近年、人間関係が希薄化したこともあり、つながりを求める方のあいだでシェアハウスへの関心が高まっています。《所有》より《体験》に重きを置く人が増えたことも、その一因でしょう。
そんな中、《コリビング》と呼ばれる居住形態も登場しました。賃貸住宅のオーナーさまや管理者さまの中には、新たな集客手法として興味を持たれている方が多いのではないでしょうか?
本稿では、コリビングとシェアハウスを管理する際のリスクや注意点をご紹介します。コリビングやシェアハウスの運営に興味をお持ちの方は、ぜひ最後までチェックしてください。
目次
入居者管理のリスクや注意点
近年、コリビング(Co-Living)が注目されています。
コリビングとは、以下のふたつの特徴を持つ住居形態を指す言葉で、意訳すると「共同生活」くらいの意味になるでしょうか。
- シェアハウス
- コワーキングスペース
コリビングは、シェアハウスの役割に加えて、職場としての役割も兼ねています。職住がシームレスにつながる、テレワーク時代に合ったライフスタイルを実現してくれます。
ではさっそく、コリビングとシェアハウスを管理する際のリスクや注意点をご紹介しましょう。まずは、入居者管理のリスクや注意点からお伝えします。
- 頻繁に入居者が入れ替わる恐れがある
- コミュニティー管理が必要
- 共用スペース等のセキュリティ対策が必要
順番に詳しく解説していきましょう。
頻繁に入居者が入れ替わる恐れがある
コリビングやシェアハウスは、一般的な賃貸住宅と比較すると、入居者の入れ替わりが起こりやすいでしょう。入居者の流動性が高くなる理由は、以下が考えられます。
- 契約形態が柔軟で、退去しやすい
- 試行的な利用がしやすい
- 若い世代や独身者がおもな利用者
多くのコリビングやシェアハウスでは、通常の賃貸契約よりも柔軟な契約形態を提供しています。最短1ヶ月からの契約が可能な場合もあり、入居や退去のハードルが低くなっています。
このような契約スタイルでは、必然的に「試してみたい」という理由で入居する方が増えます。そのような方々は「合わない」あるいは「馴染めない」と感じると早々に退去されます。
また、コリビングやシェアハウスは若い世代や独身の利用者が多く、就職・転職・結婚などのライフイベントによる転居が多くなりがちです。
このような入居者の流動性に対して、コリビングやシェアハウスの管理者は、以下のような対策を講じることができます。
- サービスの充実
- コミュニティー形成の強化
- 長期滞在者へのインセンティブ
長期滞在を促すには、便利なサービスや快適な生活環境を提供して、入居者の満足度を高めることが大切です。イベントや交流の場を設けることも、入居者同士の絆を深め、長期滞在につながります。
長期契約者に対する割引や特典を設けることも、長期滞在を促進するでしょう。
コミュニティー管理が必要
コリビングやシェアハウスの運営において、コミュニティー管理は非常に重要です。活発なコミュニティーは物件の付加価値となり、退去率の低下や新規入居者の獲得に寄与します。
コミュニティー管理における注意点をあげてみましょう。
- 入居者の満足度を高め、長期滞在につなげる
- 適切なコミュニティー管理により、入居者間のトラブルを未然に防ぐ
- 自主的な管理を促進し、運営者の負担を軽減する
では、上述のような管理を促進するには、どうすればいいのでしょうか?
効果的なコミュニティーの管理方法をご紹介します。
- ルールの明確化
- 共用スペースの充実
- 定期的なイベントの開催
- オンラインコミュニティーの活用
- コミュニティーマネージャーを配置
まず、適切なルールを設け、入居時に明確に伝えることが大切です。ルールは、定期的に見直し更新しましょう。
カフェや図書室など、多様な共用スペースを提供し、入居者の交流を促進するとよいでしょう。定期的にイベントを開催すると、さらに入居者の交流機会を増やせます。
オフラインだけでなく、SNSやアプリを活用したオンラインコミュニティーも有用です。お知らせや規約を閲覧してもらう方法としても、有効でしょう。
コミュニティーのリーダーやマネージャーがいると、管理が円滑に進みやすくなるでしょう。入居者同士や、入居者と地域をつなぐ役割としても、活躍します。
共用スペース等のセキュリティ対策が必要
セキュリティ対策は、コリビングやシェアハウスの入居者の安全と、満足度向上につながる大切な要素です。
とりわけコリビングでは、以下の理由からセキュリティリスクが高まります。
- 多くの人が共用スペースを利用する
- 外部からの不審者の侵入を防ぐ必要がある
- 電子情報や個人の所有物を守る必要がある
では、どのようにしてセキュリティを維持すればいいのでしょうか?
具体的なセキュリティ対策をあげてみましょう。
- ルールの策定と周知徹底
- 入居者の身元確認の徹底
- 玄関のセキュリティ強化
- スマートロックの導入
- 防犯カメラの設置
- 定期的な巡回
- 緊急時の対応体制整備
まず、セキュリティに関するルールを策定して、入居者に周知徹底することが大切です。厳格な入居審査も、有効です。適切な審査基準を設け、基準にもとづいた入居審査をおこなうことが望ましいでしょう。
オートロックや、防犯性の高い鍵の使用も有効です。スマートロックを導入すると、個室や共用スペースへのアクセス管理が容易になります。入居者の入れ替わりにも、柔軟に対応できるでしょう。
防犯カメラを玄関やエントランス、共用スペースなどの要所に設置するのも効果的です。プライバシーに配慮しつつ、不審者の侵入を抑止しましょう。
管理スタッフによる定期的な巡回で、異常の早期発見に努めることも大切です。24時間対応可能な連絡体制を構築できると、さらに安心でしょう。
設備・メンテナンスのリスクや注意点
つづいて、設備・メンテナンスのリスクや注意点をご紹介しましょう。
- 共用設備の管理が必要
- 交換や修繕の頻度が多くなる恐れがある
順番に、詳しく解説します。
共用設備の管理が必要
コリビングやシェアハウスにおいて《共用設備の適切な管理》は、入居者の生活の質に影響を与え、満足度を左右する重要な要素です。
共用設備の管理のポイントをあげてみましょう。
- 共用の空間や設備を、気持ちよく使える状態に維持する
- 適切な管理により設備の劣化を防ぎ、長期的な価値を維持する
- 設備の不具合はトラブルの原因となるため、予防的な保全が重要
- 計画的な管理により、突発的な高額修理を避ける
- 不具合の発生に備え、迅速に復旧できる体制を構築しておく
では、上述のようなポイントを実現するには、どうすればいいでしょうか?
具体的な管理方法をあげてみます。
- ルールの設定と周知
- 定期的な点検と清掃
- 設備の修理・交換
- 消耗品の管理
- 入居者からの要望・苦情対応
- 専門業者と連携して対応
共用設備の管理においても、使用ルールを明確にし、入居者に周知徹底することが大切です。
共用部分や共用設備を定期的に点検・清掃することも、重要です。破損・劣化を発見したら、適時修理、または交換しましょう。消耗品の補充も、忘れないようにご注意ください。
修繕や改修に備え、日頃から専門業者と連携しておくことも大切です。入居者から設備に関する要望や苦情が入った際、迅速に対応できる体制を整えておきましょう。
交換や修繕の頻度が多くなる恐れがある
コリビングやシェアハウスでは、一般的な賃貸住宅と比較して共用設備の交換や修繕の頻度が多くなる傾向があります。理由は、以下のとおりです。
- 多様な共用設備が設置されている
- 共用設備の使用頻度が高くなる
- 責任の所在が不明確になりがち
コリビングやシェアハウスには、共用のキッチンや冷蔵庫などのさまざまな設備があるため、全体的に修繕や交換の機会が増えます。
また、多くの入居者が共用設備を頻繁に使用するため、劣化や故障のリスクも高まります。誰が故障の原因をつくったのか特定しにくく、適切な対応が遅れる可能性もあるでしょう。
このような問題の対策としては、以下が考えられます。
- 使用ルールの明確化
- 定期的な点検をおこなう
- 耐久性の高い設備を選択する
- 修繕費用を積み立てておく
設備の使用方法においても、適切なルールを入居者に周知し、不必要な劣化を防ぐ努力が必要です。定期的に点検をおこない、早期に問題を発見・対処することも重要でしょう。
耐久性の高い設備を選択するのも、ひとつの方法です。初期投資は高くなりますが、長期的にはコスト削減につながる可能性があります。
また、予期せぬ修繕や交換に備えて、月々の賃料収入から一定額を積み立てることも必要でしょう。
収益性に関するリスクや注意点
最後に、収益性に関するリスクや注意点をご紹介します。
- 運営コストが増加する可能性がある
- 入居者の流動性が高く、収益が不安定になる恐れがある
順番に、詳しく解説していきましょう。
運営コストが増加する可能性がある
コリビングやシェアハウスでは、一般的な賃貸物件と比較して運営コストが増加する可能性が高いでしょう。
たとえば、こんな運営コストがかかります。
設備の維持管理費 | キッチンなどの共用設備が多く、これらの維持管理、あるいは修理・交換にコストがかかる。 |
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消耗品の補充費用 | 共用スペースで使用する消耗品(洗剤、トイレットペーパーなど)の補充が必要。 |
水道光熱費 | 一般的な賃貸と異なり、オーナーが水道光熱費を一括で支払うケースが多い。 |
メンテナンス費用 | 共用スペースの清掃や日常的なメンテナンスにコストがかかる。 |
イベント運営費用 | コミュニティー形成のためのイベント開催にコストがかかる場合がある。 |
管理人件費 | 複雑な管理業務に対応するため、専門的な管理スタッフが必要になる可能性がある。 |
トラブル対応費用 | 入居者同士の接触機会が多く、入居者間のトラブルが増えがち。対応や調整に時間と労力がかかる。 |
コリビングやシェアハウスの運営では、初期費用だけでなく、ランニングコストも考慮に入れた収支計画を立てることが重要です。適切な賃料設定や効率的な運営管理が求められます。
入居者の流動性が高く、収益が変動しやすい可能性がある
コリビングやシェアハウスは、一般的な賃貸住宅より入居者の流動性が高くなる傾向があり、それにともない収益が変動しやすい可能性があります。
先述のとおり、コリビングやシェアハウスのおもな利用者層は若年層です。よって、ライフスタイル(就職・転職・結婚など)の変化にともなう転居が多くなるのです。
そのため、コリビングやシェアハウスでは、短期の滞在を前提とした料金プランを設けているケースが珍しくありません。
ただし、コリビングやシェアハウスが持つこの特徴には両面性があり、以下のようなメリットもあります。
- 多様な需要に対応できる
- 柔軟な料金設定で、収益性を高められる
- コミュニティー形成により長期滞在を促進できる
コリビングやシェアハウスは、その特徴により《部分的に共同生活を送りたい方》のニーズに応えられます。そのため、一般的な賃貸住宅では対応できない顧客層をキャッチできます。
また、短期滞在を希望する方に対応できる料金設定を設けることで、収益性を高められる可能性があります。良好なコミュニティーを形成できれば、入居者の定着率も向上するでしょう。
多様な需要に応えられる柔軟性を生かし、効果的なマーケティングと質の高いサービス提供をおこなうことが、成功の鍵となります。
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