賃貸マンションやアパートでもっとも多いトラブルと言えば、騒音トラブルでしょう。あなたも「よく入居者からクレームが入るけど、改善策が分からない」とお悩みではないでしょうか?
騒音は完全に抑制できないため、トラブルをゼロにするのは難しいでしょう。しかし、防音対策の仕組みを理解しておけば、効果的に騒音を軽減して、住環境の快適性を改善できます。
本稿では、騒音に有効な防音対策5選をご紹介します。さらに、騒音の伝わり方や防音対策の種類についても解説しますので、騒音に合った対策を求めている方はぜひヒントにしてください。
目次
大がかりな工事不要!賃貸住宅の騒音に有効な騒音・防音対策5選
賃貸マンションやアパートでは、建物の構造上、騒音を完全に遮断することは難しいでしょう。しかし、対策をおこなうことで、ある程度騒音を軽減できます。
さっそく、大がかりなリフォーム工事なしで実施できる《騒音・防音対策》を5つご紹介しましょう。
防音マット・防音シート
防音マットや防音シートを利用すると、床で発生した音が室外に伝わるのを抑制できます。キッズコーナーや、運動系ビデオゲームのプレイスペースに有効でしょう。
「防音マット」や「防音シート」は、防音効果のあるマットの総称です。具体的には《遮音・吸音・防振》などの性能を持つ製品があり、それぞれ効果が異なります。
- 遮音:ゴムマットや人工樹脂シートなどで、空気伝搬音を跳ね返す
- 吸音:ウレタンフォームや木質繊維板などで、空気伝搬音を吸収する
- 防振:ゴムや高密度の多孔質材などで、固体伝搬音を抑制する
防音マットや防音シートは、上述の複数の性能を組み合わせると効果が向上します。たとえば「フローリング(遮音) + 防振マット(防振) + 吸音カーペット (吸音)」といった使い方です。
なお、床材の軽量床衝撃音(スプーン等の小さなものを落とした音)に対する低減性能は、遮音等級(JIS A1440-1)が参考になります。
遮音等級は「ΔLL」値で表わされ、数字か大きいほど性能が高くなります。体感の目安をご紹介しておきましょう。
- ΔLL-3:少し気になる
- ΔLL-4:聞こえるが気にならない
- ΔLL-5:かすかに聞こえる
- ΔLL-6:ほとんど聞こえない
子どもの足音やイスを引く音などが原因の騒音トラブルでは、防音マットや防音シートが有効です。
防音カーテン
防音カーテンを利用すると、室外の騒音が室内に入ってくるのを抑制できます。周りに工場や学校などがあり、機械音や子どもの声で悩んでいる住宅に有効です。
防音カーテンは、室内で発生した音が室外に漏れるのを抑制したり、反響を低減したりすることもできます。防音効果と一緒に、断熱効果や遮光効果を高められる製品も少なくありません。
一方、防音カーテンには以下のデメリットがあります。
- 物理的に重い
- 見た目も重い
詳しくは後述しますが、遮音性の高い材料は密度が高く、重くなる傾向があります。
また遮光性も高く、光を通さないため、見た目の軽やかさが損なわれます。隙間を減らすため、ドレープを付けないフラットタイプが多く、それも見た目を重くする要因になっています。
なお、防音カーテンは、窓枠より大きく、長いほうが効果を発揮します。カーテンレールは、窓枠上の壁付けより天井付け、あるいはカーテンボックス付けのほうがよいでしょう。
吸音レースカーテンや吸音カーテンと組み合わせると、さらに効果的です。
壁用防音パネル
壁用防音パネルには、吸音パネルや遮音パネル、あるいは吸音と遮音を組み合わせたパネルがあります。質量が重く密度が高い材質のほうが、より高い遮音性能を発揮します。
壁用防音パネルを利用すると、室外からの騒音を軽減したり、室内の音が室外に漏れるのを抑制したりできます。たとえば、シアタールームやゲーミングルームで重宝するでしょう。
壁用防音パネルのデメリットは、インテリア性の高い商品が少ないところでしょうか。遮音パネルのみを使うと室内音が反響しやすくなる点も、注意が必要です。
壁用防音パネルも、遮音材や吸音材を併用することが推奨されます (たとえば、遮音シート+吸音パネル)。
防振ゴム・防振シート
防振ゴムや防振シートは、おもに振動を吸収し音の固体伝搬を防ぐために使用されます。
固体伝搬とは、壁や床などの躯体を使って音が伝わること (詳しくは後述)。ゴムが振動を吸収することで、音の伝搬を軽減します。
防振ゴムや防振シートの用途例をご紹介しましょう。
- 洗濯機の脚の下に敷く
- エアコンの室外機の下に敷く
- お部屋のカーペットの下に敷く
じつは、固体伝搬は抑制するのが非常に困難です。ですから、防振ゴムや防振シートは、わりと貴重な「固体伝搬音の防音対策」と言えます。
騒音に関する注意を喚起する
入居者に注意喚起するのも、有効な防音対策になります。生活音の騒音トラブル(可能であればトラブル内容も)が多いことや、おもな対策を紹介するとよいでしょう。
たとえば、以下のような対策をお願いすると効果的ではないでしょうか。
- 足音や話し声など、日常生活で発生する音に気を配る
- 深夜や早朝は、洗濯機や掃除機などの使用を控える
- 小さなお子さまがいる場合は、防音マットを敷く
小さなお子さまがいるファミリーには、1階や角部屋、戸建て賃貸を案内するのも有効でしょう。
- 1階のお部屋:階下への音を気にせずに済む
- 角部屋:お隣が片側だけになる
- 戸建て賃貸:子どもの足音がトラブルに発展しにくい
騒音トラブル発生時の対処法も、明確にしておくとよいでしょう。
たとえば、騒音の発生日時や内容を記録しておいていただいたり、騒音問題が発生した場合はまずは管理会社に相談していただいたりするようにお知らせしておきましょう。
騒音は2種類の方法で伝搬する
騒音対策は、まず騒音について知ることが大切です。どこからどのように発生した音なのか突き止めるだけでなく、伝搬経路も知っておきましょう。
騒音は、おもに2種類の方法(空気伝搬、固体伝搬)で伝搬します。ご紹介しておきましょう。
空気伝搬音とは
空気伝搬とは、音源から発せられた音波が空気を介して伝わる現象のことです。周囲の空気を振動させることで、他の場所に届きます。
空気伝搬音の具体例をあげてみましょう。
- 人の話し声
- テレビの音
- 音楽や楽器の音
- 車の音
- ペットの鳴き声
空気伝搬音は、壁や床、窓の防音性能を向上させることで対策できます。音を遮ったり吸収したりできる製品や建材で、音の侵入を減少させるとよいでしょう。
たとえば、こんな製品や建材ですね。
- 防音パネル
- 防音カーテン
- 防音シート
- 内窓
- 石こうボード二重張り
他にも、隣の住戸との間の壁にタンスや食器棚などの背の高い家具を置くのも効果的です。壁から少し離して家具を配置すると、振動の絶縁もできます。
固体伝搬音とは
固体伝搬とは、床や壁の衝撃が与えられたとき、振動が建物(固体)を介して伝わる現象のことです。伝搬した先で空気中に放出される音が、固体伝搬音です。
固体伝搬音は物体の内部を通じて伝わるため、空気伝搬音よりも減衰が少なく、より遠くまで届きます。具体例をあげてみましょう。
- 上階の足音
- ドアの開閉音
- 家具を引きずる音
- 洗濯機の振動音
- 配管を通じて伝わる給排水音
- エレベーターの駆動音
一般的に、空気伝搬音より固体伝搬音のほうが防音対策は難しくなります。単純に壁や床を厚くするだけでは、音の伝搬を止められないのです。
RC造の建物は木造よりも遮音性が高いと言われますが、それは空気伝搬音の話です。固体伝搬音は、RC造でも伝わってしまいます。
固体伝搬を抑制するには、たとえば、界壁の中にある間柱を千鳥配置にするなどの《振動絶縁対策》が必要になります。もしくは、振動そのものを抑えることが重要です。
以下は、床に対する衝撃を吸収して振動を抑制してくれます。
- クッション性の高いスリッパ:足音を軽減
- 防音マット・カーペット:足音を軽減
- 防振ゴム:洗濯機やエアコン室外機の下に敷く
- 家具の脚のキャップ:家具の移動音を軽減
固体伝搬が疑われる騒音は、音源の振動を軽減できないか検討してみてください。
覚えておきたい《防音・遮音・吸音》の違い
防音・遮音・吸音は、音に関する対策や技術において異なる概念です。しかし、しばしば混同されることがあります。
ここからは、防音・遮音・吸音の違いを解説します。3つの違いを理解すれば、騒音に対して適切な防音対策を取りやすくなりますよ。
防音とは
防音とは、騒音を防止することを指します。ただし、特定の手段を指すのではなく、総称として用いられる言葉です。—— では、防音はどのような手段を使って達成するのでしょうか?
防音は、音が外部から内部に侵入したり、内部の音が外部に漏れたりするのを防ぐために、以下の手段を組み合わせて使います。
- 遮音: 遮音素材により空気伝搬音を跳ね返すこと
- 吸音: 吸音素材により音を吸収すること
防音対策は、遮音が基本になります。さらに吸音を組み合わせることで、効果的な防音対策ができるでしょう。
なお、音は音源から離れるにつれて減少します。なぜなら、音波は四方八方に飛散するため、距離が離れると音圧が低下するからです。
この現象を《距離減衰》と言います。音源と受音点の距離を離し距離減衰を利用することも、騒音対策になります。
遮音とは
音を跳ね返す(反射)防音対策を「遮音」と言います。ただし、全部の音を跳ね返せるわけではなく、一部は壁などを通り抜けて反対側へ抜けてしまいます (透過)。
また、遮音効果は使用する材料の質量に依存します。一般的に、密度が高く重い素材ほど音を通しにくくなります。
遮音対策の具体例をあげてみましょう。
- 二重窓
- 遮音シート
- 遮音カーテン
- 壁の石こうボードを追加
なお、遮音性を高くしすぎると、室内で発生した音が反響してしまいます。ですから、遮音対策をおこなう際には、吸音対策と組み合わせることが重要です。
吸音とは
音を吸収する防音対策を「吸音」と言います。ただし、全部の音を吸収できるわけではなく、一部は反射(遮音)し、一部は透過してしまいます。
音波は、多孔質の材料(畳や断熱材など)に当たると、そのエネルギーが熱エネルギーに変換されます。つまり、音が小さくなります (減衰)。この仕組みを利用しているのが、吸音材です。
吸音材の具体例をあげてみましょう。
- 吸音マット
- 吸音パネル
- 吸音カーテン
外部の騒音を防ぎたい場合は遮音が重要ですが、室内の音の反響を抑えたい場合は吸音が効果的です。
なお、もっとも効果的な防音対策は、吸音と遮音、そして防振を組み合わせることです。音の発生源と伝わり方を特定して、効果的な組み合わせを検討するとよいでしょう。
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