これまで会社勤めをしてきた方が親御さまからアパートを相続したら、きっと活用方法に悩むでしょう。建物が古ければなおさらで、修繕や維持費のことが気になるのではないでしょうか?
経営を続けるべきか、それとも思い切って売却してしまうべきか ―― 。会社勤めを続けたい、あるいは家族に負担をかけたくないと考えると、どうしても慎重にならざるを得ないでしょう。
そんな方のために、本稿では相続アパートの活用方法や、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。相続したアパートの活用方法を探されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
親から古いアパートを相続したときの活用方法と選択基準
相続したアパートの活用方法は、大きく分けると以下のふたつに分けられます。
- 経営を継続しない(売却)
- 経営を継続する
アパートの経営を受け継ぐのも「活用」ですが、売却して現金化するのも「活用」のひとつの形でしょう。流動性の高い資金に変えることで、アパートとは違った投資に振り向けられます。
一方、せっかく家賃収入が手に入るのですから、経営の継続も有力な選択肢と言えます。では「経営を継続する」または「継続しない」は、どのような基準で決めればいいのでしょうか?
結論を言えば、ケースバイケースであり、さまざまな事情を考慮して個別に判断すべきです。ここでは、目安になりそうな基準をご紹介しましょう。
経営を継続せずに売却する場合
親御さまからアパートを相続した場合、必ずしも経営を継続する必要はありません。状況によっては、売却が最適な選択肢となるケースもあります。
たとえば、以下のような状況の方であれば、「経営の継続」より「売却」を第一選択肢として検討されてもよいのではないでしょうか?
- 相続人に不動産経営の知識や興味がない
- 遠方に住んでいる、あるいは多忙で管理が難しい
- 建物の老朽化が進んでいる
- 立地や周辺環境が悪い
それぞれ、もう少し補足説明をしておきましょう。
▼相続人に不動産経営の知識や興味がない
アパートの経営には、手間や専門知識が必要です。相続人にそのようなリソースがなく、信頼できる管理会社も見つからない場合は、無理に経営を続ける必要はないでしょう。
相続人にアパート経営の興味がない場合も、同様です。興味がないところに、リソースを割き続けるのは困難ではないでしょうか。早晩経営に行き詰まるリスクも高まります。
▼遠方に住んでいる、あるいは多忙で管理が難しい
相続人が相続したアパートから離れた場所に住んでいたり、仕事が忙しくて管理に時間を割けなかったりする場合も、売却を視野に入れ検討するほうがいいかもしれません。
管理を管理会社に任せる方法もあります。しかし、管理を他人に丸投げしていると、オーナーは管理状況を把握できません。トラブルにつながるリスクが高まるでしょう。
▼建物の老朽化が進んでいる
建物の老朽化が進み、大規模な修繕や建て替えが必要な場合は、多額の資金が必要になります。修繕費用と将来の収益性を比較して、投資効果が見込めない場合は、売却が有力な選択肢になります。
売却する場合は、現状のまま買い手を探すか、更地にして売却します。耐用年数を超過している場合は、買い手が見つかりにくいため、更地にすることで早く売れる可能性が高まります。
▼立地や周辺環境が悪い
「最寄り駅から遠い、商業施設が少ない、治安が悪い」など、立地や周辺環境に問題がある場合も営業を継続する難度が高いでしょう。入居者確保が難しく、空室率が高くなるリスクがあります。
アパート経営に慣れた方なら、不利な立地でも商売できるかもしれません。しかし、初めてアパートを経営される方は、安定的な収益が見込めないアパートは売却するほうが賢明かもしれません。
▼相続税の納税資金が不足している
アパートを相続すると、相続税が課税されます。アパートの価値が高い場合は、多額の相続税を支払う必要があるでしょう。
納税の原資がない場合は、アパートを売却して現金化せざるを得ないケースもあるでしょう。
経営を継続する場合
アパートを所有すれば、家賃収入が手に入ります。ですから、安易に売却せず、アパート経営に挑戦してみるのもよいでしょう。
とりわけ、以下のような状況であれば経営の継続に向いているアパートと言えます。
- アパートの立地や管理状況がよい
- 相続人に不動産経営の知識やノウハウがある
- 相続税対策としてアパート経営を続ける場合
利便性が高い (駅やバス停に近い、商業施設が充実しているなど)、あるいは建物や設備の管理状態がよく大規模な修繕の必要性が低い物件は、経営を継続しやすいでしょう。
相続人に不動産経営の経験があったり、賃貸経営に関する知識を持っていたりする場合も、スムーズに経営を引き継げます。信頼できる管理会社と提携できている場合も、経営を継続しやすいです。
また、次の相続を考慮してアパート経営を続けるのも選択肢のひとつです。現金で相続するよりもアパートを相続したほうが、相続税評価額が低くなり、相続税の節税につながる場合があります。
ただし、相続税対策はあくまで副次的なものと捉え、経営自体の採算性を重視することが大切です。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例 (小規模宅地等の特例)」
ところで、古いアパートを相続した場合、リフォームや建て替えを実施したほうがいいのでしょうか?
現状に問題がなければ、そのまま経営を続けてもいいでしょう。しかし、老朽化が見られる場合は、その程度によってリフォームや建て替えを実施するほうがよいケースもあります。
▼リフォーム・リノベーションの特徴
リフォームに決められた定義はありませんが、一般的に故障や老朽化した部分の原状回復を目指す工事を指すケースが多いでしょう。
原状回復にこだわらず、新たな価値創造を目指すような大規模な工事は、リノベーションと呼ばれます。どちらの工事でも、入居者の満足度を高め、家賃収入の維持・向上を目指せます。
リフォームやリノベーションには、以下のメリットがあります。
収入 | リフォームすることで、入居者のニーズに応えられ、空室率の改善や家賃収入のアップが期待できる。 |
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費用 | 建て替えに比べると、リフォームのほうが費用を大幅に節約できる。 |
工期 | 建て替えの工期は4~8か月程度。一方、リフォームの工期は1~5か月程度で済む。 |
一方、リフォームには以下のデメリットがあります。
- 老朽化に対する修繕は、引き続き必要
- 収益性の改善効果は限定的
部分的なリフォームをおこなっても、建物の老朽化は止められないケースが多いでしょう。近い将来、建て替え等の抜本的な解決策が必要になるかもしれません。
収益性の改善効果も、限定的です。建て替えのような大幅な改善は望みづらいでしょう。期待していた結果が得られず、投資回収できないリスクもあります。
相続した古いアパートをリフォームするのであれば、不動産や改修工事の専門家に相談しながら慎重に検討したいところです。
▼建て替えの特徴
建物の老朽化が激しい場合は、建て替えが第一選択肢になるでしょう。建て替えには、以下のメリットがあります。
収入 | 建て替えにより、入居希望者を取り込みやすくなり、空室率の改善や家賃収入のアップが期待できる。 |
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価値 | 法定耐用年数を超えているアパートは、建て替えることで再び資産価値を創造でき、売却時に有利になる。 |
費用 | 新しい建材や設備を導入することで、光熱費などのランニングコストを削減できる可能性がある。 |
一方、建て替えには以下のデメリットがあります。
- 多額の建築費用がかかる
- 建て替え中は家賃収入がゼロになる
- 入居者の立ち退き交渉が必要
アパートを建て替えるには、多額の資金が必要です。自己資金が不足している場合は金融機関からの借り入れも必要ですので、返済が負担になるリスクもあります。
また、建て替え期間中は、家賃収入がゼロになります。そのあいだの生活費と、建築費用の捻出方法を考えておく必要があるでしょう。
さらに、建て替える際は、現在の入居者に立ち退いてもらう必要があります。入居者との交渉次第では、立ち退き料の支払いが必要になるケースもあるでしょう。
建て替えの是非に迷う場合も、不動産や建て替え工事の専門家に相談されることをおすすめします。
相続したマンションを売却するメリットとデメリット
つづいて、相続したアパートを「売却する場合」と「経営する場合」の是非を、メリットとデメリットの観点から考察してみましょう。
まずは、売却のメリットとデメリットをご紹介します。
売却のメリット
相続したアパートを売却する場合、以下のメリットがあります。
- まとまった資金が手に入る
- 管理の手間や費用負担がなくなる
- 節税できる可能性がある
アパートを売却して現金化してしまえば、投資や生活資金、あるいは相続税の支払いなど、流動的に使いやすくなります。遺産分割もスムーズに進められるでしょう。
また、アパート経営は多くの手間と時間がかかりますので、売却するとこれらの負担から解放されます。アパートが古い場合は、将来的な改修や建て替えなどの心配も不要になるでしょう。
また、相続税の取得費加算の特例が適用できると、譲渡所得税を節税できる可能性があります。
ただし、あまりにも売却を急ぎすぎると、相続税の節税策(小規模宅地等の特例など)を利用できなくなる場合があります。
さらに、税制優遇を受けるにはさまざまな要件をクリアしたり、相続人全員の合意を得たりする必要があります。早めに税理士などの専門家に相談して、適切な相続の方法を検討しましょう。
売却のデメリット
相続したアパートを売却する場合、以下のデメリットがあります。
- 家賃収入が得られなくなる
- 相続人が複数だと売却が難航する可能性がある
- 安く売却せざるを得ないこともある
アパートを売却してしまうと、将来的に得られるはずだった家賃収入が得られなくなります。安定した収入源の「ある/なし」は生活設計に大きく影響しますので、慎重に検討しましょう。
また、相続人が複数いる場合の売却は、難航するケースが少なくありません。相続人全員の合意が必要になるため、誰かひとりでも反対すると売却が進まなくなる恐れがあります。
さらに、相続税の申告期限が迫っている場合は注意が必要です。納税資金を工面するために、じゅうぶんな価格交渉ができず、安値で売却せざるを得なくなるリスクもあります。
相続したアパートの経営を継続するメリットとデメリット
最後に、相続したアパートの経営を継続する場合のメリットとデメリットを考察してみましょう。
経営を継続するメリット
相続したアパートの経営を継続する場合、以下のメリットがあります。
- 収入源を増やせる
- 相続税の負担を軽減できる
アパートの入居率が高く収支がプラスであれば、毎月安定した賃料収入を得られます。老後の生活資金や年金収入の不足を補う手段として、とても心強いでしょう。
さらに、アパートを相続する場合は、土地の取得費用や建物の建築費といった多額の初期投資も不要です。新たにアパート経営を始める場合と比べて、収入を得るハードルが低いと言えます。
また、小規模宅地等の特例が適用されれば、相続税の負担を軽減できる可能性があります。ただし、いくつか要件がありますので、事前によく確認しておきましょう。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例 (小規模宅地等の特例)」
経営を継続するデメリット
相続したアパートの経営を継続する場合、以下のデメリットがあります。
- 経営赤字のリスクがある
- 管理の手間や時間がかかる
- 相続人のあいだでトラブルが生じる恐れがある
賃貸物件の収益は、入居率の変動によって大きく左右されます。空室が増えると、家賃収入が減少し、経営が赤字に転じる恐れがあります。
また、アパート経営にはさまざまな管理業務が発生します。相続人に賃貸経営の知識やノウハウがない場合は、これらの業務が大きな負担になるでしょう。
アパートを複数の相続人で共有する場合は、注意が必要です。経営方針や利益配分をめぐって意見が対立し、トラブルになるリスクがあります。
経営を続けるべきか、それとも思い切って売却してしまうべきか ―― 悩ましいですよね。どちらにも一得一失がありますので、比較検討して判断してください。
まとめ:相続したアパートはリフォームで空室解消できる
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