物件写真の撮り方 – お部屋を魅力的に見せる撮影のコツとは?

物件の写真を撮るのって、本当に難しいですよね。「空室物件の魅力をどうやって引き出せばいいのだろう?」と悩んでいるオーナーさまや管理会社の担当者さまが、少なくないでしょう。

オンラインでの入居者募集が増える中、写真1枚で反響が変わることもあります。物件の魅力を高める撮影のコツを覚え、競合物件に負けないように訴求していきたいですよね。

本稿では、物件写真の撮り方失敗撮影を減らす方法、そして反響をよくするアイデアをご紹介します。これから物件の撮影に挑戦される方は、本稿を参考にチャレンジしてみてください。

目次

物件写真の撮り方1:覚えておきたい4つの基礎知識

覚えておきたい4つの基礎知識

まず、撮影前に覚えておきたい4つの基礎知識をご紹介します。お手元にデジタルカメラがあれば、実際に触って試しながらご覧ください。

スマートフォンでも大丈夫です。発売から5年以内のレンズ性能がいいスマートフォンであれば、デジタルカメラとして、じゅうぶん実用に耐えます。

1.画角:広角撮影できるカメラを用意しよう

お部屋をできるだけ広く写したいときは、広角で撮影できるカメラが必要です。カメラは、レンズによって撮影できる画角(撮影可能な範囲の角度)が変わります。

レンズの性能表を見ると「◯◯mm」と書かれています。これは「焦点距離 (レンズ中心から焦点までの距離)」を表わしていて、この距離で画角が変わるのです。

焦点距離の標準は50mm(フルサイズ換算)です。これを基準に焦点距離の短いものは「広角レンズ」、焦点距離の長いものは「望遠レンズ」と呼ばれます。

  • 焦点距離が短ければ短いほど、広い範囲を撮影できるが、画像の四隅がゆがむ
  • 焦点距離が長ければ長いほど、遠くのものを大きく撮影できるが、遠近感がなくなる

種類の異なるデジタルカメラの画角を比較するときは、「フルサイズ換算」された焦点距離で比較する必要があります。

フルサイズ換算とは「種類の異なるカメラを比較できるように、基準をそろえる計算をした結果のこと」とお考えください。「35mmフィルム換算」も同じ意味です。

ちなみに、焦点距離を変えられるズームレンズには、たとえば「24-80mm」のように表記されています。さまざまなシーンに対応できるので、とても便利です。

参考:Nikon「デジタル一眼レフカメラの基礎知識 レンズ」

スマートフォンもズーム機能を備えていますが、デジタル処理で拡大しているものと、レンズによる光学処理で拡大しているものがあります。

ズームの仕組みはさておき、たとえばiPhoneのカメラアプリであれば、倍率ボタンを長押しすると現れる分度器状のスライダーを左右にドラッグすることで焦点距離を変更できます。

まずは、お手持ちのカメラ(またはスマホ)がどの程度の画角で撮影できるのか確認しておきましょう。お部屋を撮影されるのであれば、焦点距離が30mm以下のカメラを用意したいところです。

2.露出:じゅうぶんな光量を確保しよう

光が足りないお部屋で撮影すると、暗い(露出不足)写真になってしまいます。暗い写真をあとからデジタル処理等で補正しようとしても、これがなかなか難しく、思ったほど美しく仕上がりません。

ですから、撮影する際は、照明や自然光でじゅうぶんな光量を確保することがとても大切です。光量が足りないお部屋は、別途照明(工事現場で使うような照明でもOK)を持っていくといいでしょう。

ちなみに、写真表現では「露出 (写真に取り込む光の量)」の調整が非常に重要な役割を果たします。適正な露出の範囲内で、暗めに表現するのか明るめに表現するのか、選択する必要があります。

  • 露出アンダー ⇒ 光量不足で暗くなり、被写体が写らない
  • 露出オーバー ⇒ 光量過剰で白飛びしてしまう

露出は「センサー(フィルム)感度・レンズの絞り値・シャッター速度」の組み合わせでコントロールできます。

センサー感度「ISO ◯◯」と、数値で表わす。数値が大きいほど短時間にたくさんの光を取り込めるが、画像が荒れやすくなる。
絞り値F値で表わす。絞りを開放するほどF値が大きくなり、短時間にたくさんの光を取り込めるが、被写界深度が浅くなる。
シャッター速度シャッターを開いてから閉じるまでの時間。シャッター速度を遅くすると、たくさんの光を取り込めるが、ブレやすくなる。

センサー感度・レンズの絞り値・シャッター速度は、上述のような関係になっています。そして、適正な露出範囲が決まっている以上、この3つは相関関係にあります。

たとえば、被写界深度を深くしたいとすると、シャッター速度を遅くする必要があります。室内は室外より想像以上に暗いですから、画像が荒れない程度にISO感度も上げたいでしょう。

ISO感度を上げると、シャッター速度を早くできますので、手ぶれしにくくなります。画質優先でISOを上げられない場合は、三脚あるいは予備の照明を準備する必要が出てきます。

3.構図:基本の構図を理解しておこう

写真撮影において、構図も重要です。まず悩むのが「縦?横?」ではないでしょうか。―― 結論から言うと「基本的に横」です。

横長構図で撮影した写真は、Webコンテンツで利用しやすいです。不動産ポータルサイトや会社のホームページ、ブログやWebメディアで利用したい方は、基本的に横長構図で撮影しましょう。

高さや奥行を強調したいときは、縦がいいでしょう。たとえば、こんなものの撮影は縦長構図が向いています。

  • 外観の高さを強調したいとき
  • 吹き抜け
  • 廊下や奥行のある部屋

迷ったら、両方撮影しておくとよいでしょう。何枚でも気軽に撮影できるのが、デジタルのいいところです。

また、これからご紹介する「基本の構図」を活用するだけで、それっぽい写真になります。ぜひ覚えて、積極的に活用してください。

日の丸構図

日の丸構図

被写体を真ん中に配置した構図を「日の丸構図」と言います。ひとつのものを際立たせたいときに役立つ構図で、被写体の特長をストレートに表現できます。

ただし、使い慣れていないと「おもしろ味のない構図」になりがちですので、意外と上級者向きかもしれません。ものになるまで、何度も練習してください。

洗面所の水栓や壁のスイッチプレートなど、何か一部分だけを抜き取って見せたいときにご活用ください。インパクトのある写真になりますよ。

2分割構図

2分割構図

上下または左右を均等に2分割した構図を「2分割構図」と言います。ふたつの被写体を均等に目立たせたいときや、対比したいときに有効な構図です。

たとえば、壁のクロスを貼り分けたお部屋で、基本のクロスとアクセントクロスを対比させたいときに役立つ構図です。外観写真でも、建物と風景の割り付けに使えます。

2分割構図を利用して写真を格好よく見せるコツは、水平線が傾かないようにすることです。傾くと、不安定な印象になります。

3分割構図

3分割構図

縦と横を、それぞれ3分割した構図を「3分割構図」と言います。汎用性の高い構図で、さまざまな状況で使えますので、最初にマスターしていただくとよいでしょう。

3分割構図の分割線で被写体を二分すると、面積の広いほうを際立たせられます。室内であれば、床を下側の3分の1に収め、室内を上側の3分の2に収める使い方がポピュラーでしょう。

また、3分割構図の交点に被写体を配置すると、見た目のバランスがよい写真になります。

放射線構図

放射線構図

1点から線が放射状に伸びた構図を「放射線構図」と言います。パースを書いたことがある方には、おなじみの構図ではないでしょうか。

縦に長い部屋や廊下の撮影で利用すると、奥行を強調できます。なお、放射線構図では、写真の中に必ず収束点を配置してください。

パターン構図

パターン構図

同じような形を連続的に配置した構図を「パターン構図」と言います。外観写真で窓を強調したいときや、パターンのある壁紙を撮影したいときなどに利用できます。

パターン構図を活用すると、写真にリズムやデザイン的なおもしろさが生まれます。パターンの要素だけを、大胆にクローズアップして写しましょう。

額縁構図

額縁構図

額縁に写真を入れたような構図を「額縁構図」と言います。窓からの風景がキレイなお部屋は、ぜひこの構図を活用して撮影してみましょう。

窓外の景色に露出を合わせると、室内が黒く写ります。これをうまく利用すると、四辺に枠ができたような写真が撮れますよ。

なお、複数の構図をミックスして使うことも可能です。たとえば「3分割構図+放射線構図」のように、合わせ技で使ってみてください。

参考:FUJIFILM「風景写真の撮影テクニック」

4.被写界深度:ピントの深さを意識してみよう

うまく撮影できるようになってきたら、ピント被写界深度を意識してみましょう。

被写界深度とは、ピントが合っているように見える範囲のことです。何にピントを合わせるか意識して、被写界深度を狭め、被写体の背景をぼかしてみましょう。

  • 範囲の奥行が長い場合を「被写界深度が深い」と言い、被写体のうしろもピントが合っているように見える
  • 範囲の奥行が短い場合を「被写界深度が浅い」と言い、被写体のうしろがぼけたように見える

見せたい対象物だけにピントを合わせ、背景をキレイにぼかすと、雰囲気のあるオシャレな写真になります。

背景をキレイにぼかすと雰囲気のあるオシャレな写真に

なお、被写界深度はレンズの絞り値で調整できます。レンズの絞り値が小さくなるほど被写界深度は浅くなり、大きくなるほど被写界深度は深くなります。

「広角レンズ」は絞り値の小さいものが多いので、背景をぼかしやすいでしょう。反対に「望遠レンズ」は絞り値が大きくなりがちで、背景をぼかしにくいです。

参考:Nikon「デジタル一眼レフカメラの基礎知識 被写界深度」

物件写真の撮り方2:失敗撮影を減らす3つの方法

失敗撮影を減らす3つの方法

つづいて、失敗撮影を減らす3つの方法をご紹介します。

知識として「テクニック」や「理論」を知っていても、なかなかよい写真は撮れません。失敗撮影を減らすには、実践と経験が必要です。

最初からうまく撮れる人はまれ!何度も練習しよう

なんでもそうですが、最初からうまくできる人はほぼいません。ほとんどの方が、挑戦して、何度も失敗して、そこから学び上達していくのです。不動産経営も、同じではないでしょうか?

「量質転化」という言葉があります。量をこなすことで質も上昇する、という意味です。まずは、何枚も写真を撮ってみましょう。きっと、結果がついてきます。

時間をつくって、こんなものを撮影してみてはいかがでしょうか。―― ( )内を意識して、練習してみてください。

  • 自分の部屋(どうすれば格好よく写せるのか)
  • 町中にある建造物(どの角度から撮ったら、格好よく見えるのか)
  • 風景や人物(興味のある被写体を、試行錯誤しながら撮影してみる)

物件写真の撮影は、わりと難度が高いです。ぜひ、上述の練習材料を使って、初歩的な撮影のコツをつかんでから挑戦してみてください。

かっこいい写真が撮れないときは、よい写真をいっぱい見よう

試行錯誤しながら何度も撮影すると、メキメキ腕前が上達します。しかし、一定の技能レベルまで上達すると、停滞期に入る方が少なくありません。

停滞期に入ったら、プロの写真を見てみましょう。「Instagram」や「houzz」を眺めてみるといいかもしれません。

かっこいい写真を見つけたら、どこに引かれたか考えてみてください。その際、以下のように要素を分解して考えると理由を見つけやすいでしょう。

  • 画角はどうか
  • 露出はどうか
  • 構図はどうか
  • 被写界深度はどうか

理由が判明したら、それを取り入れて、また練習してみましょう。

どうしてもうまく撮れないときは、プロに頼もう

「なかなかうまくならない」「練習する時間もない」とお嘆きの方は、思い切ってプロに頼むとよいでしょう。

プロのカメラマンなら、すてきな写真を撮ってくれるだけでなく、デジタル処理で画角や露出の調整もしてくれます。撮影の進め方や手持ちの機材を見せてもらうと、勉強になるでしょう。

昨今、フリーランスのマッチングサービスを利用すると、わりと安価に依頼できます。自分で撮れるようになるまで「販促費、勉強代」と割り切ってプロを活用してみるのも、ひとつの方法でしょう。

物件写真の撮り方3:反響をよくするための3つのアイデア

反響をよくするための3つのアイデア

最後に、反響をよくするための3つのアイデアをご紹介します。

物件の特長を際立たせよう

昨今、写真やVRに力を入れている物件情報が増えてきました。ですから、ただの写真や動画ではなく、訴求力のある写真や動画を掲載しないと差別化できなくなっています。

ここで大事なのは「だれに、何を見てもらうか」の分析です。顧客は誰なのか?お部屋に対してどんな要望を持っているのか?妥協してもらえそうなところはどこか?―― と考える必要があります。

物件の特長(よいところ)から逆算してもいいでしょう。管理する物件の特長はどこか?その特長を気に入ってくれる人はどんな人か?――と考えてみるのです。

特長や顧客を明確にしてから、それに合う写真を用意しましょう。おのずと、掲載する媒体も決まってくるはずです。物件の訴求ポイントと、訴求する相手をしっかり考えてみてください。

そこでの生活を想像させよう

アメリカのコールドウエルバンカー社がおこなった調査によると、ホームステージングを実施した物件は、実施していない物件に比べて以下の結果が出たそうです。

  • 売却期間が半分になった
  • 希望価格より6%以上高く売れた

ホームステージングとは、対象物件をインテリアコーディネートによってモデルルーム化する手法のことです。

そうすることで、購入希望者が「その物件での新生活」をイメージしやすくなり、買いたい意欲がわくのです。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

ホームステージングとは? – 費用相場や導入のメリット・デメリット

これは、写真撮影にも同じことが言えます。写真から「その物件での新生活」をイメージできると、その物件を借りたい意欲がわきます。

効果測定をして試行錯誤しよう

昨今では、デジタル媒体に写真を掲載して入居者を募集するケースが多いでしょう。デジタルの長所は「効果測定がしやすい」ことです。この長所を活用しましょう。

たとえば、以下の着眼点を持って、効果測定をおこなってみてください。

  • 閲覧数が多いのは、どんな写真か
  • クリック数が多いのは、どんな写真か
  • 問い合わせにつながったのは、どんな写真か

効果測定をおこなうと、感覚ではなく、実績から「よい写真の特徴」が分かります。継続して分析することで、市況やトレンドの変化にも気づきやすくなるでしょう。

昨今、賃貸住宅を探しているほとんどの方が、インターネットで情報を収集しています。ですから、インターネットに掲載した写真しだいで反響が変わるケースも珍しくありません。

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