結露やカビは、人を不快にさせます。カビは異臭も発しますので、不動産の売却を予定されている場合は「買主に見ていただく前になんとかしたい」とお考えの方が多いのではないでしょうか。
内覧前にしばらく換気しておけばいい、という問題でもありません。すでに、建物や住人の健康に害を及ぼしているようなら、それを告知せずに売却すれば買主とトラブルになってしまいます。
本稿では、湿気や結露、カビの対策方法やリフォームのポイントについて解説します。不動産の売却をご検討中で、湿気が気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
湿気対策リフォームのポイント
そもそも、なぜ湿気を感じるのでしょうか。湿気を強く感じる住宅では、どんなことが起こるのでしょうか。
まずはその点を明らかにしながら、湿気対策リフォームのポイントをご紹介しましょう。
湿気の原因
さっそく、湿気の原因から解説します。
湿気とは
湿気とは「空気に含まれる水分」のことです。湿度が高いときに「湿気」を強く意識しますので、「湿気は不快」と感じている方が少なくないでしょう。
住宅内の湿度が高くなる要因は、いくつかあります。たとえば、高温多湿の時期や地域、あるいは敷地の環境が以下のような場合はジメジメとした湿気を感じやすくなります。
- 住宅が低地に建っている
- 敷地の水はけが悪い
- 敷地の日当たりがよくない
他にも、住宅内の環境が以下に当てはまる場合も、湿度が上がりやすくなります。
- うまく室内の換気ができていない
- 床下の通気口が障害物等でふさがっている
- 給排水管が破損して水漏れしている
- 燃焼系の暖房機器を使っている
湿気と換気は密接に関係しています。換気不全に陥っている住宅では空間の一部で空気がよどみ、湿気がたまってしまいます (以下の動画をご参照ください)。
また、意外と見落としがちなのが暖房器具です。石油ストーブやガスヒーターのような燃焼系暖房機器は、発熱と同時に水蒸気を排出しますので、湿気がたまる原因になります。
湿度とは
湿気の解説の中で「湿度」という言葉が出てきました。そもそも、湿度とは一体どういうものなのでしょうか。
湿度には、相対湿度と絶対湿度の2種類があります。普段、私たちが用いる「湿度」は、一般的に「相対湿度」を指しているケースがほとんどです。
- 絶対湿度:空気中に含まれている水蒸気量
- 相対湿度:そのときの気温における飽和蒸気量に対する、空気中の水蒸気量の割合
空気は、温度が高いとたくさんの水分を含むことができますが、温度が低いと少量の水分しか含むことができません。ですから、湿度は温度の影響を強く受けます。
たとえば、冬場の冷たい外気が含んでいる水分量は少量です。この外気が室内に入り温められると、一気に相対湿度が下がり、強い「乾燥」を感じさせます。
相対湿度は「40~60%」の状態が最適で、60%を超えるとカビやダニが発生しやすくなります。一方、40%未満になると喉の粘膜の防御機能が低下して、インフルエンザ等にかかりやすくなります。
湿気がたまると結露やカビなどのトラブルを招く
湿気がたまったり結露が発生したりしやすい住宅は、カビも繁殖しやすい状態です。そして、カビが繁殖しやすい環境は、腐朽菌やシロアリにとっても好都合です。
住宅にとって大敵である「結露・カビ・腐朽菌・シロアリ」について、少し知識を深めてみましょう。
結露とは
結露とは、空気中の水蒸気が冷たい壁や窓ガラス等に触れ、気体から液体に凝結(水滴になり付着)する現象のことです。この「凝結」が起こる温度を「露点温度」と言います。
結露を放置すると、後述する「カビ・腐朽菌・シロアリ」が発生する原因になります。結露を発生させない効果的な方法は、壁や窓ガラス等が露点温度以下にならないように断熱することです。
カビの特徴
カビは、暖かく湿気が多いところで発生します。空気中のどこにでも漂っているので、空気の流れが悪いところも増えやすくなります。
カビは不快なニオイを放つだけでなく、ぜんそくやアレルギーの原因になります。先述のとおり、カビが繁殖しやすい環境は、腐朽菌やシロアリにも好都合です。
カビは、相対湿度が80%以下になると極めて発芽しにくくなります。60%以下に保つと、ほぼ生育できません。
なお、カビはセルロース(木材の主成分)の周りにあるリグニンを分解できませんので、木材の腐朽や強度に影響しません。
木材腐朽菌の特徴
木材腐朽菌は、木材を腐らせ木造住宅の構造の耐久性を落とします。さらに、木材中のセルロースを分解して、その生成物でシロアリも呼んでしまいます。
木材腐朽菌は繁殖に「水分・空気・適温・栄養」が必要ですが、このうち人間や住宅にも必要な「空気・温度・栄養」は排除できません。
よって、木材腐朽菌の生育を抑えるには、できる限り木材を乾燥した状態にしておかなければなりません。つまり、終始結露しているような住宅は、木材腐朽菌が発生しやすいと言えます。
シロアリの特徴
シロアリは、風通しが悪く湿度の高い場所を好みます。ですから床下は、シロアリにとって快適な場所で、被害を受けやすいのです。
シロアリの栄養源は、木材に含まれるセルロースです。木造住宅では、シロアリの繁殖や食害が進むと、構造の耐久性が失われるほど深刻な状態になるケースもあります。
シロアリの食害を防ぐには、保証のある防蟻対策だけでなく、木材が湿らないように床下や壁体内などを乾燥状態に保つ必要があります。
リフォームで湿気の対策をするなら
先述のとおり、住宅の湿度は「40~60%」の間で保つのが理想です。60%未満に維持するのが難しい、あるいは結露がひどかったりカビが目立ったりするようなら、なんらかの対策が必要です。
このような状態で「湿気対策が必要」と感じたら、まず以下のような簡易な方法を試してみるとよいでしょう。
- 空気がよどまないように家具を配置する
- 市販の除湿剤で湿気を除去する
- サーキュレーターで空気を対流させる
- 除湿機やエアコンの除湿機能で湿気を除去する
- 燃焼系の暖房機器の使用を控える
上述の方法を実施しても悪化が止まらないようなら、腐朽菌やシロアリが発生する前に、早急にリフォームを検討すべきでしょう。
売却予定の不動産の場合は、腐朽や蟻害に対して細心の注意を払わねばなりません。腐朽や蟻害が発生しているにも関わらず告知せずに売却すると、買主から契約不適合責任を問われる可能性があります。
湿気対策のリフォームは、さまざまなものがあります。いくつか、例をご紹介しましょう。
- 除湿設備を設置
- 調湿・防湿改修
- 換気・気密性の強化
- 断熱改修
除湿設備は、設置式の除湿乾燥機や浴室暖房乾燥機などが該当します。調湿・防湿で用いる建材、換気設備、断熱材にもさまざまなものがあります。
状況に合わせて選択し、場合によっては複合的な対処が必要です。参考まで、湿気のトラブルの中でもとくに多い「壁の結露」と「床下の湿気」について、対策リフォームの要点をご紹介します。
壁の結露対策リフォーム
平成30年度時点で、住宅ストック「約5,000万戸」のうち無断熱の住宅が約30%あったそうです。断熱施工されていても、断熱材が劣化したり脱落したりしている家が多数あると思われます。
参考:国土交通省「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」説明資料
無断熱の住宅や断熱欠損がある住宅は、表面結露や内部結露(壁体内結露)が発生します。これを改善するには、状況に合わせて以下の改修工事が必要です。
- 断熱材・断熱サッシ
- 防湿層・通気層・防風層
- 気流止(在来工法の家)
- 換気設備
断熱材には「繊維系、プラスチック系、内断熱、外断熱」等の選択肢があります。断熱サッシも「Low-E、複層ガラス、内窓」など、いくつか種類や施工方法があります。
さらに、換気設備も「第1種、第2種、第3種、熱交換式」などがあり、状況に合わせて正しく選択しなくてはなりません。
また、漆喰(しっくい)や「エコカラット」などの調湿建材を壁面に施工するのも効果的です。上述の結露対策リフォームとセットでご検討いただくとよいでしょう。
床下の湿気対策リフォーム
床下の湿気対策は、主に以下の3つの方法があります。
- 床下換気扇
- 床下防湿シート
- 床下調湿材
床下換気扇を設置すると、床下にたまった湿気を強制的に排出できます。電気工事が必要なことと、故障すると床下の換気がほぼできなくなる点は注意が必要です。
床下防湿シートは、床下の地面の上に敷き詰めることで、土壌から上がってくる湿気を防ぎます。床下の全面に施工する必要があり、やや費用が高額になる傾向があります。
床下調湿材は、床下の湿度を調整してくれます。調湿剤には木炭やゼオライト等の多孔質のものが用いられ、半永久的に効果が持続すると言われています。調湿材も、やや費用がかかる点が短所です。
【まとめ】中古物件売却の元付け不動産会社様に、ご提案
湿気が多い住宅は、結露やカビが発生しやすくなります。結露やカビが発生する状況は、木材腐朽菌やシロアリにとっても好都合な環境です。
売却予定の物件の場合、結露やカビは内覧の際のマイナスポイントになります。腐朽や蟻害に至っては、契約不適合責任に発展する可能性もあります。
売主様の物件においてこのようなトラブルが疑われる場合は、点検のうえ、必要なリフォームをご提案されてみてはいかがでしょうか。
弊社(株式会社リペア)は、点検やリフォーム内容のご提案、施工管理まで通貫でフォローさせていただきます。ご興味がございましたら、以下から資料をご請求ください。