「物件の魅力はしっかり伝えているのに、なぜか成約に結びつかない」「この物件いいな、と思わせるトークがうまくできない」そんな悩みを抱えていませんか?
不動産仲介の営業では《お客さまのニーズを把握する》ことと《ニーズに応じたクロージング》が必要です。じつは、ちょっとした心構えを持ってトークに臨めば、その両方を実現できます。
本稿では、買主の本音を引き出し、購買意欲を高めるトーク術をご紹介します。営業トークに自信がつき、明日からの接客が楽しみになれば幸いです。
目次
心構え1:コミュニケーションを深化させることに集中する

不動産仲介に限らず、営業トークでは《顧客とのコミュニケーションの深化》がとても重要です。目の前のお客さまのニーズを深く知ることが求められます。
お客さまのニーズを徹底的に理解して初めて、お客さまの役に立つ提案ができます。では、お客さまのニーズを深く理解するにはどうすればいいのでしょうか?
お客さま目線を徹底する(信頼関係を築く)
不動産仲介の営業では、お客さま目線を徹底し、信頼関係を築くことが非常に大切ですよね。
では、なぜ「お客さま目線」が大切なのでしょうか?
▼成果を出す営業担当者は「お客さま目線」で提案している
結果を出す営業担当者は、営業を「物を売る仕事」と考えていません。「困っている人をサポートする仕事」「問題解決をお手伝いする仕事」と認識しています。
ですから「お客さまが何に困っているのか?」「何が問題なのか?」を知ろうとします。そして、自分が売りたいものではなく、お客さまの要望やニーズに合うものを提案しています。
つまり、結果を出す営業担当者は「お客さま目線」に立って考え、「お客さま目線」の提案ができているのです。
▼お客さまの立場に立つと言動が変わる
お客さまのお困りごとを知ろうとすると、言動が変わります。自分の意見を言うより、お客さまの話を聞こうとするようになります。
物件の説明をする際にも「お客さま」が主語になります。たとえば「この物件は、高気密高断熱です」だけで終わらず「お客さまは、冷暖房費を節約していただけます」まで伝えられるでしょう。
もしもあなたが「営業は物を売る仕事」と考えているなら、マインドセットを「一緒に問題を解決する仕事」に変えてみてください。視座を「お客さま目線」にグッと近づけられるはずです。
ヒアリングを徹底する(ニーズの本質を捉える)
不動産売買仲介に限らず、なかなか成約に結びつかない原因の多くは、最初の営業トークにあります。以下ができていないので、その後のスムーズな購入決定につながらないのです。
- お客さまのニーズを確かめ、必要な情報を確実に聞き出す
- お客さまのニーズの本質(潜在的ニーズ)をくみ取る
お客さまのニーズがわかれば、的を射た提案ができます。顧客目線で考え、潜在的ニーズまでくみ取れると、競合より深い提案ができるでしょう (詳しくは後述)。
反対に、ニーズを理解できていないと、お客さまから「提案内容がズレてるな」と思われてしまいます。遅かれ早かれ、お客さまと連絡が取れなくなるでしょう。
▼ニーズを確かめるには?
ニーズを確かめるには「なぜ購入しようと思ったのか」からしっかり確認する必要があります。
さらに「それはなぜですか?」「と言うと、どういうことですか?」などの合いの手を巧みに使い、潜在的なニーズを理解するヒントをもらいましょう。
▼ニーズを確認できていないとお客さまと一緒に問題解決ができない
潜在的なニーズまで理解できると、ご提案の内容が変わります。ご予算を確認するシーンで考えてみましょう。
ニーズを理解せずにご予算を聞くと、お客さまを失望させるトークをしかねません。例をあげてみます。
「そのご予算では、ご希望のエリアは厳しいです」
ニーズを聞いていると、ピントの合った具体的な提案ができます。たとえば「予算重視で、エリアの優先順位が低い」とわかっている場合はこんな感じです。
「そのご予算でしたら、××エリアでご要望の◯◯がかなう物件を購入できると思いますが、ご興味ありますか?」
一方「エリアの優先順位が高い」とわかっている場合は、こうなります。
「××エリアでご要望に合う物件を購入するには、あと◯◯万円ほどご予算を上げていただく必要がありそうですが、可能でしょうか?」
この提案が逆になると、お客さまは失望します。ですから、ヒアリングを徹底することが大切なのです。
伝える情報は取捨選択する
伝える情報は取捨選択し、本質的な情報に絞ることが大切です。ここができていないと「話が長い」「結局、何が言いたいのかわからない」と思われ、信頼の獲得どころか逆効果になりかねません。
不動産の購入検討は、非常にエネルギーを使います。ですから、まだ必要ではない情報を伝えられても脳が興味を示さないのです。今この瞬間に必要な情報だけを、簡潔に伝えるとよいでしょう。
▼話したいことではなく、お客さまにとって必要な情報を伝える
話したいことではなく、お客さまが今必要としている情報を伝えることが大切です。お客さまの言動から「お客さまにとって必要な情報」を探し出しましょう。
たとえば以下のような感じで、内見が始まる前から準備していた知識を次々と披露しても、お客さまを疲労させるだけです。
- 「この建物は免震構造で……」
- 「床材は天然無垢材で……」
- 「オーナーは転勤で手放すんですが……」
お客さまにとって興味のある話題でなければ、最初はうなずいてくれていても、途中から無表情になること必至です。
言葉だけでなく態度や状況までしっかりお客さまを観察すれば、お客さまが知りたい情報をキャッチできます。たとえば、小さなお子さま連れなら、こんな話ができるかもしれません。
「朝7時半から開いてる保育園が、徒歩5分のところにあります。ゆとりを持ってご出勤していただけるのではないでしょうか」
「お子さまは◯◯小学校に通われるんですよね? じつは、ここからの通学路は車の通りが少なくて、地元の方も安心できるルートって言ってるんですよ」
お客さまのライフスタイルを想像して、必要な情報だけを選び、的確に届けましょう。そうすれば、短いやり取りであっても信頼や安心が生まれます。
▼よもやま話(雑談)は注意が必要
よもやま話(雑談)は、アイスブレイクや親近感の醸成に有効です。しかし、無駄話や単なる迎合にならないように注意が必要です。
あくまで《お客さまの問題解決をお手伝いするのに必要な範囲》にとどめておくべきでしょう。よもやま話こそ、量より質が大事です。
心構え2:顧客心理を理解して、ニーズに対応する

営業トークの質を向上する際、トークスクリプト(台本)づくりに専念しがちです。たしかに、トークスクリプトは大切ですが、お客さまニーズの理解がなければ無用の長物になりかねません。
営業の基本は「お客さまのニーズを理解して、そのニーズに対応する」ことです。その過程があってこそ、トークスクリプトや、それを使ったロールプレイングが生きてくるのです。
潜在的なニーズを発掘する(顧客心理の理解)
じつは、お客さまの欲求にはいくつかの段階があります。お客さまが自覚している《顕在的なニーズ》だけでなく、深層心理にある《潜在的なニーズ》を探り出すことが大切です。
潜在的なニーズを発掘できれば、それが他の営業と差をつける《決め手》になります。よりお客さまに合った提案がおこなえるため、成約率を向上できるでしょう。
▼お客さまの欲求の種類
お客さまの欲求の種類を表にしてご紹介します。
欲求の種類 | 説明 | 例 |
---|---|---|
ニーズ | 解決したい問題 | ゆっくり出勤できるところに家が欲しい |
ウォンツ | 問題を解決できる物件 | 駅まで徒歩10分以内のマンション |
潜在ニーズ | 言語化できていない問題 | ゆっくり朝食を取りながら子どもと話したい |
インサイト | 本人も気づいていない問題 | 仕事帰りが遅く親子の時間が取れていない |
どうでしょうか。お客さまの潜在ニーズ、あるいはもっと深いところにあるインサイトを理解できていたら、お客さまにできる提案が変わってくるのではないでしょうか?
多くのお客さまは、自分の希望を表面的な条件で語ります。しかし、その条件は顕在ニーズであり、その奥には本人すら言語化できていない「潜在ニーズ」が隠れています。
お客さまも、営業担当者との対話を通じて「自分が本当に大切にしたいことって、こっちかもしれない」と心の整理が進むことで、条件の優先順位が自然と変わってくることがあります。
▼潜在ニーズを発掘するには?
潜在ニーズを発掘するには「なぜ」を繰り返す質問が有効です。たとえば、お客さまがこう言ったとします。
「駅から近い家がいいです」
このまま「はい、駅近ですね」と条件どおりに物件を紹介するのは、表面的な顕在ニーズだけに対応している状態です。
ここで営業担当者が「なぜ、駅から近いほうがいいとお考えなのですか?」と尋ねると、お客さまはこう返してくるかもしれません。
「朝が忙しいので、通勤を少しでも楽にしたくて……」
ここでさらに「通勤が楽になることで、どんなことが変わりそうですか?」と聞くと、こんなふうに本音が出てくる可能性があります。
「朝の時間に余裕ができれば、子どもとゆっくり朝食がとれるんですよね」
ここまでくると、本当にかなえたいことは「駅近」ではなく「子どもとの朝の時間」だとわかります。つまり「駅近」は手段であり、本当の願望は「子どもとのコミュニケーションの時間」なのです。
それなら、駅近だけでなく、週末に親子がお庭でBBQできる家も選択肢になるかもしれません。お客さまの価値観やライフスタイルまで理解できていたら、もっといろいろな提案ができるでしょう。
クロージングを意識する(ニーズへの適応)
営業トークにおいて「クロージングを意識する=ニーズへの適応を意識する」ことは非常に大切です。
クロージングは、最終的な成約につながる重要なステップです。営業活動全体がクロージングを成功させるためにおこなわれる、と言っても過言ではありません。
とは言え、不動産のような高額商品では、いきなり契約までいくのは難しいケースも多いでしょう。途中に踏みやすいステップを用意して、少しずつお客さまの問題を解決していくアプローチが有効です。
まずは、クロージングの種類を確認しておきましょう。足りないものがあれば、増やして準備しておくことが大切です。
▼メルマガ登録・LINE登録
メルマガ登録やLINE登録は、情報収集フェーズのお客さまにむいています。情報提供を通じて、接点を継続できます。
たとえば、こんなトークが有効です。
「新着物件情報や価格変更情報をいち早くお届けしますので、よろしければLINE登録されませんか?」
情報収集フェーズのお客さまには、押しつけず、ベネフィットを提示するのがポイントです。
▼資料送付・シミュレーション提供
資料送付やシミュレーション提供は、検討を始めたばかりのお客さまにむいています。お客さまの「比較・検討の材料」をご提供しながら、関係を深めることができます。
たとえば、こんなトークが有効です。
「物件の詳細資料と、月々の支払いシミュレーションもお送りできますが、いかがですか?」
このようなトークでは、具体的にどんな資料が手に入るかを明示することが大切です。
▼商談アポイント取得
商談アポイントは、前向きに検討し始めた段階のお客さまにむいています。不動産売買では、購入ステップへの心理的準備を整えるアポが有効でしょう。
トーク例をご紹介します。
「住宅ローンの事前審査を通しておくと、買いたいときに買える状態になります。事前審査を済ませておきませんか?」
事前審査を敬遠されるお客さまが多いですが、「申込み=買う」ではないことや事前審査のメリットを伝えると、心理的ハードルを下げられるでしょう。
内見のお誘いなど、行動に移してもらうことで購入意欲を高めてもらうアポも有効です。
▼契約を取る
お客さまがマイホームを探している以上、お客さまのニーズに合う物件をご提案して、契約していただくことが重要なステップになります。
契約をおすすめするトークは、感情的に購入に傾いているお客さまに有効です。《背中を押してほしいお客さま》の背中をそっと押すトークを心がけましょう。いくつか、例をご紹介します。
たとえば比較検討中のお客さまなら、希望条件に合っていることを再確認して安心していただき、おすすめの理由を伝える形で話すことが大切です。
「〇〇さまがおっしゃっていた陽当たりのよさと通勤のしやすさ、この物件でバランスよく両立できていると思います。ご希望条件がこれだけ満たされている物件はなかなか出ませんので、このタイミングでご決断されるのはよい選択かと思います」
お客さまがローンや価格などに不安を抱えているようなら、感情に共感して不安を肯定するトークや、決断する勇気を引き出すようなトークを心がけましょう。
「大きな買い物ですから、不安になって当然です。ただ、ご夫婦でたくさん検討されて、ここまで絞り込んでこられたのは、やはりここが合っているという証拠ではないでしょうか?あとは、一歩踏み出すかどうかだけだと思います」
冷静・論理タイプで、決め手となる材料を求めているお客さまなら、データ・相場・比較など客観的な材料を提示するトークや、買わない場合のリスクに軽く触れて決断を促すトークが役立ちます。
「仮に今回の物件を逃した場合、同じような立地・条件のものが出るには数ヶ月かかる可能性があります。相場も上がり傾向ですので、今動かないことはリスクになる恐れがあります。この条件でこの価格は、今だけの可能性が高いです」
お客さまの段階に応じた適切なクロージングを用意して、トークを活用しながら問題解決を進めれば、自然と最後には契約までたどり着けるでしょう。
電話対応に追われている不動産会社さまにご提案

「お客さまからの電話が頻繁にかかってくるので、業務に集中できない」「営業や物件確認の電話対応で、かなり時間を取られてしまう」そんなお悩みはありませんか?
そんな方におすすめなのが、弊社の電話代行サービス「Totte (トッテ)」です。私たちが、貴社のスタッフの代わりに電話の一次対応をおこないます。
コールセンターなみの品質なのに、お値段はリーズナブルです。無料トライアルもご準備していますので、まずはお気軽にお試しください。詳しくは、以下のページでご確認いただけます。