新築マンションの価格が高すぎる今、中古マンションは売りどきか

首都圏や都市部の新築マンションが、高い価格でも堅調に売れています。それに応じて、中古マンションの取引価格も上がっています。

しかし、今後は中古マンションのマーケットに大量の相続不動産が出てきます。そうなると「高値でも売れる物件」と「安くても売れない物件」に二極化していくでしょう。

新築・中古の分類を問わず一律で高額取引される時代は、まもなく終わるかもしれません。売りにくそうな中古マンションは、この機に早期売却を目指すほうがよさそうです。

本稿では、新築マンションと中古マンションの市場について、現在と今後を考察したいと思います。中古マンションの売却を急ぐべきか悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

新築マンションは価格が高くても売れている

新築マンションは価格が高くても売れている

コロナ禍による不安要素があったものの、新築マンションは高くても売れています。ご存じのとおり、首都圏の新築マンションの平均価格がついにバブル期を超えました。

バブル絶頂期の1990年、首都圏で発売された新築マンションの平均価格は「6,123万円」でした。一方、2021年に首都圏で発売された新築マンションの平均価格が「6,260万円」となったのです。

  • 全国:5,115万円
  • 首都圏:6,260万円
  • 東京23区:8,293万円

参考:株式会社不動産経済研究所「全国 新築分譲マンション市場動向 2021年」

2021年がこのような堅調となった理由は、いくつか考えられます。主なものをあげてみましょう。

  • 住宅ローン控除制度の改変による駆け込み需要
  • バブル期と比べものにならないほど低い金利
  • 共働き世帯の増加とペアローンの拡充

まず、住宅ローン控除制度が見直され、従来よりやや縮小されました。旧制度の適用を受けるためには、新築の場合「2021年11月30日までに契約」することが求められ、駆け込み需要が発生しました。

低金利が、これに拍車をかけました (以下参照)。先述の「首都圏で発売された新築マンションの平均価格」を参考にすると、毎月のローン返済額はバブル期の半分ほどで済む計算になります。

  • バブル期の住宅金融公庫融資の金利:4.95~5.5%
  • 2021年のフラット35の金利:1.28~1.37%
  • 2021年の変動金利:最も低いもので0.35%

バブル期によく利用された住宅金融公庫融資の金利が、4.95~5.5%。一方、2021年のフラット35の金利は、1.28~1.37%。変動金利に至っては、最も低いもので0.35%の商品まで登場しています。

「購入しやすさ」は、バブル期とは比べものにならないぐらいラクと言えるでしょう。

参考:首都圏新築マンション市場 ~価格上昇市場における住宅購入主力層の検証~

とは言え、購入者本人の年収はバブル期よりやや低下しています。これを補う形で、共働き世帯による夫婦ペアローンの活用が広がりました。

ちなみに、首都圏のファミリー向け賃貸住宅の家賃は、駅から近く利便性が高いエリアでは「15万円/月」を超えているケースもあります。

現在の金利水準でこれと同額を返済する場合、6,000万円の借入ができます。そうなると「いっそのこと、買うか」となる方も出てくるでしょう。

高価格の新築マンションをだれが買っているのか

高価格の新築マンションをだれが買っているのか

ところで、首都圏で6,000万円、東京23区に至っては8,000万円もする物件を一体だれが買っているのでしょうか。そもそも、どうしてこんなに値段が上がってしまったのでしょうか。

20年前の首都圏では、8~9万戸の新築マンションが供給されていました。しかし、近年の供給は3~4万戸程度で推移していて、この量を奪い合っているから価格が上昇しています。

参考:不動産総合研究所「不動産市場動向データ集 年次レポート 2020年」

とは言え、給与所得者の平均年収は「433万円 (令和2年)」です。もはや、一般的な所得者層には6,000万円もする新築マンションを買うことができません。

参考:国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」

若い世代の人口が減っているので、マイホームが欲しい人も減っています。一体だれが首都圏のマンションを買い支えているのでしょうか。

今、首都圏の高額マンションを買っている主な人は、以下のとおりです。

  • 高くても買えるパワーカップル
  • 転売目的の投資家
  • 東京に資産が欲しい資産家や経営者
  • 節税対策をしたい高齢者

このうち「パワーカップル」以外は必ずしも購入したマンションに住む必要がありません。つまり、実需ではないのです。

今後のマンション価格の推移はどうなっていくのか

今後のマンション価格の推移はどうなっていくのか

実需によらない購入によって、新築マンションの価格がつり上がりました。さて、今後の新築マンション価格の推移はどうなっていくのでしょうか。考察してみましょう。

首都圏の新築マンション市場は二極化・三極化している

すでに少しずつ、以下のようにマンションマーケットの二極化・三極化が進んでいます。今後も、しばらくこの流れが続きそうです。

  • 投資や節税で買われる高価格帯のマンション
  • 富裕層が住む高価格帯のマンション
  • 一般層が住む低・中価格帯のマンション

平均的な給与所得者層にとっては、つらい状況が続きます。都心や首都圏の新築マンションは、高すぎて手を出しづらいでしょう。築浅の中古マンションも同様です。

低・中価格帯の新築マンションは増やせない?

では、首都圏は平均的な給与所得者層がラクに買える新築マンションを増やせないのでしょうか?高すぎて手が出せないだけで、需要はありそうです。

残念ながら、原価となる以下の3つが高騰しているので難しそうです。

  • 土地代
  • 材料費
  • 人件費

投資の加熱によって、首都圏の土地代が高騰しています。世界的に、原材料の価格も上がっています。間が悪いことに円安の日本は、原材料の世界市場で買い負けています。

石油や石炭の輸入価格上昇は、発電コストの上昇を招き、鉄骨等の加工費を押し上げます。さらに、現場作業員の不足で人件費も上がっています。

現状では、建築費が下がる兆しがありません。しばらく、リーズナブルなマンションの供給増は期待できないので、価格低下も見込めないでしょう。

投資で高騰した新築マンション市場は、いずれ揺り戻す

残念ながら、東京23区の新築マンションは平均的な所得層が買える価格で売り出せそうにありません。原価の高騰で、デベロッパーはこの層をターゲットにできないのです。

首都圏の良質なマンションの購入者も、しばらく投資家と富裕層が占めそうです。とは言え、ここまで来ると、一般層が夫婦ペアローンで背伸びして急いで買うのは良策とは言えません。

高下(こうげ)するのが投資マネーであり、実需によらない高騰を続ける今の新築マンション市場は、いずれ揺り戻しが起こるでしょう。投資家勢は判断が速く、引くときは一瞬で引きます。

首都圏の居住用マンションは、中古が基本?

首都圏の居住用マンションは、中古が基本

新築マンション価格の高騰にともない、中古マンションの取引価格も上昇傾向にあります。今後はどうなっていくのでしょうか。考察してみましょう。

しばらく、中古マンションの需要は高まっていく

現在のマンション市場は、投資マネーが先導する形で高騰しています。その結果、新築マンションに手出しできない層が中古市場にきて、中古マンションの価格も上がりました。

この流れの中で、中古マンションの再利用が見直されています。中古マンションにポジティブな印象を持つ方や、新築に対する興味関心が薄れた方が、徐々に増えているのです。

国が積極的に中古市場の活性化を図っていることもあり、ライフスタイルに合わせて中古から中古へ住み替える方も増えていくでしょう。

中古マンションの供給も高まっていく

中古マンションの需要が高まる一方で、今後は供給も増える可能性が高いでしょう。国交省がおこなった調査の結果によると、世帯主の年齢の上位は以下のようになっています。

  • 60代:27.0%
  • 50代:24.3%
  • 70代:19.3%
  • 40代:18.9%

現在、中古マンションの世帯主は60歳以上の方が半数を占めます。ですから近い将来、相続ラッシュと売却ラッシュが発生するでしょう。

好立地にあり利便性が高いマンションなら、相続人が住むという選択肢があります。しかし、そうでないマンションは売却か賃貸に出すしかありません。

とは言え、賃貸に出せば管理費や修繕積立金、固定資産税等がずっとかかり続けます。管理の面倒も考慮すると、売ってしまおうと考える方のほうが多いと思われます。

ですから、需要が増える一方で供給も増え、価格だけ見ればお手頃な中古マンションも出てくるのではないでしょうか。

2022年以降、中古マンション市場はどうなるのか

今後、首都圏の平均的な所得者層の自宅マーケットは、中古がメインになっていくでしょう。そう考える理由はこれまでの考察のとおりですが、以下の要因も付け足しておきましょう。

  • 金利は低水準が続きそう
  • 今後は中古物件の方が多くなる
  • 新築マンション設備のグレードダウン
  • 食費や光熱費が上がっていく

国が長期金利を抑制しましたので、金利はしばらく上がりそうにありません。国債や預金の価値の低下から、外貨や不動産へ流れる動きが続きそうです。

参考:日銀が初の「連続指値オペ」約5280億円分の国債買い入れ

また、首都圏では新築分譲地の取得が困難になっています。さらに、原価上昇にともない新築の設備がグレードダウンしています。立地も設備も、新築より優れた中古マンションが少なくありません。

資金に着目すると、相変わらず給与水準が上がらないのに、食費や光熱費は上がっています。スタグフレーションのような状況で、背伸びして住宅ローンを借りるのは不安を感じるでしょう。

首都圏で居住用マンションが欲しい平均的な所得者層にとって、新築を買うインセンティブは低いでしょう。今後は中古がメインの選択肢になるのではないでしょうか。

中古マンション市場は二極化していく

今後は中古市場が活性化するとは言え、一律で売れやすくなるわけではありません。今よりも中古物件の評価システムが整備され、また買い手のリテラシーが上がれば、市場は二極化していくでしょう。

実際、同じ「築年数30年」の物件であっても程度はさまざまで、売れやすさが異なります。利便性が高く管理状態がよいマンションは、高いリセールバリューを維持しています。

一方、管理会社に見放され自主管理せざるを得なくなったマンションは、どんどん出口戦略を描きづらくなっています。買いが過熱気味の今が、手放すラストチャンスなのかもしれません。

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新築マンションの高騰で、立地や管理の質がよい中古物件は高額で取引されています。投資マネーが引き上げるとどうなるか分かりませんが、新築用地の不足から高需要を維持できるかもしれません。

一方、条件がよくないマンションは、買いが過熱気味の今が「売却するチャンス」と言えそうです。今後、大量に相続物件が出てくると、ますます売りづらくなるでしょう。

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