賃貸住宅業界は、競争が激化しています。不動産価格の高騰で持ち家の購入を断念した層が賃貸に流入したことにより、競合他社と物件の取り合いになっているのではないでしょうか?
競争の中でもしっかりと収益を上げている仲介会社は、内見からの成約率が高い傾向があります。接客をとおしてお客さまとの関係を築き、しっかり納得してもらってから申し込みを獲得しています。
本稿では、成約率アップに有効なテクニックを9つご紹介します。あなたも本稿の情報をヒントに、お客さまとの関係構築や、内見の質の向上を図ってみてはいかがでしょうか?
目次
効果的なプレゼンテーション・テクニック
まずは、内見体験の質を高めるテクニックを3つご紹介します。
内見では、物件と担当者を強く記憶してもらうこと、そして気持ちのいい体験をしてもらうことが大切です。
テクニック1:ルートを決めておく
お部屋を案内するルートを決めておきましょう。お客さまの記憶によい印象を残せるルートが、ベストです。
内見に限ったことではありませんが、印象は最初と最後が重要です。人間には、以下の3つの心理的効果が働くと言われていますので、覚えておくとよいでしょう。
初頭効果 | 最初に与えられた印象に強く影響される傾向 |
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親近効果 | 最後の印象が強く残ること |
ピーク・エンドの法則 | ある経験について、その絶頂期と終わり際を重視する法則 |
多くの物件は、リビングが見どころになるでしょう。リビングで始まりリビングで終わると、お客さまの内見体験がよくなるのではないでしょうか?
テクニック2:五感を刺激する
記憶は「意味記憶」と「エピソード記憶」に大別できるそうです。物件や担当者のことを「エピソード記憶」として頭にインプットしてもらいましょう。
意味記憶 | 一般的な知識や事実についての記憶。たとえば、住所や電話番号といった情報の記憶。 |
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エピソード記憶 | 個人的な経験や出来事に関する記憶。特定の場所や時間、感情などと結びついた記憶。 |
エピソード記憶は、そのイベントが起こったストーリーや関連する感覚情報、あるいは感情とともに記憶されます。ですから、その記憶を再体験するかのように思い出せます。
イベントが五感の情報をともなうと、エピソード記憶が強化されます。味覚を刺激するのは難しいかもしれませんが、視覚・嗅覚・聴覚・触覚を刺激できる内見を目指してみてはいかがでしょうか?
例をあげてみましょう。
視覚 | インテリアを整える。観葉植物を配置する。自然光を最大限に活用する。照明を工夫して心地よい雰囲気を作り出す。 |
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嗅覚 | 清潔感のあるさわやかな香りや、ラグジュアリーで洗練された香りなど、お部屋やターゲット顧客の属性に合わせて香りを漂わせる。 |
聴覚 | 音楽を流す。落ち着いた音楽や物件の雰囲気に合う音楽、鳥の鳴き声や水の流れる音などのネイチャーサウンドなど。 |
触覚 | 心地よい感触のアイテムを用意する。履き心地のよいスリッパや柔らかいラグ、快適なソファなど。 |
味覚 | 可能であれば、小さなお菓子や飲み物を提供するかプレゼントする。 |
内見に五感に訴えかけるアプローチを組み込むと、内見者にポジティブな記憶としてインプットしてもらえます。物件への興味や愛着を高められるでしょう。
テクニック3:ホームステージングを実施する
ホームステージングは、不動産物件の売買や賃貸で用いられる、ビジュアル・マーチャンダイジングの考え方を取り入れたマーケティング手法のひとつです。入居率アップに有用です。
具体的には、対象物件をインテリアコーディネートによってモデルルーム化します。そうすると、入居希望者が「その物件での新生活」をイメージしやすくなり、住む意欲がわくのです。
ホームステージングを実施したお部屋は、エピソード記憶として頭に定着しやすくなります。後々まで思い出しやすくなりますので、後述する「錯誤帰属」にも利用できるでしょう。
ホームステージングについては、以下で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
魅力度がアップするトーク・テクニック
つづいて、お客さまから「この人、私のこと分かってくれている」と感じてもらえるトーク・テクニックをご紹介します。
お客さまは、自分の話を聞いてくれる担当者に好感を持ちます。内見案内の担当者は、お客さまのご要望を深掘りして、潜在ニーズにアプローチしていくとよいでしょう。
テクニック4:他社の訪問歴や内見歴を確認する
お客さまからご相談をいただいたら、まずは他社の訪問歴や内見歴を確認したいところです。たとえば、こんなトークが有効です。
- 「他の会社で、どこかの物件を見学されましたか?」
- 「なぜ、その会社で、その物件の見学を申し込まれたのですか?」
- 「その会社やその物件は、どうでしたか?」
物件の内見までしているのに自社にご来店いただいたということは、他社、もしくは内見した物件に満足できていないのかもしれません。
物足りなかったことや不満だったことを聞き出せると、提案の質を上げる材料にできます。どうアピールすればいいのか、方向性が見えてくるでしょう。
テクニック5:話すより聞く、または観察する
人は、ついつい自分の伝えたいことばかり話してしまいがちですよね。接客では「話す2割、ヒアリング8割」を意識するとちょうどよいです。しっかりニーズを聞き出しましょう。
対話するときは、物件の長所はお客さまが決める、とお考えください。お客さまが求めていない長所をアピールしても、効果がありません。それは無用の長物です。
ですから、ニーズを徹底的に探って探って探って、深掘りするのです。「お客さまが本当に求めているものは何か?」その答えを探すつもりで、ヒアリングしましょう。例をあげます。
- 担当者「どのエリアがご希望ですか?」
- お客さま「◯◯エリアです」
- 担当者「どうして◯◯エリアを希望されるのですか?」
- お客さま「通勤に便利なのと、治安がいいと聞いて」
- 担当者「どちらまで通勤されているのですか?」
- お客さま「◯◯です」
- 担当者「治安が気になりますか?」
- お客さま「はい、帰りが遅いので」
- 担当者「残業ですか?大変ですね」
- お客さま「はい、そうなんです」
- 担当者「休日は、どんなふうにお過ごしですか?」
- お客さま「ついつい、朝寝坊してしまいます」
- 担当者「分かります。お昼からはお出かけになるんですか?」
- お客さま「そうですね。ポタリングが趣味なんです」
- 担当者「ポタリングですか?それ、何ですか?」
- お客さま「サイクリングみたいなものですね」
どうでしょうか?ニーズを掘れば掘るほど、どんな物件をおすすめすればいいのか具体的になりますよね。
ニーズを突き止めたら「この物件なら、◯◯まで自転車で通勤できます。コースも多彩です。セキュリティ面も万全で、土日の朝は静かです。お昼までぐっすり眠れますよ」と提案します。
ありがちな特徴ばかりですが、お客さまに合わせて積み上げることで、差別化につながります。「私のためのお部屋だ。こんなに条件がそろっているのは、他になさそう」と感じてもらいましょう。
テクニック6:付加価値を伝える
物件の案内では、お客さまに付加価値を感じてもらうことが大切です。トークで、付加価値を伝えましょう。伝えていない付加価値は、お客さまにとって存在しないのと同じです。
さて、付加価値とは何でしょうか?価値と、どう違うのでしょうか?―― 本稿では、賃貸物件の価値と付加価値の違いを以下のように考えています。
- 価値:問題なく暮らせる
- 付加価値:自分のニーズがかなう
先述のとおり、お客さまのニーズは聞いたり観察したりしないと探れません。ニーズを探求して、そのニーズのかなえ方をご提案しましょう。
例をあげてみましょう。
- お客さま「オートロック付きの物件が希望です」
- 担当者「なぜですか?」
- お客さま「ひとり暮らしで、セキュリティが心配です」
- 担当者「この物件なら、オートロックと宅配ボックスが付いています」
こんなパターンも、あるかもしれません。
- お客さま「1階に住みたいです」
- 担当者「なぜですか?」
- 顧客さま「子どもが走りまわるので、騒音トラブルが心配です」
- 担当者「それなら、こちらの戸建て賃貸もおすすめです」
そのお客さまにとっての付加価値が多く持つ物件は、そのお客さまにとって希少性が高い物件ということになります。付加価値を積み上げ希少性を高めると、差別化につながるでしょう。
悪用厳禁?心理果的を活用したテクニック
最後に、心理効果を活用したテクニックをご紹介します。
テクニック7:イエス・セット
「イエス・セット」は、ご存じの方が多いでしょう。「何度も同意していると、すぐには反論しにくくなること」ですね。クロージングの強い味方になってくれます。
たとえば、内見を始める際に、相手が簡単に同意できる質問から始めてみてはいかがでしょうか?
- 今日はいい天気ですね?
- ここの立地は便利だと思いませんか?
内見中に物件の特長を紹介して、その特長に対する肯定的なフィードバックを求めてみましょう。
- このお部屋の眺望は、素晴らしいですよね?
- 広々としたキッチンも、魅力的だと思いませんか?
テストクロージングに利用するのも、よいでしょう。
- 条件に合う物件があれば、すぐ引っ越ししたいですか?
- 広さは問題ないですか?
- この物件はイメージどおりでしたか?
「No」をもらわないように注意して「Yes」を積み上げましょう。クロージングの「ご契約なさいますか?」に対して、よい返事をいただける可能性が高まります。
「一貫性の法則」も併用できます。一貫性の法則とは、人が最後まで一貫した態度を取ろうとする傾向のことです。
たとえば、お客さまに「ご要望に合う物件があれば、すぐ引っ越ししたいですか?」と聞きます。「はい」と答えたお客さまは、条件に合う物件が見つかったとき契約する可能性が高まるでしょう。
テクニック8:錯誤帰属
錯誤帰属とは、物事の原因を本来のものとは違う原因に帰属させてしまうことです。つまり、原因の取り違えのことですね。吊り橋効果が有名ではないでしょうか?
錯誤帰属は、広範囲に応用できます。たとえば物件の案内中に、お客さまにドキドキワクワクを提供することで、その感情を担当者や物件に対する愛着であると感じてもらえるかもしれません。
具体例をあげてみましょう。ご案内する車がかわいらしい外車だったら、どうでしょうか?お客さまは意外性からワクワクされないでしょうか?その感情が、内見の記憶を美化してくれます。
先述のホームステージングは、思い出す機会を増やす効果があります。何度も思い出すと「こんなに気にしているのは、あのお部屋が気に入っているからかも」という錯誤帰属につながります。
テクニック9:黄昏(たそがれ)効果
夕暮れどきのオレンジの光は、気持ちをリラックスさせます。また、夕暮れどきは程よく疲れていますので、注意力や理性的な判断力が落ち、感情的な思考との結びつきが強くなります。
ですから、内見を夕方にスケジュールすることで、次のような効果が期待できます。
- お部屋の雰囲気の向上
- リラックスした状態で内見できる
- 成約率の向上
夕暮れの柔らかな光は、部屋を温かみのある空間に演出してくれます。リラックスした状態で物件を内見できるため、滞在時間が延びるかもしれません。
「落ち着いて内見できた、物件に長くいた」という事実は、先述の錯誤帰属で物件への愛着と判断されるでしょう。物件へのポジティブな記憶は、成約率の向上につながります。
また、理性より感情が優位になっているお客さまは、親身に対応してくれる担当者に対して「断りづらい」と感じるかもしれません。「黄昏効果」を戦略的に活用してみましょう。
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