の言うことをうのみにせず、不明点や疑問点があるなら、加入先の損保会社に相談するとよいでしょう。
「コンサルが入ると、申請がとおりやすくなる」と説得されるケースもありますが、そんなことはありません。電話一本かければ済む話しであり、問題がなければちゃんと保険金が出ます。
簡単な申請作業のサポートに保険金の30~50%の成功報酬を請求してくる業者には、不審を抱かざるを得ません。ご自分で、損保会社に相談しましょう。
損保会社や行政等の対策を知っておく
損保の不正請求は年間100億円を超えると見られています。放置すれば保険料の適正化に悪影響を及ぼしかねませんので、金融庁や損保業界は強い問題意識を持っています。
たとえば、損害保険大手4社は保険金の不正請求対策で連携し始めました。各社が持つ保険金請求の情報を共有してAI(人工知能)で不正を検知するシステムの導入が進んでいます。
参考:日本経済新聞「保険金詐欺をAIで検知 損保大手、不正情報を共有」
虚偽や自作自演の請求で、保険申請を指南したリフォーム会社や建物所有者が逮捕された例も出てきました。不正請求は犯罪であると認識が広まれば、ウッカリ乗せられてしまう方も減るでしょう。
ユーザー自身が、「消費者ホットライン188」や「クーリング・オフ制度」について知っておくことも大切です。困ったときは1人で悩まずに、用意されている制度を利用したいものです。
【まとめ】賃貸管理会社さまにご提案
経年劣化による損傷を「自然災害が原因」と偽って保険金を請求する不正が後を絶ちません。指南した者だけでなく、建物の所有者が逮捕されるケースもありますので、ご注意ください。
災害時は、お抱えの協力業者の手がふさがりがちです。復旧が遅れると入居者さまの不満が高まりかねず、焦って見知らぬ業者の勧誘に乗ってしまいやすくなります。
日頃から、複数の信頼できる業者とお付きあいしておくと安心です。近年、台風や豪雨の激甚化、地震の頻発化が問題になっています。いま一度、災害時の復旧体制をご確認ください。
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